トヨタ・ヴォクシー Z Gエディション(FF/4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴォクシー Z Gエディション(FF/4AT) 2002.04.17 試乗記 ……322.6万円 総合評価……★★★ライバルに圧勝!?
ワンボックス然とした「タウンエースノア」「ライトエースノア」から、ミニバンへモダナイズされ、名前も変わった「ノア」と「ヴォクシー」。5ナンバー枠におさまるボディサイズ、2リッターの排気量、3列シートに8人乗り+豊富なシートアレンジと、人気のツボはバッチリ押さえた。さらに両側スライドドアという武器をひっさげ、箱形ミニバンの雄「ホンダ・ステップワゴン」に挑む。
ノアはファミリー向け、ヴォクシーは若者向けとキャラクターを分け、見た目は大きく差別化が図られた。2001年11月のデビューから、2002年3月末までの累計販売台数は、ノアが3万8770台、ヴォクシーは3万6426台。2002年3月単月では、それぞれ1万1180台と9750台。同時期のステップワゴンは1万162台だから、ノアとヴォクシーのコンビで新車効果以上の圧勝!?
ファミリー向けのノアに対して、若い世代向けのヴォクシーは「鋭く、迫力のある引き締まったデザイン」を謳う。なかでもスポーティイメージの「Zグレード」は「カスタマイズ仕様?」と思えるくらい、派手な外見だ。大型バンパー、サイドマッドガード、マフラーカッターなどがボディを飾る。
エンジンは、2リッター直噴のみ。低回転からトルクがあって使いやすく、4000rpm以上まわさなければ、音も静かだ。変速ショックの少ない4ATと合わせ、1人で乗っていると、不満は感じられない。ただ乗り心地はイマイチ。段差を超えるとズシンという低音が車内に響き、ボディがわななく。
豊富なオプションが装着された試乗車は、興味を惹かれる対象に事欠かない。前後2つのサンルーフ「ツインムーンルーフ」、後席にはリモコン付きの液晶テレビ、スイッチを押すだけでスライドドアが開く「パワーアシストドア」などなど。AC100V電源とビデオ入力も備わるからテレビゲームもできるし、ビデオも観られる。連休やお盆の大渋滞でも、パッセンジャーを飽きさせないアイテムがいっぱいだ。運転手はともかく。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2001年11月16日に発表されたミニバン。「ヴォクシー」は、ネッツトヨタ店「ライトエースノア」、「ノア」はトヨタカローラ店で売られていた「タウンエースノア」の後継モデルである。フルモデルチェンジにともない、シャシーがFF化(前輪駆動)され、両側スライドドアとなった。すべて3列シートの8人乗りだ。ドライブトレインは、直噴の2リッター(152ps、20.4kgm)と4段ATの組み合わせのみ。駆動方式には、FFのほか、電子制御多板クラッチを用いた4WDも用意される。
(グレード概要)
グレードは、ベーシック版「X」、スポーティタイプの「Z」、ラグジュアリーな「V」の3種類。それぞれに2WDと4WDがある。スポーティなZグレードは、前後大型バンパーやリアスポイラー、ディスチャージヘッドランプなどを標準装備。Zグレード専用のアルミホイールを装着し、ダンピングを3段階に調節できるセミアクティブサス「H∞-TEMS」が備わる。“Gエディション”はXグレードにも設定される、豪華装備仕様。電動格納ドアミラーやキーレスエントリー、スライドドアの半ドアを防止する、イージークローザーなどが備わる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
グレー基調の内装にシルバーのアクセント、ホワイトメーターでスポーティを演出。シンプルだがそつなくまとまっており、好感がもてる。インパネまわりだけで、12個(!)もの小物入れが備わる。料金所などでは、オーディオ下部にあるフタなしの入れ物が便利だ。エアコンのスイッチが円形なので、円周部を回して操作するのだろうと思ったら、それは温度設定だけだった。風力とモードはスイッチ外周のマークを押すことで切り替わる。使い勝手は悪くない。
試乗車には、オプション設定のナビゲーションがついていた。モニターの角度がやや上向きで、太陽の加減によっては光が反射して見えない。「TILT」スイッチを押したらさらに上を向き、なにも見えなくなった……。
(前席)……★★★
ちゃんと腰掛けても、座面が腿と膝の中間くらいまでしかない小さめのシート。ユッタリ座ってドライブ、というタイプではない。クッションが柔らかめでコシがない。特に腰部分のサポートに不足を感じる。長時間ドライブで最もツラいのは、腰だと思うのだが。795mmのヒップポイントは、ダイニングテーブルに腰掛ける(行儀悪いが)くらいの高さ。降りるとき、両足をクルマの外に出すだけですむのはラクだ。ダイヤル式のハイトアジャスターを使えば、45mmの範囲で高さ調節できる。
(2列目)……★★
180mm動くシートスライド機構を使い、一番後ろまで下げれば足元広々。リクライニングして足を伸ばせば、窓が広くて天井も高く、王様気分(?)が味わえる。はずなのだが、シートバックが平板で、いまひとつくつろげない。座面もカタチは平板だがクッションの厚みはあるから、シート形状を見直せば快適に過ごせそうなだけに、残念。2:1の跳ね上げ式で、3列目にアクセスするときは、前に起こして通路を確保する。
(3列目)……★★
座面もシートバックも、薄くて平らだが、「通常は5人以上乗車しません」が前提なら、まあ問題はない3列目。左右に跳ね上げると荷室を拡大できる。シートのままでも、ビデオカメラ、スチルカメラ、三脚、アタッシュケース、高さ60cmの脚立などの撮影機材を積むことができた。合法的に3人座れることが、3列目一番のセールスポイントだろう。
(荷室)……★★★
幅も高さも120cm以上あるのに、サードシート使用時は奥行きが50cmしかない荷室。でも上述したように、3列目シートを跳ね上げてしまえば十分な広さを確保できる。さらにセカンドシートも跳ね上げれば、奥行き170cmの巨大な荷室となる。シートと床の間に隙間があるので、スキーやスノーボードなど、高さのない長尺物はシートがそのままでも積み込める。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
可変バルブタイミングを備える、2リッター直4直噴エンジンは、152ps/6000rpmの最高出力と20.4kgm/4000rpmの最大トルクを発生。低回転からトルクがあって使いやすく、かつ静かだ。ただ4000rpmを超えると、ノイズが耳につくようになる。トランスミッションは、シフトアップもダウンもショックが少なく、スムーズ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
Zグレードには、「ノーマル」「コンフォート」「スポーツ」と、減衰力を3段階に調節できるセミアクティブサス「H∞-TEMS」が備わる。3種類とも試してみたが、一般走行においては、コンフォートかノーマルでいいと感じた。スポーツに設定しても、特筆して安定したコーナリングにはならない。むしろ路面の悪いところで、突き上げの強さが目立つ結果となった。サーキットを走る機会があったら、スポーツモードをご利用ください。
(写真=難波ケンジ)
【テストデータ】
報告者:webCG大澤俊博
テスト日:2002年4月1日から3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型
テスト車の走行距離:5256km
タイヤ:(前)195/65ZR15(後)同じ(いずれもTOYO J31)
オプション装備:ツインムーンルーフ(10.5万円)/クリアランスソナー&バックソナー(4.0万円)/パワーアシストドア(9.0万円)/前席SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ(7.0万円)/ヴォクシーライブサウンドシステム(6.5型ワイドディスプレイ+MD・CD一体AM/FMマルチ電子チューナー付きラジオ+TV+VTR端子+6スピーカー)、後席液晶カラーTV、音声ガイダンス機能付きバックガイドモニター、ブラインドコーナーモニター(57.1万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:136.2km
使用燃料:16.0リッター
参考燃費:8.5km/リッター

大澤 俊博
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