スズキ・MRワゴン スポーツ(4AT)【試乗記】
カワイすぎず、カワイくなさすぎず 2002.06.22 試乗記 スズキMRワゴン スポーツ(4AT) ……134.0万円 モノフォルムのマイクロミニバン、スズキ「MRワゴン」に、ターボエンジンと10mmローダウンサスペンションを搭載したトップグレード「スポーツ」が追加された。山梨県は河口湖で開催された、試乗会でのチョイ乗り報告。「オトコノコ」っぽい
ツルンとした卵形デザインがカワイイ「MRワゴン」。20代〜30代の既婚女性をメインターゲットとするマイクロミニバンは、約7000〜8000台/月を売り上げる人気ぶり。日産にOEM供給される「MOCO」が、約5000台/月だというから、合計すると1万台超! 売れてます。
そのMRワゴンに、ターボエンジンと10mmローダウンサスペンションを搭載したトップグレード、その名も「スポーツ」が追加された。今までも、中低速トルク重視の「Mターボ」エンジンを搭載する「ターボT」があった。しかし今回追加されたスポーツには、スズキ軽自動車のなかで最もホットなモデル「ワゴンR RR」と同じエンジンを積む。ターボTの60ps/6000rpmと8.5kgm/3000rpmというアウトプットに対し、ニューモデルは64ps/6500rpmと10.8kgm/3500rpm。4psと2.3kgmの差は、NAとMターボのパワー差、6psと2.1kgmにせまる数値だ。
もちろん基本的なカタチは変わらないが、10mm低い車高、チンスポイラーと大きめなメッシュのインテイクを備えたスポーツバンパー、アイシャドウのような縁取り入りのディスチャージヘッドランプで、「オトコノコ」ぽい顔つきになった。さらにサイドアンダースポイラーとリアスポーツバンパー、マフラーカッターでスポーティを演出。タイヤは標準より1インチアップされた、155/55R14インチ。ブリヂストンのハイグリップタイヤ「ポテンザ」を履くのは、ちょっと生意気!? スポーク型のアルミホイールで、足元もバッチリきめた。
パンプスからスニーカー
10mmローダウンされたが、絶対的な視点が高い。アップライトなシートポジション。シート形状は、変わらない。リアシートの105mmスライド機構、分割可倒などは従来通り行える。スポーツになっても大人4人がゆったり座れる、「マジカルリラックス」は健在だ。
明るい色使いの従来モデルと較べると、黒を基調にシルバーアクセントをつけたインテリアは、グッと落ちついた印象。センターパネルの丸いスイッチ類やシート生地のチェック模様が、カジュアルな楽しさもかもしだす。
従来モデルの、「軽自動車初」を謳ったオプティトロンメーターに変わり、文字盤が光る発光メーターを採用。“MRワゴン初”のタコメーターが備わった。キーをひねると、まず盤面、続いて赤いニードルが光り、1度右いっぱいに振れてから、左のスタート位置に戻る。過剰な演出が、カワオカシイ。また、通常は走行距離が表示される液晶パネルに「HELLO」、エンジンを切ると「SEE YOU」と表示される。愛想の良さも、そのままだ。
雨が降るなか、富士五湖のひとつ西湖を目指して走る。ターボTの上級スポーツ版ということで、「高回転型モデルか?」と思ったら、3500rpmで最大トルクを発生する特性のおかげか、まわさなくても一般道の流れに乗るのに充分。一方、2人乗車+撮影機材を積んだ状態でも、アクセルをベタ踏みするとけっこう速い。ビィーンとさすがにエンジン音は高まるが、レーンチェンジや合流で緊張しないですむ。
ローダウンされた専用サスペンションと14インチのアシをもつスポーツだが、適度に締められた程度なので、乗り心地の良さが損なわれていない。コーナーではロールが抑えられ、安心してコーナリングできるのに加え、ポテンザの踏ん張りも利いている。パンプス(履いたことありませんが)から、スニーカーに履き替えるとこんな感じ? 電動パワステに変更はないが、タイヤの踏ん張りが利くせいか、それともサスペンションのセッティングによるのか、センター付近のスカスカが減少しステアリングフィールが良くなった、と感じた。
フクザツな女性心理
試乗会場で、ラインナップに「スポーツ」を追加した理由をエンジニアの方にうかがうと、「タコメーターの搭載やスポーティな外観の要望が、お客様からありました」とおっしゃる。しかも、MRワゴンのメインターゲットである女性からの声だというから、最近の女性はカワイイだけじゃダメらしい。
リポーターは“スポーツ”という名のニューモデルが、硬い乗り心地のスポーツモデルになっているんじゃないか、と心配していた。しかし乗ってみると、乗り心地や広々感という美点はそのまま。加えてパワーユニットに余裕があり、街乗りから高速走行をラクにこなす。
「スポーツという名前がついていますが、スポーツ走行と直結するわけではありません。“最上級”という意味も込められています」との説明も、まあ納得。そのコトバの裏に、「カワイイだけじゃダメだけど、カワイくなさすぎるのもダメ」という微妙さを求める、フクザツな女性心理を垣間見た、というのは、いいすぎでしょうか〜。
(文=webCGオオサワ/写真=難波ケンジ/2002年6月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。