ランドローバー・レンジローバー(5AT)【海外試乗記】
SUVの王者 2002.04.18 試乗記 ランドローバー・レンジローバー(5AT) 2002年4月2日から日本でも予約受付が始まった、ランドローバーの新型フラッグシップ「レンジローバー」。SUVの元祖ともいえる高級オフローダーに、webCGエグゼクティブディレクターの大川悠が、本国イギリスで試乗した。
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すべてはレンジローバーに始まった
世界的にもはや後戻りできなくなってきている「SUV流行」の中にあって、やはり一番威張れるのは間違いなく「レンジローバー」だ。すでにアメリカでは戦後から現代と似たような流れがあったにしても、ヨンクのクルマを“野蛮”“豪快”“荒くれ男用”オフローダーという単細胞クルマから解放した元祖は、やはり1970年にデビューしたレンジローバーだったといっていい。
オフロード性能は戦車並に確保しつつ、オンロードでも高性能サルーンに互して走れるだけの動力性能とハンドリングを与え、なおかつプレスティッジカーとして尊敬されるだけのリファイメント、乗り心地、テイスト、そして見栄えを付加することで、一気に高級SUVという市場を開拓した。
今でこそアメリカでも、キャディラックやリンカーン、レクサスことトヨタなどがこぞってSUVを発表し、ヨーロッパではBMWが「X5」の名前で、メルセデスが「Mクラス」として、そして最近ではポルシェまでが「カイエン」の名前で、同様なプレスティッジSUVに必死になっている。しかしすべては、このレンジローバーに始まったのだ。
そのレンジローバーが、2002年に8年ぶり3度目のモデルチェンジを受けた。わが国では4月に予約受付が始まり、7月6日に発売される。
国際試乗会は2月にスコットランドで開かれたが、今回それとは別に、3月のロンドン周辺を走ってみた。
21世紀のデザインテイスト
「デカイ!」と、新しいレンジローバーに接すると誰もが口にする。確かに伝統のラインを生かしつつ、外寸は拡大された。だが、実際の拡大寸法は僅かで、ミラーを含めるなら幅はむしろ狭くなったほどだという。何となく巨大に見えるのは、デザイン表現が強いからだろう。特に眼光鋭いヘッドライトや、外板の張りがより強く、明るい上屋とバランスして近代建築のテイストにも似た造形が、より大きく見せるのだろう。
でも実際、東京よりも車線が狭く、混んでいて、運転マナーもいいとはいえないロンドンの町中に走り出すと、それほど面倒を感じない。この種のクルマの常で、高い視点がボディ感覚を掴むのに役立つし、レンジローバー伝統「クラムシェル状ボンネット」の、見切りがいいのも助かる。バックするときは気になるが、「ウォーニング」があるから安心だ。
従来のように、英国の伝統に比較的真面目に従った保守的な室内とは違って、新型は新しいブリティッシュ様式といった造形で構成される。クルマだけでなく、ヨットや最新のオーディオなどのデザインモチーフを取り入れた室内造形である。重い豪華さを排除し、カジュアルな高級感に充ちていて、それはそれで新世紀に相応しい。トリムは「チェリーウッド」「ウォールナット」、そしてブラック系「メタル仕上げ」の3種類があり、これに6色×3素材のシート内装が組み合わされる。さらにボディカラーは12色を用意。その組み合わせは相当な数になり、まさに自分好みの仕様を選ぶことができる。
試乗車は、明るいチェリーウッドと、グリーン系のパイピングが入ったアイボリーシート。最近のロンドンなどで人気がある、デザイナーズホテルの内装を思わせる。「ジバニー・グリーン」と呼ばれる、グリーンがかった淡いシルバーは、春のロンドンの日差しを受けて、とても上品に見えた。しかも見下ろすと、普通のクルマに君臨しているような感じがする。そして羨望の視線を浴びる。やっぱりSUVの町乗りは悪くない。
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ポリスカーに採用されたら……
新型になってもっとも改善されたのは、モノコックボディと独立懸架サスペンションの採用によるオンロード性能だろう。これは格段に良くなったといえる。町中では重く大きなバネ下が「ドンッ!」と反応する感じは消え、すごくリファインされた。また高速道路を行けば、EAS(相互関連電子エアサスペンション)の効果もあって、多少固くなったバネはカーペットライドと、大型乗用車に劣らぬスタビリティをもたらす。イギリスのポリスカーはレンジローバーを多く使っているが、「こいつに追われたらやばいな……」と本心から感じた。
エンジンも話題のひとつ。このクルマの90%近くがBMW時代に開発されたものだから、エンジンもBMW製の4.4リッターV8なのだ。従来のV8より排気量は150cc小さくなったが、出力(286ps)、トルク(44.9kgm)とも1割方増えて、新型5段AT(副変速機付き)と組み合わされる。これはまごうかたなきBMWエンジンの感覚で、軽快にトップエンドまでまわり、スムーズでトルクも充分。とてもいいエンジンなのだ。しかも従来型より明らかに静かである。リポーターはこれはこれで楽しいと思うが、古くからのこのクルマのファンは、もっと全体的にトルクの厚みがある、存在感の強いエンジンを望むかもしれない。
しかし、このエンジンをもってしても、2.5トンの車重はやや重い。もっと低回転型でもいいから、排気量が大きくてトルクで稼ぐタイプの方が、本当はこのクルマにはあっているのだろう。
ところで肝心のオフロード性能に一切触れなかったのは、約5日間ロンドン周辺で取材に使った際、その機会がなかったからというのが理由のひとつ。でももっと大きな理由は、個人的に従来からレンジローバーの、オフロード面での能力を尊敬しているからである。しかも今回は、「フリーランダー」以来の「HDC」(ヒル・ディーセント・コントロール)が備わり、敢えてテストする必要もないと思ったからだ。HDCはオフロードで一番危険な、急坂の下降時にブレーキを自動制御するもので、これは本当に価値ある制御システムだと思う。
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英国の誇り
ともかく英国の誇りは見事に守り通された。仮に開発の大半をミュンヘンのエンジニアとともにやろうと、また今はアメリカ資本下で販売されていようとも、あくまでもレンジローバーは英国自動車産業の宝であり資産であり、誇りである。
1970年に、当時ローバーのエンジニアだったスペン・キングが発想した、オンロードでもジャガーなみの性能を発揮するオフローダーという思想は、新型にも見事に受け継がれている。それに最近のプレスティジアス・イメージをうまくドッキングしたこのクルマ、やはり3代目になっても、SUVの王者の座を守り通していた。
(文=webCG大川悠/写真=ランドローバージャパン/2002年3月)

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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