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第46回:世界最強SUV決定戦(後編) ―究極の一台がついに決定! 真の強者はケンカなんてしない!?―

2024.11.13 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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今も昔も“イキれる/ドヤれるSUV”の筆頭候補である「メルセデス・ベンツGクラス」。これに勝てるクルマは果たして現れるのか? 「世界最強SUV」がついに決まる!
今も昔も“イキれる/ドヤれるSUV”の筆頭候補である「メルセデス・ベンツGクラス」。これに勝てるクルマは果たして現れるのか? 「世界最強SUV」がついに決まる!拡大

世のお金持ちが愛してやまない大型SUVのなかでも、“最強”の一台はどれか――。カーデザインの識者を含む3人の論者を納得させたのは、“イキれる/ドヤれる”という価値観を超越した、あの一台だった。webCG史上最も熱くてしょうもない討論が、ついに決着!

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渕野氏の製作した“最強SUVマトリックス”。全部の車種の名前が言えたアナタはSUV博士だ。 
渕野「『ジープ・ラングラー』は今回のテーマにはちょっとそぐわないと思ったので、半透明で載せてます(笑)」 
清水「それにしても、ずいぶん左上にクルマが偏ってますね」
渕野氏の製作した“最強SUVマトリックス”。全部の車種の名前が言えたアナタはSUV博士だ。 
	渕野「『ジープ・ラングラー』は今回のテーマにはちょっとそぐわないと思ったので、半透明で載せてます(笑)」 
	清水「それにしても、ずいぶん左上にクルマが偏ってますね」拡大
2023年8月に世界初公開された「トヨタ・ランドクルーザー“250”」。デザイン的にインスタ映えする類いのクルマではないが、発表当初から話題が沸騰(ふっとう)していた。
2023年8月に世界初公開された「トヨタ・ランドクルーザー“250”」。デザイン的にインスタ映えする類いのクルマではないが、発表当初から話題が沸騰(ふっとう)していた。拡大
新しいモデルの方向性や人気車種の推移から、「ハイブランドからローブランドへ」「感情的なデザインから理性的なデザインへ」とトレンドが変化しているのではないか……というのが渕野氏の考察だ。
新しいモデルの方向性や人気車種の推移から、「ハイブランドからローブランドへ」「感情的なデザインから理性的なデザインへ」とトレンドが変化しているのではないか……というのが渕野氏の考察だ。拡大
ほった「こんなログハウスが似合いそうなSUVがトレンドになるなんて、ホントですかね?」 
清水「カーマニア的には、そうなるとすごくうれしいけどね」 
(写真:郡大二郎)
ほった「こんなログハウスが似合いそうなSUVがトレンドになるなんて、ホントですかね?」 
	清水「カーマニア的には、そうなるとすごくうれしいけどね」 
	(写真:郡大二郎)拡大

「ランドクルーザー“250”」に見る新しいトレンド

渕野健太郎(以下、渕野):今回のテーマは「最強SUV決定戦」ってことだったので、個人的にふたつの要素を軸にして、それっぽい車種でマトリックスをつくってみたんですよ。そのマトリックスを見ながら、デザインの話をしてみたいと思います(パソコン内の図を見せる)。

清水草一(以下、清水):おー! カッコいい図ですね。

webCGほった(以下、ほった):こんなフザけたテーマなのに、ここまで準備してもらって申し訳ありません。

渕野:縦軸がハイブランドかローブランドか、横軸がデザインが感情的か理性的かですね。それでタテヨコふたつの軸をとってます。感情的というのは“オラオラ的”と言ってもいいでしょう。私が最強SUVに推した「メルセデス・ベンツGクラス」はマトリックスの左上、最もハイブランドで、最も感情的な部類に入ります。

ほった:先代Gなら、もうちょっと理性寄りだったのかな?

渕野:そうですね。ご覧のとおり、今の主流はハイブランドで感情的なSUVですけど、最近はやや理性的な「ディフェンダー」みたいなのも出てきてるわけです。トレンドの流れからすると、今後はオラオラしたクルマに乗りたくない、オラオラした人に見られたくないというユーザーが増えていくんじゃないかな。で、その最新のトレンドが、このクルマかなと思うんです(画面を指さしつつ)。

ほった:「トヨタ・ランドクルーザー“250”」ですね。

清水:確かに、Gクラスの対極かも。

ほった:少なくとも、インスタ映えしたり、洋楽のMVに出てきたりしそうなクルマではないですね。

渕野:このクルマはローブランドで理性的。これまでのトレンドからすると、正反対をいってるんですよ。

清水:今後はこれが主流になると?

渕野:そうです。ランクル“250”、なんだか最近スゴく見かけません?

ほった:見かけますね。恵比寿かいわいではもう結構走ってるし、この間、志賀高原とか湯田中に行ったんですけど、そっちでも何台か見ましたよ。

渕野:SNSを見ると芸能人とかも買っていて、手元に届きだしてるみたいです。いろんなところでトレンドの動きを感じるんですよ。

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「ハイブランドで感情的」から「ローブランドで理性的」へ

清水:確かに、Gクラスにはもう飽きた、ランクル“250”みたいな素うどん……いや讃岐うどんみたいなクルマのほうがカッコいいっていう流れはあるかもしれませんね。

渕野:実物が走ってるところを見ると、最初のイメージどおり(参照:その1その2)、若干おもちゃっぽい感じはあって、特に顔まわりやクラッディング、フェンダーまわりとかは、もうちょっとシンプルでもよかったのかなって思うんですけど、でもやっぱり基本のデザインがいいんですよ。

それに、デビューして間もないクルマをこれだけ見かけるからには、おそらく大人気なんでしょう。やはりトレンドは、ステータスシンボル的なクルマから、実利的なデザインのクルマに移ってきてるんじゃないかと思うんです。こういう主張の強いジャンルでも。

ほった:質実剛健系ですか。

清水:恵比寿で感じる世の中の胎動だね。

渕野:あらためてマトリックスを見てみましょう。このなかでほかにあげている車種は、「レクサスLX」と「キャデラック・エスカレード」「レンジローバー」「BMW X7」「メルセデス・ベンツGLS」「BMW XM」「ロールス・ロイス・カリナン」ですが……こうして見ると、現状はまだ「ハイブランドで感情的」なデザインのクルマが大半ってことがわかります。

清水:高価格帯のクルマなので当然ですけど、確かにそっちばっかり。

渕野:一般的な認識だと、やはり一番ハイブランドなのはロールスで、2番目はメルセデス、その下にBMWがいて、さらに下にレクサスがいて……すいませんがキャデラックは、日本ではそれらよりちょっと立場が低いのかなと(笑)。で、ランクルとかのトヨタ系がある。どちらかといえばエモーショナルなこれらに対して、レンジローバー系、ランドローバー系のモデルは理性寄りのデザインで、その頂点にあるのがレンジローバー。もう少し機能的で、もう少し感情側に寄ってるのがディフェンダーと。そして誰もいないところに、ランクル“250”がいる。

清水:「スズキ・ジムニーシエラ」もそこですよ!!(全員笑)

渕野:そ、そうですね、近いとこにいます(笑)。とにかくこうして見ると、もともとGクラスあたりを購入してた人が、だんだんディフェンダーとかに移っていき、今はさらに実利的な方向に移行する、“左上”から“右下”へいく流れができているんじゃないかと。

ほった:はいはい、はいはい。(理解)

2024年4月に発売された「ランドクルーザー“250”」。「ランクル“300”」のときは納車の遅れなどもあり、街で見かけるようになるまで少し間があった印象だが、“250”はすでに結構な頻度で目にするようになった。(写真:向後一宏)
2024年4月に発売された「ランドクルーザー“250”」。「ランクル“300”」のときは納車の遅れなどもあり、街で見かけるようになるまで少し間があった印象だが、“250”はすでに結構な頻度で目にするようになった。(写真:向後一宏)拡大
渕野「やっぱり、フロントマスクなんかはもう少しシンプルでもよかった気がしますね。全体の強さ感に対して、ここだけ造作が細かい気がします」 
(写真:郡大二郎)
渕野「やっぱり、フロントマスクなんかはもう少しシンプルでもよかった気がしますね。全体の強さ感に対して、ここだけ造作が細かい気がします」 
	(写真:郡大二郎)拡大
渕野「そういえば、丸目2灯のモデルもありましたよね?」 
ほった「丸目ランプが標準で装備されたのは、初版限定モデルの『ZX“ファーストエディション”』だけです。今は確か、販売店オプションで用意されていますよ」 
(写真:郡大二郎)
渕野「そういえば、丸目2灯のモデルもありましたよね?」 
	ほった「丸目ランプが標準で装備されたのは、初版限定モデルの『ZX“ファーストエディション”』だけです。今は確か、販売店オプションで用意されていますよ」 
	(写真:郡大二郎)拡大
渕野「マトリックスを見てもらえるとわかるとおり、『ランドクルーザー“250”』がいるところは、このジャンルのモデルとしてはかなりのブルーオーシャンなんですよ」 
清水「『スズキ・ジムニーシエラ』のポジションもそこですね!!」
渕野「マトリックスを見てもらえるとわかるとおり、『ランドクルーザー“250”』がいるところは、このジャンルのモデルとしてはかなりのブルーオーシャンなんですよ」 
	清水「『スズキ・ジムニーシエラ』のポジションもそこですね!!」拡大

アイコン化したクルマは強い

渕野:ただ注目していただきたいのは、そうしたなかでもデザイン自体がアイコン化してるクルマは、やっぱりめちゃくちゃ“強い”ってことです。

ほった:そうですね。個性が確立されてて、トレンドとは無関係みたいな。今回のテーマからは外れますが、「ジープ・ラングラー」もそんな感じですね。

渕野:そのトップがGクラスですけど、ディフェンダーにしてもランクル“250”にしても、シルエットが単純で、顔まわりも単純化してますよね。こういうクルマはやはり強いなと思うんですよ。ジムニーシエラもそうですけど。

清水:まさに。

渕野:逆に、GLSやX7は、どんなに頑張ってもアイコンにはならない。“最強SUV”は強力なアイコンである必要があると思うんです。そういった意味では、超巨大キドニーグリルのXMも弱い。確かに顔だけでも押しが強いっちゃ強いですが……。これはLXも同様ですね。顔だけ見てぱっと車種がわかるのはいいんですけど。

清水:人もクルマも顔が命ですけどねぇ(笑)。

渕野:それに、LXのデザインって、定石からちょっと逸脱している気がします。

ほった:というと?

渕野:クルマって造形的にはひとつの塊ですよね。それが基本で、それに沿ったグラフィックでグリルもつくるわけです。だから自動車デザインは、本質的には中心が強く、そこから収束方向に向かうものになるわけです。いっぽうでレクサスの「スピンドルグリル」は、その流れとは逆らった拡散方向のデザインなんです。ほかのモデルはまだいいんですけど、このLXのスピンドルグリルは大きさも立体感もすごくて、グリルの存在にボディーが負けて見える気がするんですよね。だから顔とボディーがチグハグに見えるんです。

清水:そりゃ、顔だけ取って付けてますから……。

渕野:欧州メーカーは基本的に、こういうことはやりません。セオリーから外れるんで。そこをあえてやってるっていうのは、やっぱ遠目から見てもちゃんと主張できるようにしたいからでしょう。

清水:XMとLXは、遠目で見てもすぐわかりますからね。でもGクラスとジムニーシエラは、どっちがどっちかわかんない!

ほった:だから清水さんはシエラ推しなんですね?

清水:そうだよ! コスパ最強!

時代によってトレンドは変わるが、それとは関係なしに、デザインがアイコン化しているクルマの人気は根強い。その筆頭が「メルセデス・ベンツGクラス」だ。
時代によってトレンドは変わるが、それとは関係なしに、デザインがアイコン化しているクルマの人気は根強い。その筆頭が「メルセデス・ベンツGクラス」だ。拡大
「ディフェンダー」のデザインも非常にアイコン的。一目で「ああ、あのクルマだ」とわかる。
「ディフェンダー」のデザインも非常にアイコン的。一目で「ああ、あのクルマだ」とわかる。拡大
丸目2灯ではないけれど、「トヨタ・ランドクルーザー“250”」のデザインも同様。 
ほった「わかりやすいデザインをしているというのもそうですが、ほかに似たクルマがない、というのも“アイコン的デザイン”のキモみたいですね」
丸目2灯ではないけれど、「トヨタ・ランドクルーザー“250”」のデザインも同様。 
	ほった「わかりやすいデザインをしているというのもそうですが、ほかに似たクルマがない、というのも“アイコン的デザイン”のキモみたいですね」拡大
清水「これはなんてクルマ?」 
ほった「清水さんの大好きな『BMW XM』ですよ」 
清水「え!?」 
ほった「巨大キドニーグリルが目を引くから普段は気づかないけど、XMって遠目に見ると、案外普通なデザインしてるんですよね。これは確かに、アイコンにはなりにくい」
清水「これはなんてクルマ?」 
	ほった「清水さんの大好きな『BMW XM』ですよ」 
	清水「え!?」 
	ほった「巨大キドニーグリルが目を引くから普段は気づかないけど、XMって遠目に見ると、案外普通なデザインしてるんですよね。これは確かに、アイコンにはなりにくい」拡大
コワモテという意味では、間違いなく世界最強格の一台である「レクサスLX」だが、ボディー全体を通して見ると、フロントグリルがこの意匠である必然性があまり感じられない。バンパーや顔まわりの造形だけでボディーとグリルの帳尻を合わせている感があるのだ。 
ほった「まぁ、そのムリヤリ感も嫌いじゃないんですけどね」
コワモテという意味では、間違いなく世界最強格の一台である「レクサスLX」だが、ボディー全体を通して見ると、フロントグリルがこの意匠である必然性があまり感じられない。バンパーや顔まわりの造形だけでボディーとグリルの帳尻を合わせている感があるのだ。 
	ほった「まぁ、そのムリヤリ感も嫌いじゃないんですけどね」拡大

むしろこっちがランクルの本筋?

清水:でもやっぱり、“250”もカッコいいよね。ブランドに頼ってない素のカッコよさ満点。

ほった:ワタシは逆に、デザイン的にランクルっていうブランドをもっとも背負っているというか、現代的に解釈したクルマだと思うんですけどね。これ、核になるデザインモチーフはやっぱり“60”なんでしょうが、とにかく世界中のファンが漠然と考える「ランクルってこういうクルマだったよね」っていうカタチに、原点回帰してると思うんですよ。だからフロントも、頭でっかちになる前の昔のクロカン風に、オーバーハングを切り詰めてる。そういう意味でも、“250”は渕野さんがおっしゃってたアイコンになっているんじゃないかな。個人的には“300”よりこちらのほうが、ランクルの本筋にある気がします、デザイン的に。

清水:確かに“300”より“250”のほうが、デザイン的にはホンモノっぽいと思う。Gクラスが売れなくなってこれが売れてくれたら、カーマニア的にはすごく正しい方向だよね。

ほった:でもなんか、それはちょっと模範解答っぽすぎません? “最強SUV”を名乗るには、なんというか正しすぎるような。

渕野:クルマ好きで、なんかちょっと面白いのに乗りたい人には“250”はいいなと思いますね。けど、やっぱり実物を見ると小さく感じます。ディフェンダーもそうですけど、「それが最強か?」て言われると、違うかもしれない。

ほった:最強を名乗るSUVには、洗練とかデザインの完成度とかとはまた違う尺度ってもんがあると思うんですよ。だからワタシは、どーしてもエスカレードを推しちゃうわけです。自分のデカさも存分に生かせてるし。

清水:いやいや、寸法を生かしてるって意味ではシエラでしょ!

1980年から1989年まで販売された“60”系「トヨタ・ランドクルーザー」(上)と、最新の「ランドクルーザー“250”」(下)。
1980年から1989年まで販売された“60”系「トヨタ・ランドクルーザー」(上)と、最新の「ランドクルーザー“250”」(下)。拡大
現行の「ランドクルーザー」ファミリー。写真向かって右が“70”、中央の2台が“250”、左奥が“300”。 
ほった「“80”、“100”、“200”って重ねてきた“ステーションワゴン”系の歴史は承知していますが、それでもやっぱり、私はカド丸なデザインの“300”より、カクカクした“70”や“250”のほうが、ランクルっぽいデザインな気がするんですよね」 
清水「うん。何言ってるかサッパリわからない」 
(写真:郡大二郎)
現行の「ランドクルーザー」ファミリー。写真向かって右が“70”、中央の2台が“250”、左奥が“300”。 
	ほった「“80”、“100”、“200”って重ねてきた“ステーションワゴン”系の歴史は承知していますが、それでもやっぱり、私はカド丸なデザインの“300”より、カクカクした“70”や“250”のほうが、ランクルっぽいデザインな気がするんですよね」 
	清水「うん。何言ってるかサッパリわからない」 
	(写真:郡大二郎)拡大
特定の世代の復刻デザインというわけではなく、皆が持つ「ランクルってこうだったよね」というイメージを具現したのが「ランドクルーザー“250”」である、というのがwebCGほったの持論だ。世のランクルファンの皆さんは、どう思うだろうか?
特定の世代の復刻デザインというわけではなく、皆が持つ「ランクルってこうだったよね」というイメージを具現したのが「ランドクルーザー“250”」である、というのがwebCGほったの持論だ。世のランクルファンの皆さんは、どう思うだろうか?拡大

「レンジローバー」は孤高の存在

ほった:……それにしても、こうしてマトリックスを眺めていると、ハイブランドではレンジローバーの孤高っぷりが際立ちますね。

渕野:デザイン的にも一番ですね、洗練度は。

清水:実はコスパも最強だよね!

ほった:確かに。安すぎますよ、あの値段でも。レンジローバーは実際に乗ったときに、今いちばん「おぉ、いいクルマだな」って感じられる一台だと思います。

清水:ベースグレードが2000万を切ってるなんて、安すぎる。4000万ぐらいしてもいいんじゃない?

ほった:最初に乗ったとき、びっくりしましたもんね。ロールスよりもこっちのほうが断然いいクルマで。

清水:乗り心地のよさとか信じられないレベルだよね。世界一の高級車みたいな。デザインも世界一きれいだし。

渕野:……実はこれが世界最強?(全員笑)

ほった:いやいやいやいや! ここまで完全に蚊帳の外のクルマだったのに、今までの議論はなんだったんだ? ってなっちゃう(笑)。

清水:でもカーマニアが読者のwebCG的には、これが最強SUVでもいいんじゃない?

ほった:なんか予定調和っぽくないですか?

清水:いいじゃない、しっくりきて。渕野さんもこれにしません?(全員笑)

渕野:いや、僕はそれで全然いいですよ。デザインは文句ナシで、完成度の高さは確かに最強ですし。

清水:素晴らしい大義名分。いい落としどころですね!

ほった:清水さん、話をまとめにかかってますね?(笑)

それにしても際立つのが、ハイブランドにおける「レンジローバー」の孤高っぷりだ。そもそも「ハイブランドで理性的」というくくり(渕野氏のマトリックスでいうと、右上のエリア)にあるモデルは、ランドローバー系のSUVだけではないだろうか。
それにしても際立つのが、ハイブランドにおける「レンジローバー」の孤高っぷりだ。そもそも「ハイブランドで理性的」というくくり(渕野氏のマトリックスでいうと、右上のエリア)にあるモデルは、ランドローバー系のSUVだけではないだろうか。拡大
webCGほったが撮影した特別仕様車「レンジローバーSVビスポーク バルモラルエディション」。見よ! このシンプルに徹した造形美を。
webCGほったが撮影した特別仕様車「レンジローバーSVビスポーク バルモラルエディション」。見よ! このシンプルに徹した造形美を。拡大
渕野「よく見ると、ウィンドウのサッシやモールディングも排してるんですよ」 
ほった「スゴい。何度も取材しているのに、これは言われるまで気づきませんでした」
渕野「よく見ると、ウィンドウのサッシやモールディングも排してるんですよ」 
	ほった「スゴい。何度も取材しているのに、これは言われるまで気づきませんでした」拡大
こちらは「レンジローバーSVビスポーク1858エディション」。内外装は「日本文化と英国とのつながりを表現した」というモノトーンでコーディネートされていた。
こちらは「レンジローバーSVビスポーク1858エディション」。内外装は「日本文化と英国とのつながりを表現した」というモノトーンでコーディネートされていた。拡大

本当の強者はケンカしたりしない

ほった:でも確かに、オーナーのマインドを考えるとこれが最強……というか、ちょっと超越しているかも。いまレンジローバーを買う人って、ウン千万もクルマにお金を払ってるのに、多分「クルマで見えを張ろう」なんて毛ほども考えていないですよね。隣にどんなクルマが来ても負けたと思わないというか(前編参照)、そもそも隣のクルマなんか意識すらしていない。自分をデカく見せようと思ってクルマを買うような、俺たちみたいなみみっちい人間じゃないんですよ(笑)。

清水:究極の「金持ちケンカせず」だ。

ほった:ほんでテーブルに黒のアメックスをポンと置いて、「……今、一番いいクルマを頼む。デザインでも走りでも」ってやったら、多分ここにいき着くんですわ。

渕野:デザインに関してもずぬけてますよね。ランドローバーもレンジローバーも、決してグラフィックで立体を切り取ったりしないんです。ボディーを全部シルバーにしたとすると、本当につるっとした造形になる。普通はグリルやらヘッドライトやらでデコボコしちゃうものなんですけど、このブランドは面をつなげることに凄(すさ)まじくこだわってるのがわかります。デザインとかプロポーションの観点でいえば、レンジローバーという答えはすごく順当ですよ。デザインのクオリティーがいちばん高いのは、このクルマで間違いないと思います。

清水/ほった:おおー!(拍手)

渕野:でも、こういう落としどころでよかったんですか?

清水:紳士淑女のwebCG読者ならかくあるべしっていう感じで、いいんじゃないかな。やっぱりクルマでドヤついちゃダメだよ(笑)。

ほった:それにそもそも、この連載の趣旨って「いいカーデザインの探求」ですもんね。

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=メルセデス・ベンツ、ジャガー・ランドローバー、ゼネラルモーターズ、ステランティス、トヨタ自動車、スズキ、郡大二郎、向後一宏、webCG/編集=堀田剛資)

「レンジローバーSVビスポーク1858エディション」のインストゥルメントパネルまわり。外装同様、インテリアもシンプルに徹した静謐(せいひつ)なデザインとなっている。
「レンジローバーSVビスポーク1858エディション」のインストゥルメントパネルまわり。外装同様、インテリアもシンプルに徹した静謐(せいひつ)なデザインとなっている。拡大
現行型「レンジローバー」のデザインスケッチ。
現行型「レンジローバー」のデザインスケッチ。拡大
ほった「このアイデアというか、デザインのこだわりを市販車に落とし込むには、相当に苦労したでしょうね」 
渕野「そうですね。今のジャガー・ランドローバーは、相当にデザインの優先度が高いメーカーになっていると思いますよ」
ほった「このアイデアというか、デザインのこだわりを市販車に落とし込むには、相当に苦労したでしょうね」 
	渕野「そうですね。今のジャガー・ランドローバーは、相当にデザインの優先度が高いメーカーになっていると思いますよ」拡大
清水「それでは、世界最強SUVは『レンジローバー』ということで、よございますね?」 
ほった「なんか、いかにもwebCG的な感じがして、かえって釈然としませんけど(笑)」
清水「それでは、世界最強SUVは『レンジローバー』ということで、よございますね?」 
	ほった「なんか、いかにもwebCG的な感じがして、かえって釈然としませんけど(笑)」拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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