ボルボS60T5 & 2.4T(5AT)【海外試乗記】
『肌で感じるセダン』 2000.09.18 試乗記 ボルボS60 T5 & 2.4T(5AT) ボルボの中堅ワゴンV70の3ボックスモデルにして、S80風のボディをまとったS60。スタイリッシュな北欧のクルマに、CG編集局長 阪 和明が、ストックホルムで乗ってきた。標準的な室内空間と充分な動力性能
ボルボのミドルクラス・セダンの新顔がS60である。事実上、S70の後継車だが、ボルボ自身は「まったく新しいセグメントのセダン」と位置付けている。ちょっと見ただけでは兄貴分のS80のような形のS60は、そのS80よりふたまわりは小ぶりである。
弧を描いたルーフラインのせいで、4ドアクーペと呼んでもいいスタイリングだが、実際にはセダンにふさわしいだけの室内空間が確保される。とくに後席の足もとは、同クラスのメルセデスベンツCクラスよりも広く感じられるほど。ヘッドルームはミニマムながら、かといって窮屈ではない。ヨーロッパ製、中級FWD(前輪駆動)セダンの、標準的なスペースである。
9月末にストックホルムで試乗したS60は、日本への輸入が期待される「T5」と「2.4T」の2種類。前者は2.3リッター直5ハイプレッシャーターボ(250ps、33.7kgm)を搭載する“ホットモデル”、後者は2.4リッター直5ライトプレッシャーターボ(200ps、29.1kgm)のいわば“スタンダード”で、どちらも5段オートマチックと組み合わされる。
いずれも、動力性能は申し分なく高い。
とくにT5はクルマの性格がよく反映されていて、素晴らしい加速感を味わえるだけでなく、高速クルージング時の余裕もなかなかだ。ハイプレッシャー・ターボならではの痛快なダッシュに、にんまりさせられる。
しかも、エンジンの吹け上がりはスムーズかつ静か。荒々しいところは微塵もない。気がつけば速度計の針は150km/hを優に超えているといった具合である。
一方のライトプレッシャーターボの2.4リッターモデルにしても、160km/hあたりからの超高速域での「伸び」こそT5に及ばないが、実用速度域では、動力性能でほとんど遜色ない。個人的にはこれで不満ないと感じた。
なるほど軽快
ハンドリングも悪くない。前マクファーソンストラット、後セミトレーリングアーム的なマルチリンクという構成のサスペンションは、それぞれエステートのV70、フラッグシップセダンのS80からの流用。とはいえ、その味付けはスポーティである。
「S60のライバルはBMW3シリーズです」。ボルボの開発エンジニアはこう公言している。たしかにそう感じさせるくらい身のこなしは軽い。もっとも、3シリーズの軽快感と同等かと問われると、まだ力およばずというところなのだが、ボルボとしては充分スポーティだ。
ステアリングは正確で、狙ったラインどおりに、不安なく、ワインディングロードをかなりのハイペースで駆け抜けられる。スタビリティコントロールの助けもあって、安定感は抜群に高い。安定しているがゆえに楽しさがなかなか伝わってこないのが玉に瑕と言えなくもないのだが、これもボルボの「真面目なクルマづくり」の表れなのだろう。
乗り心地に関しても満足できるレベルにある。足まわりが固められ、太いタイヤを履くT5にしても快適である。段差や突起を乗り越えた際の突き上げは軽く、加えてフラットだ。こと乗り心地においては、これまでの「T5」と呼ばれるすべてのモデルのなかで最も好ましい印象を持った。
T5よりソフトな乗り心地の2.4Tのほうも、ワインディングロードを舞台にしてもけっして顎を出さない足を持っている。これはこれで不満ない。
ただひとつ、残念なのは両モデルともに、ややロードノイズが耳につくことだ。どちらのエンジンも思いのほか静粛であるから、かえって気になるのかもしれない。
結論。S60はまっとうなセダンとして、よく仕上がっている。
エモーショナルな要素が少ないので、正直なところ面白さには欠ける。しかし、長く付き合っていくうちに、その良さを肌で感じられるようなクルマといえる。
ボルボがこれまで培ってきたスピリットは、S60にも受け継がれている。日本にやって来るのは来年2001年春ごろということだ。価格は現行のS70と同レベルの、400から460万円あたりだろう。
(文=CG編集局長 阪 和明/写真=ボルボ・カーズ・ジャパン/2000年9月)

阪 和明
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