フォルクスワーゲン・ゴルフTSIトレンドライン ブルーモーション テクノロジー(FF/7AT)【試乗記】
記憶すべき到達点 2012.05.16 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフTSIトレンドライン ブルーモーション テクノロジー(FF/7AT)……264万円
アイドリングストップ機構とブレーキエネルギー回生システムを得た最新の「ゴルフ」。“史上最高の低燃費”達成の陰で失ったものはあるのだろうか?
迷わずこっちの「トレンドライン」
「ゴルフ」に新しく設定された「TSIトレンドライン ブルーモーション テクノロジー」は、すでにラインナップされる「TSIトレンドライン プレミアムエディション」に、アイドリングストップと回生ブレーキを組み込んだモデルだ。
1.2リッター直噴直4のSOHC(2バルブ!)ターボエンジンが生み出す最高出力105ps/5000rpm、最大トルク17.8kgm/1500-4100rpmというパワースペックはこれまでのトレンドラインと同じだが、10・15モードで17.4km/リッターだった燃費は、より計測条件の厳しいJC08モードで19.0km/リッターへと大幅に向上した。
ちなみに、予約が始まって話題の「ザ・ビートル」も同じエンジンを搭載するが、あちらはブルーモーションではなく、JC08モードで17.6km/リッターにとどまる。賢いフォルクスワーゲンは、新鮮なモデルに最初から全部付けて売ったりはしない。
先に身も蓋もない計算をしてしまうが、まだ在庫があればアイドリングストップしないトレンドライン(TSIトレンドライン プレミアムエディション)も購入できるものの、わずか1万円安にすぎないから、これからトレンドラインを買うなら、従来型にとんでもない値引き額が提示されない限りブルーモーションのほうだ。なぜなら普通のトレンドラインに比べ、減税額が約4万円大きいから。
さらに何年後かの下取り価格も有利になるはずだ。アイドリングストップ機構が備わったクルマは、備わっていないクルマよりも高価なバッテリーが使われているため、交換時により高いバッテリーを買うことになるが、このクルマの場合、減税額+燃費コストで十分回収できるはずだ。フォグランプを省くなど、よく見れば“わずか1万円アップ”で済んだカラクリが散見されるが、大事なものは何も省略されていない。
不満のない動力性能
1.4リッターの直噴直4エンジンを、ターボやコンプレッサーで過給することで、従来の2リッター前後のエンジンが得ていた以上のパフォーマンスを発揮し、同時に燃費を向上させるダウンサイジングコンセプトを打ち立てたフォルクスワーゲン。今や日本を除く欧米の多くのメーカーが追随し、世間はあっという間にターボエンジンだらけになった。V8はV6に、V6は直4に……というのが世界のトレンドだ。
ここへきて、どこもだいたい1.4〜1.6リッターターボをモノにしたと思ったら、先駆者はさらに排気量を下げ、1.2リッターターボでゴルフに必要十分なパワーを備え、燃費をさらに向上させた。JC08モード燃費で19.0km/リッターは立派というしかない。
手元に自動車雑誌があったら、巻末のカタログ部分を見回してみてほしい。ハイブリッド車を除けば、車重が1270kg以上で19.0km/リッター(JC08)以上に達しているクルマなんてないことがわかるはずだ。あれだけ燃費を自慢しているスカイアクティブ・テクノロジーでおなじみ、「マツダ・アクセラ」でさえ17.2km/リッターなのだ。
この最も効率がよく、最も安いゴルフの動力性能は、決して低くない。ピークパワーはそれなりだが、全体的には過不足なくよく走る。たいていの人にとって、加速力を除けば、不満に感じる部分はないはずだ。パワーに特段見るべきものがない分、ボディー剛性の高さや足まわりのセッティングの適切さが目立ち、非常に快適な乗り心地を味わえる。何をしても怖くない。
激しい競争の結果、最近のクルマはその必要もないのに速すぎるところがあるが、ゴルフ・ブルーモーションは、なんというか、速すぎず心地良い。
自信をもって薦められる
いやもう、ゴルフに弱点は見当たらない。強いて言えば、スポーツ競技のゴルフのほうがすごすぎて、ググった時に検索結果が上のほうに出てこないことくらいだろう。「真面目すぎる」とか「華がない」という声もたまに聞くが、そもそもフォルクスワーゲンはゴルフに華やかさなんか盛り込もうとしていない。街にあふれてもくどくない姿というのを考えている。
初代からずっと抑制的でパッケージングを突き詰めたカタチを貫くことで、“ゴルフにしておけば間違いない”という、華やかさなんかよりよっぽど価値のある信用を得ている。
現行の6代目は「5代目のマイナーチェンジにすぎない」とか「次期型までのつなぎだ」なんて言われ方もしたが、5代目の時点で最高のハッチバックだったんだから、仮にマイナーチェンジだったとしても、多くのクルマとの差が広がっただけだ。
いずれドラスチックな変更を伴う7代目が出てくるんだろうが、もしも明日、7代目にモデルチェンジすることがわかっていても、今日、自信をもって現行の6代目を人に薦められる。だれにでも。似合う洋服と会話のセンスを持ち合わせているというのなら、「あと40万円出して『ジュリエッタ』という手もあるよ」とアドバイスしないこともないが、ほとんどの人にはこっちをオススメする。ってオレ何様?
(文=塩見智/写真=高橋信宏)

塩見 智
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