トヨタ・プリウスPHV G“レザーパッケージ”(FF/CVT)【試乗記(後編)】
つながるプリウス(後編) 2012.04.20 試乗記 トヨタ・プリウスPHV G“レザーパッケージ”(FF/CVT)……427万8855円
電気自動車(EV)に近い性格をもつ、ハイブリッドカーの「トヨタ・プリウスPHV」。では、純粋なEVとはどう違うのか? 何ができて、どんなメリットがあるのか? 具体的なポイントを紹介する。
それぞれ異なる良さがある
(前編からのつづき)
後編では、電気自動車(EV)の代名詞とも言える「日産リーフ」にも登場してもらおう。「プリウスPHV」の試乗会場がたまたま横浜だったから、本社がすぐ近くにある日産自動車から借りた……というのは冗談で(笑)、ピュアEVであるリーフとプリウスPHV、2種類の代表的エコカーに、どのような違いがあるのかをチェックしてみた。
モーターとバッテリーのみで走るリーフからは、何よりも“EV専用設計”であるメリットが十分感じとれる。フロントに重量のあるエンジンを搭載していないため、どの速度域でも、静粛性は驚く程高い。特に高速走行時の空力はかなり計算されており、EVでなければ気が付かないレベルの風切り音までも抑え込んでいるのは見事である。
また、重量のかさむ大容量バッテリーは車両の中央床下に搭載されているから、コーナリングは軽快で、クルマの動きが非常に“素直”。言い換えれば、コーナリング性能は追い込めば追い込むほどそのポテンシャルの高さがわかるもので、5ドアハッチバックのクルマとは思えないほどよく曲がる。
アクセルは“踏む”というより“乗せる”程度で街中の走行はほぼこなせるほど。スタート時から大トルクを発生するEVの良さは十分出ている。静粛性に関してはプリウスPHVもかなり頑張っているが、やはりエンジンが始動してしまうと、そこは“ガソリン車”であることを納得するしかないのである。
とはいえ、リーフとプリウスPHVの最大の相違点は、充電に対する意識の違いだ。リーフはピュアEVである以上、いくら航続距離が長いといっても「航続可能距離」の値に、いつも目が行ってしまう。実際、テスト車を拝借してからエアコン・オンでちょっと走っただけで「残りは100kmちょっと」と言われると、正直心もとない。
インフラ整備の問題はEV、PHVとも多少の差こそあれ共通の問題だが、EVのほうがやはり深刻である。逆に言えば、その弱点を補えるのがPHVのメリット。EV走行ができなくなったらあとはHVとして何も考えずに走ることができるわけだ。
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スマホの普及も後押し
PHV、EVともに、今やIT(Information Technology)との連携はマストと言っていい。各自動車メーカーはカーナビなどをコアにしたITS(高度道路交通システム)技術の進化を日々加速させているが、PHV、EVの場合は、爆発的に売れているスマホ(スマートフォン)と連携することで、充電環境やバッテリーの状態を把握することができる。
先行するリーフのスマホ用アプリは非常にシンプルでわかりやすいのが特徴。タイマー充電やエアコンの遠隔操作など機能は限られるが、不便さは感じない。
一方、プリウスPHVの場合は、その“本気度”が伝わってくる。「eConnect(イーコネクト)」と呼ばれるサービスでは、バッテリー残量からEV走行可能距離、充電ステーションの位置、そしてエコ運転情報やユーザー同士のエコ運転ランキングまで、スマホの画面上で確認することができる。
そこでがぜん重要となるのが「DCM(Data Communication Module)」の存在である。DCMは、トヨタ系のカーナビで独自の渋滞情報や各種情報を取得する際に使用する“通信モジュール”のこと。今回eConnectのサービスにはスマホのBluetooth機能を使う「CAN-BT(Controller Area Network-Bluetooth)」とDCMの2通りの方式がある。実は前述した機能までは対応するスマホが1台あればCAN-BTで使えるが、リモートエアコンやリモート充電といった機能はDCMが無いと現状では使うことができない。
というわけで、ライン装着されるDCM搭載純正ナビが必要になるのだが……テスト車「G“レザーパッケージ”」には標準装着されるものの、「G」グレードでのオプション代は、51万2400円と高額になる。
もちろん、この価格の中には、CAN対応専用DCMの他、フルセグチューナーやハンズフリーユニットなどが“てんこ盛り”状態で含まれるのだが、サービスを早く普及させるためには、DCMの単独仕様なども含めた改善策も必要となってくるだろう。
越えなければならないハードルも
プリウスPHVと普通のプリウスとの価格差は、88万円。その差は、最大45万円のCEV補助金を使うことでかなり縮まるし、eConnectを含む「PHV Drive Support」というパッケージサービスが3年間無料で提供される点を考えれば、意外と買い得感は高いとも言える。
しかし、最大のハードルは、購入時に家庭用の充電設備工事が必要な点だ。現実的には、車両を購入したディーラー経由で、トヨタホームとミサワホームイングの各支店が取り付けを行うが、最も安い専用コンセントの価格は9万5000円(税別・工事費込み)。さらに、万が一のブレーカーダウンを防止し、充電と家庭内の電力商品を最適化する充電サポートツール「H2V Manager(エイチツーブイ マネージャー)」5万2290円(税込み・工事費別)も購入したほうがいい、ということになる。
つまり前述したDCM同様、車両だけポンと買うだけでは、PHVのある生活をフルに楽しむことはできない。また、リーフでも同様だったが、集合住宅(マンション)への設置は区分所有者の3/4以上の賛成が必要であるなど、現実的には、一戸建てに住むユーザーが中心となる。
では、マンションの居住者は買えないかというと、必ずしもそうではない。PHVならではのうまみはかなり減るものの、前述した「PHV Drive Support」の会員は、トヨタの販売店や一般施設への設置が進められる充電ステーション「G-Station」で1回1時間の充電(満充電の2/3)が無料で行える。
筆者の場合、自宅から最寄り駅までの往復は4km。これを平日5日間使っても20kmで、“EV領域”で済む。週末にディーラーに行って、ちょっと充電してくれば、電気代もかからないのだ。
まあ、普通はそんな使い方はしないかもしれないが、実は意外とお得だったりする。そのほか、PHVの新しいサービスとしては、スマホを通じてクルマとつぶやく(つながる)「トヨタフレンド」もあるのだが、こちらはまだ様子見。ユーザー同士のコミュニティーの場としては興味深いが、実用性はまだ「生まれたばかりの赤ちゃん」レベル。今後に期待、というのがホンネである。
(文=高山正寛/写真=高橋信宏)

高山 正寛
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