メルセデス・ベンツE250アバンギャルド(FR/7AT)/E400ハイブリッド アバンギャルド(FR/7AT)
節目のビッグマイナー 2013.06.13 試乗記 内外装からパワートレイン、安全装備に至るまで、合計2000カ所以上の変更を受けた「メルセデス・ベンツEクラス」。V6エンジンが直4ターボに置き換えられるこの「節目」の時代、メルセデスの中核モデルはどう進化した?6モデルを追加して全21モデルに
メルセデス・ベンツの「Eクラス」がモデルチェンジした。従来の区切り方でいえばマイナーチェンジなのかもしれないが、インポーターいわく2000カ所以上の変更が施され、見た目も大きく変わり、モデルラインナップも大幅に拡充するなど、プラットフォームが変わっていないだけで、規模感からするとフルモデルチェンジに近い。
ひと目でわかる変更点は顔が変わったこと。「Cクラス」同様、ほとんどのモデルでフロントグリルの中央に大きなスリーポインテッドスターが配置されるようになった。古い話をすると、メルセデスのセダンにはグリル上にスリーポインテッドスターのオーナメントがあり、クーペや「SL」など華やかなモデルにはグリルの中央に大きなスリーポインテッドスターが置かれるのが、いわばお約束だった。
現行のCクラスセダンでそれを崩したのだが、崩したといっても別に未来永劫(えいごう)その約束を守ると宣言していたわけではなく、技術的な理由でもなかったので、現行Cクラスが街にあふれるようになると、発表直後の違和感はなくなった。EクラスはCクラスよりもオーセンティックなモデルであり、カンパニーカーとしての用途も多いだろうから、サントリーの健康食品みたいに「若返り効果」や「妻の見る目が変わった!」的な要素が必要なのかな? と思わないでもなかったが、実物はうまくまとまっていたのと、新型にもわずかに残る従来の顔つきのほうがすてきとも思わなかったので、これはこれでいいのだろう。
ただ、「CLS」という同じコンポーネンツを用いる色っぽいモデルを新たに設定したのだし、「A」や「B」など、若々しいモデルも増やしたのだから、昔からあるEクラスくらいは、ハイテク満載の中身とは裏腹に古めかしいくらいの見た目を保ってほしいと思う。そうしてくれたって僕がメルセデスに何かお返しすることはできないので、言ってもしかたないことではあるのだが。
顔つきのほかにも、ボディーサイドのキャラクターラインの入れ方やリアコンビまわりなども変わったが、大幅な顔の整形ぶりに比べれば、シミ取り程度といったところ。
見た目の変化よりも、モデル数が増えたことのほうが重要だと思う。Eクラスはベーシックなモデルから順に、「E250」(2リッター直4ターボ)、「E300」(3.5リッターV6)、「E300 4MATIC」(3.5リッターV6)、「E350」(3.5リッターV6)、「E350ブルーテック」(3リッターV6ターボ)、「E400ハイブリッド」(3.5リッターV6+モーター)、「E550」(4.7リッターV8ターボ)、「E63 AMG」「E63 AMG 4MATIC」「E63 AMG S」「E63 AMG S 4MATIC」(いずれも5.5リッターV8ターボ)と、これでもかというほどのモデル数を誇る。念のために言っておくと、ブルーテックとあるのはディーゼルで、4MATICとあるのは4WDだ。これでEクラスは最安で595万円、最高で1817万円と価格帯の広いモデルとなった。
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ダウンサイジングの次なる段階へ
トピックとしては、「Sクラス」に続くハイブリッドモデルとなるE400ハイブリッドの新設と、E350ブルーテックの動力性能向上と燃費向上、それにAMGモデルへの4MATIC新設、およびより動力性能の高いSモデルの新設など、いろいろあるが、多くの人に関係があるという意味で最も重要なのは、E250の直4エンジンに新しいテクノロジーが盛り込まれたことだろう。
2リッター直4ターボエンジンは、成層燃焼リーンバーンエンジンとターボチャージャー、それにEGR(排ガス再循環装置)が組み合わせられている。成層燃焼とは均質燃焼の対義語で、燃焼室のなかの点火プラグの付近だけ(ガソリンが)濃い混合気とする技術。リーンバーンとは読んで字のごとく、ストイキ(理論空燃比)よりもガソリンの割合が低いことを指す。それぞれの技術はあったが、ターボエンジンにこれらを盛り込んだのが新しい。ピエゾインジェクターをはじめとする高価な噴射装置の採用や触媒のNOx(窒素酸化物)吸蔵技術などが進化して可能になったという。
おかげで、2リッターターボとして一線級のパワーを維持しながら、よい燃費とクリーンな排気を実現した。1750kgの車体を動かしながらJC08モード燃費15.5km/リッターは立派。このエンジンの成層燃焼リーンバーンなしバージョンが「A250/B250」に横置きされる。最高出力、最大トルクは同じだが、両車の燃費が発表されていないのは、E250より下回ったら都合が悪いからじゃないのか? と、ついうがった見方をしてしまうほど、E250の燃費はすばらしい。
直噴化し、ダウンサイジングしてターボを付与したガソリンエンジンを「高効率だ!」と褒めちぎっていたのはついこの前のことのようだが、わずか数年で主要メーカーがこぞって実現し、今ではE250くらいのことをしないとアピールできない。ダウンサイジングターボを広く採用した先駆者のフォルクスワーゲンはフォルクスワーゲンで、4気筒なのに気筒休止を実現しているし、すでに技術力をアピールするドイツメーカーは次のフェイズへ突入した感がある。
V6を脅かす直4の実力
細かい仕様を分ければセダン/ワゴン合わせて90を超えるEクラスの各モデルのなかで、E250が最もバリューフォーマネーの高いモデルだと断言できる。細かく言えば、装備を極限まで落として595万円を実現した地味顔のベースモデルではなく、レーダーセーフティーを標準装備し、新しいグリルを備える655万円の「E250アバンギャルド」か35万円高の「E250アバンギャルド ステーションワゴン」こそがベストだと断言してしまおう。
理由はいくつかあるが、一番評価すべきはE250アバンギャルドでも、200万円以上高いE350やE400ハイブリッドに比べ、必要な装備が劣るということはないし、乗り心地もまったく劣らず快適だということだ。燃費は圧勝。パワーだってすごく上まで回した先のゾーンにしか違いはない。じゃ200万円ちょっとの差はなんなのか。我慢しなくてはならないのは、エンジンのフィーリングの違い。V6ほどスイートじゃないというだけだ。メルセデスは価格の違いに理由がきちんと存在するメーカーではあるが、今回にかぎってはV6と直4の間に本質的な違いが(今のところ)見いだせない。
ちなみに、今回は新しいE300やE350に乗る機会がなかったので、新しいE250とマイナーチェンジ前のE350との比較になってしまうが、V6ガソリンは大きく変わってはいないはずなので、比較してもおかしくはないはずだ。
その分、今回E400ハイブリッドというE350に駆動用バッテリーと電気モーターを付与したバージョンを新設し、V6シリーズにも目新しいニュースを付け加えたのだろう。ハイブリッドは短距離ながらEV走行も可能で、アクセルを深く踏んだ際のトルクの厚さはハイブリッドならではのものがある。ただ、これがV6シリーズ延命の根本的な解決策というわけではなく、V6エンジン自体も、そう遠くない将来に大きく進化するのではないだろうか。
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自動運転がすぐそこに
毎日練習する子供が急に自転車に乗れるようになるように、またiPhone登場で一気に携帯電話が次の時代へ進んだように、進化というものはなだらかではなく、竹のように節目で大きく進化するとよく言うが、E250の直4エンジンに触れると、今がちょうど竹の節目で、もうV6要らないんじゃないかと思わされる。V6はV6で、V8要らないんじゃないかと思わせる性能で出てくるのかもしれないが。
もう少し大きな時間の流れを読み取ろうとすると、最大のライバルである「BMW 5シリーズ」のラインナップを見てもわかる通り、高まる燃費要求に対応するため、従来V6を積んできたクルマのゾーンを直4ターボが担う時代にシフトしつつあるということでもあるのだろう。
ただし、エンジンのシリンダー数を減らしてもパワー、燃費両面で高性能を発揮できるようにはなったが、高級になったわけではない。高級車になればなるほど、燃費なんてどうでもいいという本音をもつお客さんの割合も増える。じゃ、シリンダー数を減らしたうえで、どうやって今までどおり高い値札をつけるのか。安全デバイスはそのひとつだろう。
従来、Eクラスには、完全停止を含め前車に追従するディストロニック・プラス、前車に近づき過ぎると警告を与えるブレーキアシスト・プラス、その警告にドライバーが反応しない場合、最初に軽い自動ブレーキによる警告、次に強い自動ブレーキで衝突を回避、あるいは軽減するプレセーフ・ブレーキが備わっていた。
今回、新たに後方から車両が近づいた際にリアコンビランプを点滅させて後方車両のドライバーに注意を促すと同時に自車のブレーキを作動させて二次被害を軽減するリアCPAや、走行中に前輪が車線を逸脱した際、車両が自動的に片輪にブレーキをかけて車線中央に戻すアクティブ・レーンキーピング・アシスト(車線がなくてもディストロニック・プラスで追従している前方車両に合わせ自動的にステアリングが動く! ただし法的な問題で15秒間でキャンセル)といった機能を盛り込んだ。
ステアリング自動操作を付け加えたことで、自動運転技術は一歩手前から半歩手前に進んだ。法律さえ許せばその日のうちに完全な自動運転車両を発売しそうな勢いだ。過信は禁物だが、率直な感想を言えば、最高に便利だ。
(文=塩見 智/写真=小林俊樹)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツE250アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1855×1455mm
ホイールベース:2875mm
車重:1750kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:211ps(155kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)245/40R18 97Y/(後)265/35R18 97Y(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:15.5km/リッター(JC08モード)
価格:655万円/テスト車=668万4000円
オプション装備:前席シートヒーター(5万円)/イリジウムシルバー(8万4000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1534km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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メルセデス・ベンツE400ハイブリッド アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4880×1855×1455mm
ホイールベース:2875mm
車重:1900kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:306ps(225kW)/6500rpm
エンジン最大トルク:37.7kgm(370Nm)/3500-5250rpm
モーター最高出力:27ps(20kW)
モーター最大トルク:25.5kgm(250Nm)
タイヤ:(前)245/40R18 97Y/(後)265/35R18 97Y(ピレリPゼロ)
燃費:15.2km/リッター(JC08モード)
価格:890万円/テスト車=930万円
オプション装備:パノラミックスライディングルーフ(20万円)/360度カメラシステム(5万円)/ハーマンカードン・ロジック7サラウンドシステム(15万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:3803km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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