「人とくるまのテクノロジー展2014」の会場から
2014.05.23 画像・写真2014年5月21日~23日、神奈川県のパシフィコ横浜で恒例となった日本最大の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2014」が開かれた。自動車メーカーをはじめ、部品メーカー、材料メーカー、計測・解析機器メーカーなどが最新の自動車技術を展示するこの技術展。23回目を迎えた今回の出展社数は491社で、昨年(475社)に続いてまたもや過去最多を更新した。いまさら言うまでもなく環境関連技術を中心とする展示で埋め尽くされた会場から、リポーターが注目した技術を紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

パシフィコ横浜の全ホールを使い、491社が出展した。
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パシフィコ横浜の全ホールを使い、491社が出展した。
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マツダのブースに展示されていたロータリーエンジンの主要部品。下段に並べられた部品を上段の「従来RE」に比べると、ローターもセンターハウジングも薄い。ということは排気量が小さいわけだが……実はこれ、2012年からリース販売している「デミオEV」をベースに開発中のレンジエクステンダーEV用の、330ccシングルローター・ロータリーエンジン用の部品なのである。
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330ccシングルローターエンジンとジェネレーター、インバーター、燃料タンクを組み合わせたレンジエクステンダーシステムユニットは、トランクスペースの床下に配置される。軽量コンパクトでスムーズなロータリーエンジンは発電用エンジンに向いているとされていたが、このシステムの場合、9リッターのガソリンをフルに使うと約180kmの航続距離延長が可能になるという。
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ボンネット下の眺めは既存の「デミオEV」と同じ。ロータリーエンジンを用いたレンジエクステンダーEVといえば、ロータリーの元祖である独メーカーのNSUを吸収したアウディが、2010年のジュネーブショーにコンセプトカー「A1 e-tron」を発表している。NSU(アウディ)が先鞭(せんべん)をつけ、マツダが実用化するという図式が繰り返されるのだろうか?
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エンジンのダウンサイジング化の波は、乗用車だけでなく大型車にも押し寄せている。UDトラックスのGH11TC型は、11リッターながら軽量で高性能なVGT(バリアブル・ジオメトリー・ターボ)の採用などにより、従来の13リッター級に匹敵する405ps/1800rpm、185.0kgm/1200rpmのパワーとトルクを発生すると同時に、いっそうの低燃費化を実現したという。
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トヨタのブースに展示されていた、昨秋の東京モーターショーでデビューした「FCVコンセプト」のシャシー。自社開発の新型燃料電池や2本の高圧水素タンクを床下に配置している。
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ホンダの目玉は「NSXコンセプト」のパワートレインのシステム。V6エンジンの後方にモーター、トランスミッション、デファレンシャルを収めたパワーユニットは、かなり大きく感じられた。
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日産のブースに展示されていた「ダイレクトアダプティブステアリング」こと、新型「スカイライン」に採用された量産車世界初のステア・バイ・ワイヤシステム。フェイルセーフの点からも、また法規上からも現時点ではステアリングシャフトは必要だが、これがなくなれば設計の自由度は飛躍的に向上するはず。その日はいつになるのだろうか(筆者の目の黒いうちは無理?)。
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「スカイライン」の「ダイレクトアダプティブステアリング」のバックアップ(フェイルセーフ)として採用されたクラッチユニット。電気的にステアリングが利かなくなった場合、フリーとなっていたステアリングシャフトをこのクラッチで締結して機械的に操舵(そうだ)可能とする。ベアリングのトップメーカーである「NTN」のブースに展示されていた。
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スズキが展示していた「オートギアシフト」。軽量化と低フリクション化が図られた新開発の5段MTとクラッチおよびシフト操作を自動的に行う電動油圧方式アクチュエーター(上方の青いユニット)を組み合わせた、いわゆるロボタイズドMT。インドのマルチ・スズキで生産されている、「アルト」ベースのリッターカー「セレリオ」に、すでに採用されているという。
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「ヤマハ・トリシティ」。同社のタイ工場でこの春から生産、販売開始された前2輪、後ろ1輪の3輪スクーター。スムーズな発進、横風の影響を受けにくいなど安定性のよさが特徴で、エンジンは水冷単気筒125cc。日本にも今秋に導入予定とか。
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ドイツに本社を置く、トランスミッションを中心とした大手部品サプライヤーであるZFのブースに展示されていたリアサスペンションユニット。スタビライザーとコントロールアームも兼ねる樹脂製の横置きリーフスプリングを採用し、従来のコイルスプリングを用いた4リンク式に比べて12~15%の軽量化に成功。同時にコストも低減される。間もなく欧州Aセグメントのモデルで実用化される予定という。
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同じくZFが展示していた樹脂製のコイルスプリング。「ご覧になった方は、みなさん展示用の模型と思われるようですが、実際に開発中のスプリングなんです」とのこと。
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イギリスの部品メーカーやエンジニアリング会社が集まった英国パビリオン内のロータス・エンジニアリングが展示していた「ロータス・エキシージS」用チタン製リアサブフレーム。現行の高硬度スチール製に比べ18kg、比率にして36%の軽量化を達成したという。
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同じく英国パビリオン内の、コスワースのブースにあったスーパーフォーミュラ用のステアリングホイール。
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三菱重工が出展していた、開発中の小型高性能ターボチャージャー。タービンブレードは、現行の軽自動車用の最小機種(左側)と比べ直径で80%以下となっている(右側、この写真ではあまり小さく見えないが)。
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同じく三菱重工が開発中の1.2リッタークラス用の電動コンプレッサー。エンジンで駆動する機械式スーパーチャージャーでもなく、排気で回すターボチャージャーでもなく、モーターで駆動するスーパーチャージャー(過給器)。ターボと違ってタイムラグがなく、機械式スーパーチャージャーのように、エンジンパワーを食うこともない。実用化に向けて解決すべき問題は耐久性とコストのみならず、「モーターの駆動音も人によっては気になるでしょう」とのこと。
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最大手の部品サプライヤーのひとつであるボッシュが出展していた次世代ワイパーシステム。ワイパーアームにウオッシャーノズルが内蔵されており、最適な位置にウォッシャー液を噴射することができ、ウオッシャー液タンクの容積削減が可能という。(アームから飛び出している青く細い棒がウオッシャー液の噴出を表している)
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最近もニュースで話題になった3Dプリンター。丸紅情報システムズのブースにはアメリカのストラタシスの製品が各種並んでいた。これは縦20×横15×高さ15cmまでのモノに対応するエントリーモデルで、価格は約200万円という。
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先の3Dプリンターで作ったターボチャージャーのタービンハウジング。製作時間は3時間ほどという。
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東芝が出展していた、先進運転支援システムに欠かせない車載カメラ用の、最新のCMOSイメージセンサーの効果を表した画像。HDR(ハイダイナミックレンジ)機能により、例えばトンネルの出口のような明暗のコントラスト比が高い場所でも白飛びせず、自然な明瞭な画像が得られる。
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トヨタテクニカルディベロップメントが出展していた、アクセルとブレーキ用の運転操作ロボット。一見したところ超アナログなシステムのように見えるが、これを使うことでペダルの踏力やストロークに対する反応まで解析可能となる。人間のペダル動作を何度でも高精度に再現できるため、例えば人間が乗車できない危険なテスト走行などにも対応可能という。
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TDKが開発中というEV用ワイヤレス給電のシステム模型。簡単に言うと駐車場などの路面に埋め込まれた給電コイルと車体下部に取り付けた受電コイルによって、駐車するだけで充電ケーブルを接続することなく充電できるシステム。原理的には、道路に埋め込めば走行中の給電も可能という。そうなると、まさしく“電車”ですな。
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屋外会場では各社の最新EV、超小型モビリティーおよび電動アシストモビリティー(セニアカーなど)の試乗も実施された。これは4台そろった超小型モビリティー。
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特設コースを走る超小型モビリティー「トヨタ i-ROAD」。