第372回:【Movie】これが人生!?
「シトロエンCX」デビュー40周年記念ミーティング
2014.11.07
マッキナ あらモーダ!
「CX」を愛する人たち
前回お伝えしたように、パリモーターショー2014が無事閉幕した。
その同じ会場で40年前の1974年、ある一台のモデルが彗星(すいせい)のごとくデビューを果たした。「シトロエンCX」である。
先代の「DS」以来19年ぶりに刷新したシトロエンのフラッグシップモデルは、その前衛的なスタイルと高速巡航性で「フランスが高級車を創ると、こうなる」ということを無言のうちに示していた。
動画でご覧いただくのは去る6月、大西洋に面した風光明媚(めいび)なリゾート地、ル・トレポールで「CXクラブ・ド・フランス」が催した、CXのデビュー40周年記念ミーティングの模様である。
その伝説とは裏腹に、CXはヨーロッパの中古車市場では、いまだ評価が定まっていない。なかには円換算したら、ひと桁万円で買える個体も欧州のネットオークションでは多々取引されている。
しかし“投資不適格”だからこそ、ファンたちは値上がりを期待するといった煩悩に支配されることなく、純粋にCXという創造物を愛している。
ところで、CXの特徴であるステアリングから手を離すと停止中でも直進状態に戻る機構は、フランスで「Diravi(ディラヴィ)」と呼ばれている。「Direction assistee a rappel asservi」(方向復元統制補助)の略だ。
このディラヴィ、CX乗りたちが口にすると、ボクには「C’est la vie(セラヴィ)」に聞こえてならない。セラヴィは「これが人生」を意味するフランス語である。両者がTV番組「タモリ倶楽部」の名物コーナー「空耳アワー」級の違いであることは百も承知だ。
彼らを観察してみよう。突然電装系の機嫌が悪くなっても、ドアを開閉するたび経年変化で不気味な異音がしても、そしてルーフの内装材が落ちてきても深く落ち込まない。代わりに、同好の士と、この特筆すべきフランス製プレステージカーが秘めたチャームポイントの数々について時間を忘れて語り合っている。
なんとおおらかで楽天的なこと。やはり「ディラヴィ」は、「セラヴィ」にしか聞こえない。
(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)
■「シトロエンCX」デビュー40周年記念ミーティング(前編)
■「シトロエンCX」デビュー40周年記念ミーティング(後編)
(撮影と編集=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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