マツダ・ロードスター プロトタイプ(FR/6MT)
軽量化が効いている 2015.01.31 試乗記 ついに新型「マツダ・ロードスター」がわれわれの目の前に現れた。ボディーサイズは歴代で最もコンパクトに抑えられ、車重は従来モデルと比べ100kg以上減がうたわれる4代目の走りやいかに? プロトタイプを伊豆のクローズドコースで試乗した。“走り”はほぼ最終段階
4気筒エンジンをフロントミドシップ・マウントして、現行モデルよりも100kg以上の軽量化を目指す――すでに公開されていたそんなわずかな情報を踏まえ、一糸まとわぬ“実車”が姿を現したのが、2014年9月に行われたファン感謝イベントでのことだった。
さらにパリやロサンゼルスなど、その後に世界各地で開催されたモーターショーにも出展され、そのたびに「搭載エンジンは1.5リッター」「ただし、アメリカ仕様は2リッターユニットを搭載」などと、情報も少しずつ充実度を高めてきた。
そしていよいよ、そんなマツダの次期ロードスターをテストドライブできる時がやってきた。この日がこれほどに待ち遠しかった日本車の登場は、正直随分と久しぶりという印象だ。
とはいえ、公式には「2015年6月頃発売予定」とアナウンスされているように、実際に手に入れることができるようになるまでには、さらにしばしのリードタイムが必要。
それゆえ、今回乗ることができたモデルはプロトタイプである。確かに、内装にはまだ仕上がり状態に達していない部分があったし、マルチメディア機能の一部などにも、まだ最終仕様通り働かないものも。ただし、「走りに関しては、ほぼ開発の最終段階を迎えています」とは、試乗会で同席した開発担当のエンジニア氏の弁。
もっとも、そんな段階になってもまだ、一部のスペックや詳細なグレード構成などはベールに包まれたままだ。その背景には、“そろそろのタイミング”にあると推測できる、役所へのデータ届け出申請などの事情とも関連があるのかもしれない。
歴代モデルで最もコンパクト
今やマツダ車では定番であるレッドに、ホワイト、ブラック……とさまざまに彩られた新型ロードスターのアピアランスは、初めて目にする自然光の下でも、どれも大いに魅力的に見えた。
開発目標値で3915mmという全長は、これまで歴代モデルで最もコンパクトだった初代モデルをも下回る値。が、実車を目前にしても「小さくなった」という実感はない。いかにもコンパクトなキャビン部分がより後輪寄りにレイアウトされてノーズ部分の長さが強調されたという、プロポーションゆえの効果だろうか。
全幅は1730mmにすぎないのに、同じくそれが1900mmを超える「ジャガーFタイプ」にも見劣りしない、ボリューム感あふれるリアフェンダー周りの表現などは、まさに秀逸だ。ただし、“薄目”表情のヘッドライトにだけは、初代モデルのオーナーだった人間としてはちょっとばかりの引っ掛かり感が残る。
個人的には、もっと明確に“瞳”を表現するグラフィックが欲しい。初代NA型では、ライトスイッチ・オンと同時に姿を現す、大きな瞳こそがチャームポイントだったのだから。
ところでそんな新型のデザインには、「すでにロードスターを四半世紀にわたって作り続けてきたマツダの作品だからこそ」と思えるディテールも、随所に目にすることができる。
例えば、一見不要にも思える小さな三角窓は、「オープン時の整流のために不可欠なアイテム」だというし、スポーツカー用としてはシートバック上部の張り出し量が小さいシートも、「着座状態でルーフを開閉する際の腕との干渉を避けるため」の形状という。
実際、オープン操作時の最後のロック動作にちょっと“力技”が必要となる以外は、シートに腰を下ろしたままルーフの開閉が無理なく行える。このあたりも恐らく、手動式トップを備えるロードスターを長年手がけてきたゆえのノウハウであるはずだ。
そこかしこにノウハウが生きている
ドライバーズシートへと腰を下ろすと、なるほどこのあたりにも「ノウハウが生きている」と実感できる部分が多くある。
高いセンターコンソールと、「手首の動きで操作が可能」な短いシフトレバーという組み合わせは、いかにもスポーツカーの王道という雰囲気。手のひらの中にすんなり収まり、操作感に優れたシフトノブの形状や大きさでさえ、入念に吟味された結果であるはずだ。
こうしたモデルではとかくおざなりにされがちなルームミラーを通しての後方視界が、十分確保されていることにも感心した。外観から察する以上に盛り上がりが大きく感じられるフロントフェンダーの峰も、リアルワールドでは“レーンマーカー”としてドライバー自身の直進安定性能力を高める(!)効用があるはずだ。
一方、フルスケールが8000rpmの大径タコメーターを中央にレイアウトした、クラスター内の3眼式メーターや、3本スポークデザインのステアリングホイールの採用は、これもまたいかにもスポーツカーの定番。うれしいのは大径ダイヤル式の空調スイッチで、これはタッチパネル式などよりもはるかに使い勝手に優れている。
そもそも、気温が下がれば「手袋をしてオープンドライブ」という機会も増えるはずのこの種のモデルにこそ、最も扱いやすい操作系デザインが必要なはず。その点では、左右スポーク部分にこれでもかと埋め込まれたステアリングスイッチ類は、逆にちょっと“らしくない”ポイントだ。
軽快で心地良い走り
ヒップポイントが低く、脚を前方に大きく投げ出すように腰掛けるという、いかにもスポーツカー的な流儀になる点はこのモデル特有であるものの、昨今のマツダ車の例に漏れず、理想的なドライビングポジションがごく自然に無理なく決められるのも、このモデルでの見逃せない美点。やはり昨今の他のマツダ車同様、アクセルをオルガン式にこだわったペダル類のレイアウトにもオフセットなどは感じられない。
ただし、MT仕様でヒール・アンド・トウを試みると、時にアクセルを“踏み足りない”感を抱く結果になった。この点は、最近あらためてテストドライブをした、最新「アテンザ」のMT仕様の方がしっくりくる印象だ。
初めて縦置きとされた1.5リッターのスカイアクティブGエンジンを、6段MTと組み合わせて搭載する新型ロードスターのプロトタイプモデルは、いかにも「軽量化が効いている」という感覚の加速を味わわせてくれる。最高出力131psと、エンジンパワーそのものはさほどでなくても車速の伸びはそれなりに素早いのだ。
絶対的な加速力は、「恐らく0-100km/h加速タイムは7秒台の後半か……」といった程度の感覚。心地良く耳に届くエンジンサウンドが、好感度をアップさせる一因となっている。
ルーフ閉じの状態でも悪くはないが、ルーフを開き、車外に放たれた反射音が耳に届くと、印象はさらに好転する……というよりも、走り去る新型ロードスターの音を外で聞くと、これがなかなかのもの。無理やりに重低音を強調したわけではなく、クリアで自然な伸びが感じられる新型ロードスターのサウンドには、「日本で最も入念に調律されたエンジンサウンドかもしれない」という印象を抱いた。
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感性に合った爽快なハンドリング
ハンドリングも、やはりまずは“軽快”というキーワードが思い浮かぶテイストが印象的だ。
エンジンがフロントにミドマウントされたFRレイアウトの持ち主ということもあり、ターンイン時点でのノーズの入りは軽やかだ。が、そうはいっても「際立って俊敏」というほどシャープな感触ではない点が、また好ましい。
ステアリングを操作してからロールが生じ、さらに横Gを感じるようになるまでわずかな“間”が存在する。これがむしろ、人間の感性に合った走りの爽快感を演出しているようにも感じられる。タイヤのグリップ力の限界がそう高くないことも含めて、これでサーキットに乗り入れたら、正直ちょっと物足りないかもしれない。
が、そもそもオープンモデルとは、外気の流れや香りを感じながら、爽快な走りを楽しむべき乗り物であるはず。となれば、バリエーションのベースとなるモデルの状態で、これ以上のハードコアなセッティングを求める必要はないはずだ。
今回のテストドライブは、基本的には完全舗装されたクローズドコースで行っている。そのため、多彩な路面を走行した場合の印象については深く言及できない状態だ。
が、そんな同じコース上をさまざまな車種で走った経験からすれば、少なくともコンフォート性能は歴代ロードスター中で最も優れていると想像がつくし、オープンモデル以外に範囲を広げても、「このクラスのモデルとしてはなかなかに優れている」と報告ができそう。
ちなみに、ルーフ開閉に伴う、ボディーの振動特性の変化は、「誰にでも分かるレベルにはあるが、絶対的にはさほど大きなものではない」と紹介できる。初代モデルのように、オープン状態とクローズド状態で”別のクルマ”のようになってしまう印象は、新型からは受けることはなかったわけだ。
こうして、ちょっとばかりの“味見”をしてしまったからこそ、いよいよ新型ロードスターの発売が待ち遠しくなった。今、このタイミングで望むのは、初代モデルが200万円を大きく下回るスターティングプライスで成功を遂げたように、とにかくリーズナブルな価格を設定して、再びのクリーンヒットを放ってほしいということだ。
(文=河村康彦/写真=マツダ)
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テスト車のデータ
マツダ・ロードスター プロトタイプ(FR/6MT)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3915*×1730×1235mm
ホイールベース:2315mm
車重:1000kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:131ps(96kW)/7000rpm
最大トルク:15.3kgm(150Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)195/50R16/(後)195/50R16
燃費:--km/リッター
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
*全長はライセンスプレートなしの数値。
※データはすべて暫定値であり、変更されることがあります。
テスト車の年式:--年型(プロトタイプ)
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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