トヨタ・シエンタX 7人乗り(FF/CVT)/シエンタ ハイブリッドG 6人乗り(FF/CVT)
オシャレな末弟はオールマイティー 2015.08.11 試乗記 個性的なデザインやボディーカラーで話題の、新型「トヨタ・シエンタ」に試乗。そのコンパクトミニバンとしての実力は……? パワーユニットやシートの仕様が異なる、2つのモデルでチェックした。兄たちとは違う最小ミニバン
トヨタミニバン3兄弟の末弟である。今や高級車としての存在感を放つ「アルファード/ヴェルファイア」、ファミリーカーのスタンダードとなった「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」の下に位置するトヨタ最小ミニバンが「シエンタ」なのだ。
2003年に登場して以来、12年ぶりのフルモデルチェンジである。大胆なデザインチェンジが話題となっているが、考えてみれば当然のこと。2003年といえば、「スズキ・ツイン」や「マツダRX-8」が登場した年である。変わらなかったら、そのほうが驚く。
最小とはいっても、同じ5ナンバーの“ノアヴォク”軍団と全幅は変わらない。大きく異なるのは全長だ。ノアヴォクの4695mmに対してシエンタは4235mm。460mmも短い。それでも3列で6~7人分のシートを確保しなければならないのだから、エンジニアとデザイナーにとってはミッション:インポッシブルである。ハメス・ロドリゲスが7人乗るのだ。
兄たちとは見た目からしてずいぶん違う。アルヴェルが威圧的でマッチョな肉体美を見せ、ノアヴォクはヤンチャ風味を利かせる。シエンタの旧型は優しげな優等生だったが、今回のモデルは主張が強い。オシャレならボクが一番! と声高に叫んでいるようだ。日本人の心の底に根強く存在するヤンキー的美意識とは相いれない感覚をまとっている。拒否反応があるのではないかと心配したが、8~9割は好意的反応なのだそうだ。発表から3週間の時点ですでに3万8000台の受注があったというから、ラテンな感性を持つ日本人が増えてきたのかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
コンセプトを語る「エアーイエロー」
試乗会場では、やはり黄色から予約が埋まっていった。新色の「エアーイエロー」の注目度は抜群だ。主査の粥川 宏さんが「色だけでこのクルマのコンセプトを語ってくれるんです」と話していたように、変化を印象づけたのはメインカラーにこの色を採用したことが大きいだろう。「ヴィッツ」や「アクア」にも黄色のボディーカラーがあるが、少し赤みがかった明るい色。エアーイエローは逆に青に寄せたクールなイメージで、「一筆書き」のグラフィカルなデザインにマッチしている。
これまでの受注の中では1割近くがイエローを指名しているというから、ビビッドな色としてはなかなかの健闘ぶりだ。試乗車はフレックストーンというコーディネートカラーのモデルで、アクセントカラーにブルーメタリックを使っていたから派手さもひとしおである。少々やり過ぎ感もあったが、グリーンに茶の組み合わせなどは悪くない。
内装のトリムカラーはフロマージュ。ブラックもあるが、汚れさえ気にならないのならこのデザインを生かすフロマージュを選びたい。共通の差し色としてオレンジが使われており、黒だけだとちょっとキツめの印象になる。ドアポケットなどにドットのグラデーションを配していたり、小技の使い方がうまい。それでいて、トレーやカップホルダー、コンビニフックなどの便利用品はミニバンらしく充実している。
とてもすてきな仕上がりだったのが、メーターパネルだ。スポーティーカーに使われていてもおかしくない。これは完全にドライバー向けのデザインである。面積自体は広くないが、ステアリングホイールの上に位置していて視認性も高い。運転席にいれば、ミニバンの中にいるという気持ちにはならないだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
軽ハイトワゴンとも戦う
パワーユニットは、1.5リッターガソリンエンジンとハイブリッドの2本立て。ガソリン車のベーシックグレードは、170万円を切るお値段から用意されている。価格コンシャスなヤングファミリーをターゲットにしているので、戦略的な設定が必要だ。なにしろ、価格帯と室内空間が接近してきた軽ハイトワゴンと戦わなければならないのである。
109psのエンジンはもちろんパワフルとはいえないが、このクルマの使用目的からすれば十分なものだ。高圧縮比、アトキンソンサイクル、クールドEGRなどの武器を駆使し、しっかり回って燃費もいいバランス点を見つけている。さすがにノアヴォクのガソリン車と比べると、軽快感はかなり上回る。ちなみに、知人が乗っていた旧型シエンタとは別物の、しっかりした走りだった。比べるほうが間違っているのだが。
ハイブリッド車に乗り換えると、やはりしっとり感では明らかな差があった。価格差は30万円以上だが、ガソリン車とほぼ同じ受注状況だそうだ。ミドルクラスセダンなどからダウンサイズしてくる年配の方などには、こちらのほうがウケがいい。恐らくガソリン車とハイブリッド車では、ユーザーの平均年齢がかなり違うのだろう。
ガソリン車で20.6km/リッター、ハイブリッド車では27.2km/リッターという燃費には舌を巻くしかない。ライバルの「ホンダ・フリード」に圧倒的な差をつけた。フリードは次のモデルチェンジでダウンサイジングターボを採用するといううわさもあるが、パワーユニットの選択がどんな結果をもたらすのか興味深い。
魔法のようなサードシート
サードシートのダイブイン機構は、先代から受け継がれている。このクラスのミニバンにとって、サードシートの扱いは死活問題だ。3列だと荷室がミニマムになってしまうので、通常は2列にして荷室の大きい乗用車のように使う。サードシートがじゃまになったり、出し入れが面倒だったりするのでは困るのだ。
やってみると、文字通りワンタッチでシートアレンジができることに感心する。力を入れる間もなく、シートが勝手に動いてしまう感覚なのだ。サードシートは魔法を使ったように消えてしまい、そこに座席があったとはわからなくなる。唯一、サードシートを起こすときにはちょっと腰に負担がかかるのだが、そこまでワガママをいってはいけないだろう。
シートとしてのデキも、ちゃんとしていた。床の下に隠れていたとは思えない座り心地である。乗り降りはセカンドシートをタンブルさせなければならないのが面倒といえば面倒だが、旧型と比べれば開口部の幅も広がっている。シート幅も70mm拡大しているから、閉塞(へいそく)感に苦しまなくていい。
ヤングファミリーとリタイア後の夫婦だけでなく、日本人のかなりの部分がこのクルマでやりたいことを不満なくこなせるだろう。車いすだってOKだ。「ラクティス」では後でルーフを高くしたから福禄寿(ふくろくじゅ)のようになってしまったが、最初から車いすのことを考えて設計しているからそのままでリクライニング式の最新型を入れられる。恐ろしく汎用(はんよう)性の高いクルマだ。それでいて人畜無害で退屈な形をしているわけでもないのだから、オールマイティーではないか。
19歳で結婚してすでに娘のいるハメス・ロドリゲスはもっと子供を作るだろうから、シエンタは役に立ちそうだ。エアーイエローを選べば、スペインでも目立つだろう。ハメスなら、スポーツカーよりシエンタを本気で気に入るかもしれない。滝川クリステルは、たぶん乗らない。
(文=鈴木真人/写真=田村 弥)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタ・シエンタX 7人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4235×1695×1675mm
ホイールベース:2750mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:109ps(80kW)/6000rpm
最大トルク:13.9kgm(136Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)185/60R15 84H/(後)185/60R15 84H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:20.2km/リッター(JC08モード)
価格:181万6363円/テスト車=228万3031円
オプション装備:アクセントカラー<ブルーメタリック>(5万4000円)/Toyota Safety Sense C<プリクラッシュセーフティーシステム+レーンディパーチャーアラート+オートマチックハイビーム>(9万1800円)/スーパーUVカット&シートヒーターパッケージ<スーパーUVカット+フロントドアIRカット機能付きグリーンガラス+運転席・助手席シートヒーター>(2万9160円)/ナビレディパッケージ<バックカメラ+ステアリングスイッチ>(2万9160円)/スマートエントリーパッケージ<スマートエントリー&プッシュスタートシステム+盗難防止システム>(4万6440円)/SRSサイドエアバッグ<運転席・助手席>+SRSカーテンシールドエアバッグ<フロント・セカンド・サードシート>(4万8600円) ※以下、販売店装着オプション スタンダードナビ ナビレディパッケージ付き車(15万120円)/ETC車載器 ビルトインタイプ<ナビ連動タイプ>(1万7388円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:608km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
トヨタ・シエンタ ハイブリッドG 6人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4235×1695×1675mm
ホイールベース:2750mm
車重:1380kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:74ps(54kW)/4800rpm
エンジン最大トルク:11.3kgm(111Nm)/3600-4400rpm
モーター最高出力:61ps(45kW)
モーター最大トルク:17.2kgm(169Nm)
タイヤ:(前)185/60R15 84H/(後)185/60R15 84H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:27.2km/リッター(JC08モード)
価格:232万9855円/テスト車=287万2123円
オプション装備:アクセントカラー<ブルーメタリック>(5万4000円)/185/60R15タイヤ+15×5.5Jアルミホイール(5万4000円)/Toyota Safety Sense C<プリクラッシュセーフティーシステム+レーンディパーチャーアラート+オートマチックハイビーム>(5万4000円)/スーパーUVカット&シートヒーターパッケージ<スーパーUVカット+フロントドアIRカット機能付きグリーンガラス+運転席・助手席シートヒーター>(2万9160円)/ナビレディパッケージ<バックカメラ+ステアリングスイッチ>(2万9160円)/LEDランプパッケージ<Bi-Beam LEDヘッドランプ+フロントフォグランプ+リアコンビネーションランプ+コンライト>(10万5840円)/SRSサイドエアバッグ<運転席・助手席>+SRSカーテンシールドエアバッグ<フロント・セカンド・サードシート>(4万8600円) ※以下、販売店装着オプション スタンダードナビ ナビレディパッケージ付き車(15万120円)/ETC車載器 ビルトインタイプ<ナビ連動タイプ>(1万7388円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:462km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
マクラーレンW1(MR/8AT)【海外試乗記】 2026.6.29 マクラーレンが、かつての「F1」や「P1」に続く“究極のロードゴーイングカー”として開発した、超高性能モデル「W1」。そのドライブフィールはどのようなものか? イタリアで試乗した西川 淳がリポートする。
-
ヒョンデ・ネッソ ラウンジ+(FWD)【試乗記】 2026.6.27 ヒョンデの水素燃料電池車「ネッソ」がフルモデルチェンジ。……といっても多くの方にはなじみがないかもしれないが、デザインが一気にモダンになったほか、満タンからの走行可能距離が25%近くも拡大するなど長足の進歩を果たしている。300km余りをドライブした。
-
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT)【試乗記】 2026.6.24 「SUVの形をしたGT」こと「アストンマーティンDBX」が、さらに高性能な「DBX S」に進化。より機敏なフットワークと、よりパワフルなエンジンを得たハイパフォーマンスSUVは、どのような体験を提供してくれるのか? 飛ぶがごとく走る英国の巨獣の実力に触れた。
-
三菱トライトンGSR(4WD/6AT)【試乗記】 2026.6.23 三菱のピックアップトラック「トライトン」のマイナーチェンジモデルが登場。トヨタの新型「ハイラックス」を迎え撃つべく三菱は、シャシーを鍛え上げ、走行性能をさらなる高みへと引き上げている。400km余りをドライブした印象をリポートする。
-
ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド3リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.6.22 ハーレーダビッドソンのユニークな三輪モデル「トライク」シリーズが大幅に進化。お値段800万円超(!)の最上級モデル「CVOストリートグライド3リミテッド」の試乗を通し、新しくなった乗り味と、受け継がれる独創のファン・トゥ・ライドをリポートする。
-
NEW
ホンダのビーチクリーン活動が20年の節目に 本田宗一郎が涙したというそのルーツとは?
2026.7.1デイリーコラムホンダが陰に日向にと活動を支えてきたビーチクリーン活動が2026年で20周年を迎えた。これ自体も素晴らしいが、実はホンダとともに活動を運営する団体の設立には、かの本田宗一郎氏の涙が関連しているというから興味深い。今から60年前の人間味あふれるストーリーを紹介する。 -
NEW
第118回:デザイン目線で大総括! 2026年上半期のニューモデル ―「マツダCX-5」「ホンダ・スーパーONE」編―
2026.7.1カーデザイン曼荼羅例年同様、さまざまなニューモデルが登場した2026年の上半期。クルマ好きの注目を集めた新型車の数々を、カーデザインの視点で振り返ってみよう。まずは、一見キープコンセプトに見える新型「マツダCX-5」と、古くて新しい「ホンダ・スーパーONE」から! -
NEW
BMW R1300RS(6AT)
2026.7.1JAIA輸入二輪車試乗会2026BMWが擁するフラットツインの大型スポーツツアラー「R1300RS」に試乗。巨大なボクサーエンジンと安定志向の足まわりの調律は、大人のライダーが週末を楽しむためのバイクとして、完璧な仕上がりをみせていた。 -
NEW
トヨタGRカローラRZ(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.1試乗記GAZOO Racingの手になる「トヨタGRカローラ」が、一部改良でさらに進化。強化されたボディー剛性にサウンドコントロールシステムの追加など、従来モデルからの変更点をおさらいしつつ、硬派で辛口なその走りをリポートする。 -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2026.6.30試乗記アウディのコンパクトSUV「Q3」がフルモデルチェンジ。新しくなったのはすっかり押し出しの強くなったフロントマスクだけでなく、内装もすべて新設計。インフォテインメントや灯火類などにも最新のシステムを採用した意欲作だ。「スポーツバック」の4WDモデルの仕上がりをリポートする。 -
フェラーリ初の電気自動車「ルーチェ」をどう思う?
2026.6.30あの多田哲哉のクルマQ&A公開されるやさまざまな議論を呼んでいる、フェラーリ初の電気自動車「ルーチェ」。その存在を、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどうみるのか? また、多田さん自身が開発を任されたらどうするのか、話を聞いた。








































