メルセデス・ベンツA250シュポルト 4MATIC(4WD/7AT)
もう一度試してみる価値がある 2016.02.05 試乗記 フルモデルチェンジから3年にして大幅な改良が施された「メルセデス・ベンツAクラス」。200psオーバーのターボエンジンとフルタイム4WDを組み合わせた「A250シュポルト 4MATIC」に試乗し、その進化の度合いを確かめた。好調を支えるFF系シャシーの商品群
2015年のメルセデスの世界販売台数は187万台強と、5年連続の伸長となった。このうち、3代目Aクラスより採用されたMFAプラットフォームの商品群、つまり「Bクラス」や「GLAクラス」などを含めた横置きFF系ラインナップの販売台数は58万台余りと、全体の3分の1近くを占めるほどになっている。
「サンドイッチ・コンセプトのプラットフォームを持ったかつてのAクラスがあれば、今ごろEVやらFCVやらオートノマスやらで、その床下スペースが大活躍していたのではないか……」と考えもするが、販売台数の増加と顧客年齢の引き下げという喫緊課題をあっさり両立させたのだから、ともあれ商売的にはMFA戦略、誰の目からみても大成功ではある。
しかし、その主軸を担う現行型Aクラスについては、端々に熟成不足を感じることがあったのも事実だ。その最たるところは乗り心地で、日本仕様はランフラットタイヤが標準設定されたこともあって、タウンスピードなどでの小入力に対する足まわりのバタつきや、凹凸に対する細かな突き上げや揺すられ感が目立っていた。その後、年次ごとに小改良が加えられたこともあって、雑味は随分取り除かれたものの、どこか筋張った乗り味、という大枠に変化はなかったように思う。
そのAクラスに、モデルライフ半ばにして初の大掛かりなマイナーチェンジが施された。一見するに、“AMG風味”の入ったフロントバンパーや自動で配光を調整するLEDヘッドライト、8インチとなったインフォテインメントシステムのモニターなど、それはよくある商品力向上を兼ねた化粧直しである。が、ランニングチェンジでは果たせなかった仕様変更をマイナーチェンジ時に盛り込むのはメルセデスの常套(じょうとう)だ。
大幅に洗練された乗り心地
今回のビッグマイナーチェンジにおいて、性能面での変更点が最も多く挙げられるのがA250シュポルト 4MATICである。ECUチューニングの変更により218psとなった直4ターボユニットや、電子制御可変の油圧アダプティブダンピングシステムの採用、これらの出力特性や減衰力特性に加え、変速速度や操舵(そうだ)アシスト力などを個別設定できる「インディビジュアルモード」を備えた「ダイナミックセレクト」を装備するなど、進化が相応に期待できる内容となっている。
その変化はロケへと向かう一般道で早速確認できた。以前までのサスペンションはピッチやロールの処理が甘いうえに、路面のスクラブを真に受けての微振動も感じられるなど、その乗り心地は決して快適とはいえないものだった。が、アダプティブダンピングシステムを備えた新たなサスは、ダンパーの依存度を強めたライドフィールとなっているようで、減衰力のモードを「コンフォート」にしておけば、これらのネガはもう気にすることもない。低速域ではプレミアムコンパクトという言葉に見合う洗練されたライドフィールが備わっている。
その快適な乗り心地に身を任せつつ、高速移動ではアクティブクルーズコントロールの「ディストロニック・プラス」も多用してみたが、こちらも当初の仕様に比べると前車追従時のパラメーターがより熟成された仕様に改められているようで、加減速のレスポンスやリニアリティーがより自然なものになっていた。
動力性能の向上に関しては従来型と比較して体感できるほどの違いはない。サウンドチューニングが巧みなので印象的にはスポーティーだが、回転フィール自体はさほど軽快ではなく、パワー感もどちらかといえば全域でベタッとした感じ。回転の上下にかかわらず必要な力をしっかり引き出せるのはいかにもメルセデスらしいが、「AMG A45」の炸裂(さくれつ)感を知る身には、もう少し回すほどに力が乗っていく感触が欲しいと思ってしまう。
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コーナリング時に感じる抜群の安定感
マルチプレートクラッチの締結を電子制御することによって、最大で50%の駆動力を後輪に配分する4WDシステムのレスポンスは、ドライ路でも素早く、コーナリング時の踏み込みではリアに駆動力を伝達する感覚がしっかりとドライバーに伝わってくる。そもそもFFでもシャシーファスターの傾向があったA250だけに、その安定感は抜群で、今回試乗したようなワインディングロード程度ではまったく姿勢を崩す兆候もない。
サスペンションも「スポーツ」モードに切り替えた際の減衰力の変化が大きく、サーキットレベルでのハードなドライビングにも耐えうる姿勢制御をみせてくれるはずだ。ただし、四駆化による重量増もあってか、切り返しなどでの回頭性のシャープさでは、そこが強烈だったFFモデルに対して幾分劣るようで、ホットハッチにある程度のやんちゃさを求める向きは安定志向に過ぎるという印象を受けるかもしれない。
現行型Aクラスは実用性をBクラスに託し、メルセデスが苦手としていた過激なまでのスポーティーネスを、彼らにとってのエントリーユーザーに訴えるという未踏の目的があった。それゆえ、足まわりは全般にハードな設定に過ぎていたのかもしれない。そこにきて日本仕様はランフラットタイヤが標準装着されたこともあり、動的な上質感という点においては難があったのは事実だ。
対して、今回のマイナーチェンジではメルセデスらしいライドフィールを盛り込むことに主眼が置かれたのだろう。A250シュポルト 4MATICに乗ると“初手”からの進化の過程がまさにそういうベクトルであったことがよくわかる。デビュー当初にAクラスを試してみたがピンとこなかったという方々には、再度試乗の価値ありとお伝えしておきたい。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツA250シュポルト 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4355×1780×1420mm
ホイールベース:2700mm
車重:1560kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:218ps(160kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR18 95Y/(後)235/40ZR18 95Y(ダンロップSP SPORTMAXX GT)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:529万円/テスト車=569万円
オプション装備:AMGレザーエクスクルーシブパッケージ<本革シート+メモリー付きフルパワーシート[前席]+レザーARTICOダッシュボード[レッドステッチ入り]+レザーARTICOドアパネル[レッドステッチ入り]+アンビエントライト[マルチカラー、ウェルカムファンクション機能付き]+パノラミックスライディングルーフ[挟み込み防止機能付き]+harman/kardonロジック7サラウンドサウンドシステム>(40万円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1951km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:335.1km
使用燃料:37.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.0km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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