メルセデス・ベンツA45 AMG 4MATIC(4WD/7AT)
粋な大人の遊びクルマ 2013.10.15 試乗記 「メルセデス・ベンツAクラス」で初のハイパフォーマンスモデル「A45 AMG 4MATIC」に試乗。0-100km/h加速4.6秒、車両価格640万円の“コンパクトハッチ”が持つ、本当の価値とは?「Aクラス」の理想型
最強の「Aクラス」、そして最良のAクラス。それが、2013年7月1日にラインナップに加わった「メルセデス・ベンツA45 AMG 4MATIC」の端的な感想だ。ホットハッチという言葉でくくるには、あまりに高価格であり、そして内容もまたクオリティーが段違いに高い。Aクラスのスポーツバージョンというだけでは、その価値が表現できないモデルである。
このところAMGにはずっと感銘を受けている。日本での仕様設定もうまいのだろうが、たんなるガチガチの乗り心地のスポーツセダンでなく、洗練の度合いが高いからだ。どのクルマでも、ベース車両の持っているいいところを伸ばす、上手なセッティングだ。
クルマによっては、ベース車両とあまり大きな違いを感じられないなんてこともあるにはあるが、少なくともA45 AMG 4MATICは、コンパクトで、かつ走りがよくて、そして内外装にはこのクルマにしかない個性が光る。AMGならでの美点が凝縮した仕上がりになっている。
1月17日に先行して発売されたAクラスは、美点もあるが、同時に、改善を望みたくなる箇所も併せ持っている。例えば「A180 ブルーエフィシェンシー」は、乗り心地はソフトで好ましいが、エンジンのパワー感がいまひとつで力不足を感じる。いっぽう、「A250 シュポルト」は、すばらしいブレーキを備えているが、乗り心地が硬すぎて、路面からの突き上げでからだがバラバラになりそうだ。
そこにあってA45 AMG 4MATICは、速い、よく止まる、よく曲がる、そして乗り心地もしなやかと、Aクラスの理想型と思わせる仕上がりだ。官能的な内外装というおまけもついてきて、本来、実用性重視で量産車向けのカテゴリーであるハッチバックのイメージを逆手にとった、富裕層の遊びクルマとしては最適の1台かもしれない。
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これまでのカテゴリーにはおさまらない
それにしても、メルセデス・ベンツA45 AMG 4MATICをどうとらえたらいいだろうか。「量産4気筒ターボとしては世界一パワフル」とメルセデスがうたう360psの最高出力と、45.9kgmの最大トルクを発生する2リッターターボエンジンを、フルタイム4WDシステムと組み合わせ、静止から100km/hまでは4.6秒と、スポーツカーなみの加速を見せるスペック。それに加えて、640万円という高価格。
これまでのホットハッチの範疇(はんちゅう)ではくくりきれないクルマである。ホットハッチの存在理由はなにか。根源的にいうと、元祖である「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」は、量産車のハッチバックをベースにしながら、高級車をしのぐ性能を持つところに意義があった。それによって、欧州に根強く残る階級間闘争に勝利するための道具として(被支配階級から)大いに歓迎された。そのあとに続いた各社のホットハッチのありかたも、おおむねそういう図式にあてはまるだろう。
いっぽう、コンパクトな車型というカテゴリーに目を転じてみると、メルセデスAクラスをはじめ、「アウディA1」および「A3」、そして「BMW 1シリーズ」、さらに「レクサスCT」などが市場でしのぎを削っている。だが、A45 AMG 4MATICの存在意義は単にコンパクトというだけではおさまらない。なので、このカテゴリーにも入らない。
だからこそおもしろい。と、640万円を全長4.4mにすぎないクルマに払えるひとたちは言うだろうか。たしかに、すごいのはエンジンにとどまらない。ギアボックスは、湿式多板クラッチを用いた7段のデュアルクラッチシステム「AMGスピードシフトDCT」。これに、トルク可変型の専用フルタイム四輪駆動システム「AMG 4MATIC」が組み合わせられる。
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一番の見せ場はコーナリング
「AMG 4MATIC」は、前後のトルク配分を、100:0から50:50まで、走行状況に合わせて連続可変するところに特徴をもつ。強大なトルクを有効に使い、常に最大級のトラクションを得ることを目指している。
加えて、サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアが4リンクと、形式こそスタンダードモデルに準じるが、スプリングもダンパーも、さらに径の太いスタビライザーもAMG専用だ。ブレーキは、フロントが4ピストンの固定キャリパーに350×32mmのドリルドベンチレーテッドディスク、リアはシングルピストンのフローティングキャリパーに330×22mmのドリルドベンチレーテッドディスクが採用されている。
そしてスポーティーな走行をサポートしてくれるため、コーナリング時に内輪にブレーキをかけることで正確なコーナリングを実現する「ESPカーブダイナミックアシスト」も装備。3ステージとなっており、ダッシュボードのスイッチでコントロールできる。
その結果、A45 AMG 4MATICはすばらしく楽しい。エンジンは1000rpmからレッドゾーンまで途切れなくパワーを出し、回転が上がっていくと4000rpmあたりから太めの排気音が勇ましく室内に響き渡るようになる。ただし、魔法の絨毯(じゅうたん)のようにクルマに載せられているのでなく、操縦の主体はあくまでドライバー。トルク感にもめりはりがあり、常に加速も減速も、アクセルペダルをコントロールするドライバーの意思どおりに行われる。
ハンドリングは、想像のとおり、A45 AMG 4MATICの最大の美点だ。コーナーを曲がるにしても、切り始めからエイペックスを通り出口から次のカーブへと向かうまで、とにかく速い。しかし加速のフィーリングと同じで、クルマがドライバーをせっつくことなく、高い速度でコーナリングをしたければそれに応えてくれるし、ゆっくりならそれはそれでよいとする。そんな感覚だ。
立体的な断面形状で握りの感触がよいハンドルを切り込んでいくと、フロントはじわっと沈んでいき、多少ラフにアクセルペダルを開け閉めしても体勢が崩れることはない。安定的に速い。路面のバイブレーションはハンドルにも床にも伝わってこず、「Sクラス」を運転しているのとどこかで近い感覚すらある。2.7mのホイールベースをもつシャシーに、全長4.4mのボディーを載せたハッチバックとは思えない重厚感だ。
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「奥ゆかしさ」こそが最大の長所
最近のメルセデス車で特に感心するのはブレーキだ。ここに金を惜しんでいないのはさすがだ。特徴としてはストローク感が短く、踏力でコントロールする味付けがより明確になっている。A250 シュポルトでも同じような高級なブレーキの感覚にいたく感心したが、A45 AMG 4MATICのブレーキはさらに上をいく。360psのパワーに十分以上に応えてくれることは言うまでもなく、足の裏に力を込めるだけでクルマの制動・挙動を制御する喜びを与えてくれる。抽象的な言葉を使えば、すばらしく高級である。
外観上は、「ツインルーバー」と呼ばれるフロントグリルがこのモデル専用として目を引く。加えて、フリックを備えたフロントバンパー、フロントフェンダー側面の「TURBO AMG」なるプラック、マットチタニウムグレーのトリムがあしらわれた側面とリアのスカートがこのクルマの存在感を強調する。さらに、18インチのAMG専用 5スポーク軽合金ホイールと、赤で塗られたブレーキキャリパーに、ドリルド通気式ディスクも、このモデル専用だ。
しかしどれも、わかるひとにしかわからない。ここがAMGの奥ゆかしさというか。大きなウイングがついているとか、フェンダーが派手にふくらんでいるとか、ことさら派手な演出はない。同じAクラスのユーザーがまっさきに、AMGモデルを発見するだろうが、その程度である。このおとなっぽい感覚こそ、A45 AMG 4MATICの最大の長所だと思う。
ファン・トゥ・ドライブか? と聞かれれば、イエスと答えるし、コンフォタブルか? と聞かれれば、やはりイエスと答える。もしドライバーがヤル気を出せばどこまでも応えてくれるし、流したいときは、そのムードに応えてくれるクルマだ。シートは「AMGアドバンストパッケージ」に含まれるハイバックタイプで、AMGの刻印が彫られている。サポート性もいいがクッションもたっぷりあり、路面からの衝撃はすべてていねいに吸収してくれる。
A45 AMG 4MATICは、富裕層の気晴らしの道具かもしれない。でも、メルセデスの真価は、その気晴らしを、すばらしく上質なやりかたでかなえてくれるところにある。640万円の価値はそこにあるはずだ。
(文=小川フミオ/写真=荒川正幸)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツA45 AMG 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4359×1780×1417mm
ホイールベース:2699mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:360ps(265kW)/6000rpm
最大トルク:45.9kgm(450Nm)/2250-5000rpm
タイヤ:(前)235/40ZR18 95Y(後)235/40ZR18 95Y(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:6.9-7.1リッター/100km(約14.1-14.5km/リッター、NEDC複合モード)
価格:640万円/テスト車=795万円
オプション装備:AMGアドバンストパッケージ(AMGパフォーマンスステアリング<本革/アルカンターラ>+AMGドライバーズパッケージ+AMGパフォーマンスサスペンション+AMGパフォーマンスシート+AMGエンブレム付きAMG E-SELECTレバー+AMGエンブレム付きエレクトリックキー+harman/kardonロジック7サラウンドサウンドシステム+チャイルドセーフティーシートセンサー<助手席>)(70万円)/AMGカーボンパッケージ(AMGカーボンファイバーフロントスポイラーリップ+AMGカーボンファイバーフロントスカート+AMGカーボンファイバードアミラー+AMGカーボンファイバーリアディフューザー+シルバークロームフロントグリル)(60万円)/ボディーカラー<designoマグノマウンテングレー>(25万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:825km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:198.0km
使用燃料:21.0リッター
参考燃費:9.4km/リッター(満タン法)/9.4km/リッター(車載燃費計計測値)

小川 フミオ
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