ボルボXC90 T8 TWIN ENGINE AWD インスクリプション(4WD/8AT)
納得のフラッグシップ 2016.04.28 試乗記 フルモデルチェンジで、見た目も中身もガラリと変わったボルボの最上級SUV「XC90」。中でも目玉とされる、トップモデルのプラグインハイブリッド車「XC90 T8」の仕上がりを報告する。“一番上”は全部のせ
現在のボルボの全ラインナップ中で、唯一1000万円を超えるモデル――表現がちょっとばかり直球な気もするが、フルモデルチェンジしたばかりの新型XC90シリーズの中にあって、頂点に位置するモデルとして設定されたT8グレードは、そんな価格も大きな話題となっている。
かつて、ボルボ車のグレード名に用いられるひと桁の数字は、搭載エンジンの気筒数を表すのに用いられていたが、そんな不文律も、“今は昔”。「T6」や「T8」といった数字が、同じ車種に搭載されるパワーユニットの、出力のレベルを示すものとなって久しい。
そもそも、「Drive-E」の愛称が与えられたボルボの新世代エンジンは、シリンダーの直径が82mmに統一された、モジュール設計のガソリンユニットとディーゼルユニットである。現時点では、そのすべてがターボ付き直噴システムを採用する直列4気筒で、他の気筒数のエンジンは発表されていない。
T8グレードの場合、前輪駆動用に、ひとつ下のT6グレード用と同一のツインチャージャー(ターボ+メカニカルスーパーチャージャー)式ガソリンユニット(最高出力320ps)を搭載した上で、リアに後輪駆動用の電気モーター(87ps)を加えた、ハイブリッドシステムを採用している。
そう、“ツインエンジン”なる、日本ではちょっと聞き慣れないサブネームは、内燃機関と電気モーターという2種類の動力源を用いることを示しているのだ。システムのトータル出力がシリーズ最高となることから、フラッグシップにふさわしいグレード名が与えられたこのモデルのJC08モード燃費は、T6の11.7km/リッターに対して、15.3km/リッターとなっている。
見えないところで賢いクルマ
T8グレードは、容量9.2kWhのリチウムイオンバッテリーをセンタートンネル部分に搭載し、35.4kmというEV航続距離を実現させたプラグインハイブリッド車であるが、そのことを外観上で示すのは、エンブレムの表記を除けば、左フロントフェンダー上に設けられた充電用コネクターと、このグレード専用となる21インチシューズだけだ。
インテリアも同様で、センターコンソール上で誇らしげに輝くクリスタル製のセレクターレバーを除いては、特別なモデルであることを、ことさら誇示するような部分は見当たらない。
XC90 T8には4WDシャシーが採用されるものの、後輪駆動力はモーターのみで発生させる方式で、プロペラシャフトは省略されている。これによって生まれたトンネル部分の空間に駆動用バッテリーをおさめたことで、ガソリンエンジン車と同等のキャビンやラゲッジスペースを確保しつつ、前後重量配分の適正化や低重心化を実現したというのは、このモデルが持つハイブリッドシステムの見どころのひとつとなっている。
もっとも、そんな賢いレイアウトは、ある程度のボディーサイズの持ち主で、センタートンネルの容量に余裕のあるXC90だからできることで、車種によっては、必要なボリュームのバッテリーは搭載困難になりそう。2015年秋に開発中であることが発表された「電動化を前提とした『40シリーズ』の新型」や、「2019年までに市販予定とされるピュアEV」では、全く異なる方策が採られることになりそうだ。
印象的な「静」と「動」
シンプルでクリーンな仕上がりに加えて、これまで他車で目にしたことのないオリジナリティーの高さにも好感が持てるキャビンに身を委ね、センターコンソール上のスイッチをひねってシステム起動。例のクリスタル製レバーを手前に引いてDレンジをセレクトし、弱めのクリープ力を抑えていたブレーキをリリースすると、ほとんど無音のまま、全長4950mm、全幅1960mmという大柄なボディーはスルスルと走り始める。
バッテリーの充電状態に余裕がある場合、低速・軽負荷で走行する場面は基本的にEV走行でこなすことになる。デフォルトでは「ハイブリッド」の走行モードが選択されていて、モーターへの負荷が増せば即座にエンジンが始動し、負荷が減ってエンジンの助けを必要としなくなれば、即座にエンジンは停止する。
ドライバーの意思とは関係なく、自動で行われるそんなエンジンの制御はなかなかスムーズで、ショックや振動を意識させられる場面は皆無。ただし、エンジンが始動すれば当然そのノイズは耳に入るわけで、それが「いかにも4気筒」な音色であるのは、1000万円超の高級車としてはちょっと気になる部分である。さらに言えば、「加速力はある程度で諦める代わりに、なるべくエンジンは始動させたくない」というドライバーの意思を容易に実現できるよう、他社の銘柄で採用例のある「踏み込み具合をクリック感で知らせるアクセルペダル」などで、EV走行の限界ポイントを伝えてほしいものだ。
ひとたびエンジンが始動してしまえば、基本的にそこから先は余力たっぷりのエンジンパワーが得られ、モーターアシストが必要になる場面はほとんどない。そこでフルスロットルを与え、“ツインエンジン”の出力すべてを引き出すならば、0-100km/h加速5.9秒という一級スポーツカーレベルの加速力が発揮できる。
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EVとしても実力派
一方、センターコンソール上のローラースイッチを操作して、バッテリー残量が許す限りエンジンを始動させずに走行を続ける「ピュア」モードを選択した場合、当然ながら“EV風味”は大幅に濃くなる。
極端に素早い加速を望まない限りは、モーターのみで駆動。EV状態のままで十分実用的な走りを可能にしているのは、後輪用モーターが87psと、それなりに大きな出力を発生できるだからだ。
ちなみに、そうしたEV状態での最高速は125km/h。そんな高速で走行すれば、たとえフル充電状態であっても駆動用バッテリーはたちまちカラになってしまうだろうし、本来こうした領域はエンジンで走行した方が効率に優れるわけだが、いずれにせよ、このモデルはピュアなEVとしてもそれだけのポテンシャルを持っているわけだ。
同じエンジンを搭載するT6に対して240kg増しとなった車重や、その重量配分、あるいは重心高の変化が良い方向に作用したということか、路面をヒタヒタとなめながらフラットに走る上質な感覚は、XC90というフラッグシップSUVの、中でもフラッグシップとなるグレードとして、納得のいく仕上がりだ。
ただ、油圧システムとの協調回生を行っていると思われるブレーキのフィーリングには、踏力(とうりょく)に対する利き味のリニアリティーという点で課題を残す。
端的に言えば、停止寸前まで速度が落ちてくると、最後の最後になって「思い通りのポイントにクルマを止めにくい」という印象がある。ヨーロッパ発のいくつかのハイブリッドモデルがいまだに同様の傾向を備えていることを思うと、この点ばかりは、トヨタを代表とする日本のハイブリッドモデルの仕上がりの良さが意識されるところである。
(文=河村康彦/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
ボルボXC90 T8 TWIN ENGINE AWD インスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1960×1760mm
ホイールベース:2985mm
車重:2340kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:320ps(235kW)/5700rpm
エンジン最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2200-5400rpm
モーター最高出力:87ps(65kW)
モーター最大トルク:24.5kgm(240Nm)
タイヤ:(前)275/40R21 107V/(後)275/40R21 107V(ピレリ・スコーピオン ヴェルデ)
燃費:15.3km/リッター(JC08モード)
価格:1009万円/テスト車=1084万円
オプション装備:Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1400W、19スピーカー>サブウーハー付き(45万円)/電子制御式4輪エアサスペンション+ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(30万円)
テスト車の年式:2016年型
テスト車の走行距離:1682km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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