第342回:タイヤにも“いかつさ”を
トーヨータイヤの最新作「トランパスML」を試す
2016.05.06
エディターから一言
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トーヨータイヤが2016年4月に発表したミニバン向けタイヤの最新作「トランパスML」。しっかりした走行安定性と耐摩耗性能、低燃費性能を実現しながら、人気の“いかつい系ミニバン”にもマッチする鋭角的でシャープなトレッドデザインを持つのが特徴だ。その実力をサーキットと一般道で試した。
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デザイン要素を強める
トーヨータイヤの最新作、トランパスML。トランパスは1995年に登場したミニバン専用タイヤの先駆けで、20年以上にわたって使われるトーヨーの看板ブランドだ。ミニバンの隆盛に連動するようにこのカテゴリーは盛り上がり、今では日本のタイヤブランドはたいていミニバン専用の銘柄をラインナップする。ヨコハマタイヤの「ブルーアースRV-02」、ダンロップの「エナセーブRV504」、ブリヂストンの「プレイズPX-RV」あたりが量販店でMLや既存の「トランパスmpZ」と並べられるミニバン専用タイヤだ。
ところで近ごろのミニバンは、「トヨタ・ノア/ヴォクシー」に対する「エスクァイア」をはじめ、「ホンダ・ステップワゴン」に対する「スパーダ」、「日産セレナ」に対する「ハイウェイスター」など、ノーマルモデルに対するカスタマイズモデルというかオルタナティブモデルというか、多くの場合、ちょっといかつくしたようなモデルおよびグレードが存在する。そして、いかつい系のほうが売れ行きがよいケースが多い。一番わかりやすい例を挙げると、2016年3月には「トヨタ・アルファード」が4024台売れたのに対し、「ヴェルファイア」は5005台売れている(自販連調べ)。
「ミニバン自体、上級グレードやカスタマイズ顔がウケているのなら、ミニバン専用タイヤにも、ベースモデルに対して少しデザイン要素を強めたモデルがあったっていいじゃないか!」というのがトランパスML登場の経緯だ。
ころがり抵抗と耐摩耗性を改善
MLは、すでに販売され、ML発売後も併売されるトランパスmpZをベースに開発された。トーヨータイヤによれば、mpZは同社の材料設計基盤技術であるナノバランステクノロジーを用い、各種ポリマー(ゴムそのもの)を最適配合して「ころがり抵抗低減」「ウエットグリップ向上」「耐摩耗性向上」をバランスよく実現した製品。
トレッド中央のセンターグルーブ部分に等間隔で英文の「L」のようなデザインが配置される。カタカナの「レ」のようにも見える。従来のmpZは同様にトレッド中央に英文の「Z」が等間隔に配置されるデザインだったが、MLの「L」よりシャープで大きい。MLは方向指定タイヤではないので、クルマの左側の車輪が「L」の尖(とが)った部分が前、右側の車輪は開いた部分が前となる。mpZよりも硬質で力強い印象を目指したという。アルファードに対するヴェルファイアほどのはっきりとした違いではないが、mpZよりもMLのほうが、よりシャープな印象を受けるといえば受けるかもしれない、少しだけ。
MLは、mpZに対し、ポリマーの配合を進化させることで、耐摩耗性を確保しながらころがり抵抗性能とウエットグリップを向上させた。その結果、JATMA(日本自動車タイヤ協会)が定めるタイヤの等級制度であるラベリングにおいて、mpZのころがり抵抗性能「A」(5段階の上から3番目)に対し、ころがり抵抗性能「AA」(5段階の上から2番目)に向上させた。ウエットグリップはmpZもMLも「b」(4段階の上から2番目)と同じ。
横剛性の高さが印象的
と座学で学んだ後、試乗へ。MLが装着された「フォルクスワーゲン・ゴルフトゥーラン」を一般道と高速道で走らせた。日本全国どこにでもありそうな、可もなく不可もなくといった舗装のドライ路面では、不整部分でのバタつきもよく抑えられ、突起に乗り上げた際の突き上げもマイルドで、不満を感じない。高速道で印象的だったのは、レーンチェンジ時の横剛性の高さ。これはmpZにも採用されているスーパーハイターンアップ構造の恩恵と思われる。これはプライコード(タイヤの骨格に相当するパーツ)を折り返してウォール部分を強化する手法で、重心の高いミニバンのふらつきを低減させるための工夫。トゥーラン自体、ふらつきがよく抑えられているミニバンだが、その特徴を増幅させるような安定感があった。
また、ほぼ同じ条件の「トヨタ・ヴォクシー ハイブリッド」2台に、MLとmpZを装着して特設コースで乗り比べた。サーキットのインフィールドを使った一部ウエット部分を含む周回路を走行したのだが、この条件での差は微妙だった。違うというのはわかるが、どちらのほうがどうだと表現するのが難しい違いで、程度もわずか。強いて言うなら、MLのほうがより新しいタイヤのように、わずかに当たりがマイルドで、より静かなように思えた。正直に言うと、教えられずに乗ったら銘柄を言い当てる自信はない。どちらもコーナーの途中でウエット部分に突入した際のグリップ力低下が急激ではなく漸進的で、安心感が高かった。
一日の長あり
100km/h前後を想定した緩やかなコーナーとストレートを結んだコースでは、ほぼ同条件のステップワゴン2台の片方にML、もう片方にトーヨーのベーシックタイヤである「ナノエナジー3+」をそれぞれ装着して走行した。このテストではインフィールド部分よりは明確に違いを感じとることができた。特に横剛性のしっかり感でははっきりMLのほうが上。ナノエナジー3+も、それしか知らなければ不満を感じるレベルではないが、こうやって乗り比べると、MLは力の入った新製品だということがわかる。
一般的な消費者にしてみれば、タイヤはどの銘柄を買えばよいかわからないパーツの代表だ。クルマ同様タイヤも成熟した製品であり、前作に対し性能が2倍! などという段階ではないからだ。しかもクルマのようにいろんな色やカタチがあるわけではない。けれど、だからこそ好みの銘柄をもっておけば迷わず選ぶことができるというもの。何をきっかけにどれを好きになっても問題ない。身も蓋(ふた)もない言い方をすれば、銘柄を気にするより新しさを保つほうが安心・安全につながる。そのうえで、20年以上前にミニバン専用をアピールしたトランパスは、ミニバン用タイヤの老舗銘柄という意味で、ミニバンユーザーが好みを決めるひとつのきっかけになり得るとは思う。
(文=塩見 智/写真=小河原認)

塩見 智
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