第364回:キーワードは“新興国”と“自動運転”
世界最大のシートメーカーが見据える未来とは?
2016.09.10
エディターから一言
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あのレカロを傘下に収める世界最大のシートメーカー、ジョンソンコントロールズ・オートモーティブエクスペリエンス(以JCA)が、2016年秋にジョンソンコントロールズから独立。社名も新たに「アディエント」としてスタートすることとなった。そこで、ジャーナリスト向けに同社の現状と今後についての説明会が行われたのでご報告しよう。
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3台に1台がJCAのシートを装着している
そもそもジョンソンコントロールズとは、アメリカのウィスコンシン州ミルウォーキー市に本社を置くコングロマリットで、主に3つの事業部門から成り立っている。ひとつはビルディングシステム、さらに鉛電池などのバッテリー事業、そしてシートメーカーのJCAだ。
JCAは全世界で7万5000人の従業員を抱え、売上高は239億ドル(約2兆4000億円)という非常に大きな企業だ。年間で生産するシートセット数は2200万台分にものぼる。つまり、全世界で生産されるクルマの3台に1台は、JCAのシートが装備されている計算となるのだ。もちろん、すべての主要な自動車メーカーと関係を持っている。
ジョンソンコントロールズ・オートモーティブジャパンの内田博之社長は、この企業規模について「研究開発と生産ネットワークは全世界に230拠点ある。このグローバルネットワークにより、(JCAは)他のシートメーカーよりも優位な状況にある」と述べる。ちなみに日本では2000年に池田物産を買収し、拠点を作った。
同社の市場分析では、2020年には中国での普通自動車の生産量が全世界の30%にのぼると予測されている。これは、北米や日本と比較して大幅な伸びを示すもので、もちろんJCAとしては今後も中国に注力していくという。内田氏は「アフリカなどの新興国市場の伸びも大きく、力を入れていく」と述べるとともに、「先進国でもこれまで同様に開発の手は緩めない」と強調した。
先進技術とクラフトマンシップが強み
地域別の売り上げは、アメリカとヨーロッパとアジアでほぼ3分の1ずつ。これについて内田氏は、「非常に上手に経営をしているなと感じている」とコメント。顧客の比率も売り上げと同様で、それぞれ3分の1ずつ。日本は約6%で、売り上げのほぼすべてが日産向けとのことだ。
拠点については、アジアに42カ所(約9割が中国)、ヨーロッパに210カ所、米国に72カ所、アフリカに6カ所の事業所を設置。日本では5カ所に工場があり、神奈川に本社とテクニカルセンターが、滋賀にレカロジャパンがある。このテクニカルセンターには衝突試験場も含まれており、日本国内での開発はすべてここで行われているという。
JCAが行う事業はシートに特化しているが、より具体的には大きく5つに分かれている。ひとつはコンプリートシート。読んで字のごとく、シートすべてを受注するものだ。そして、シートの表面のトリムのみ、フォームと呼ばれるシート内部のスポンジのみ、シートの骨組みの受注。そして、レカロ部門の事業である。
開発の基本的な考え方について内田氏は、「先進技術とともに、クラフトマンシップをとても重視しており、シートの表面や座り心地をものすごく大切にしている。マイスターと呼ばれる職人が各拠点におり、シートについての明確な判断ができる環境になっている。この点は非常に高く評価されており、他メーカーと比較しても優秀だと言ってくれるお客さまは多い」と話す。
自動運転時代を見据えたコンセプト
説明会では、自動車のシートに関する技術革新についても話があった。そのひとつが「シーティング・デモンストレーターSD15」と呼ばれるものだ。将来の自動運転化を見据えたコンセプトのシートで、4つのシートそれぞれが勝手にポジショニングしたり、リアシートを全部倒したり、フロントシートを全部前に出したり、対面にしたりなど、あらゆるシチュエーションへの対応を想定している。内田氏いわく「そうすると薄型にしたり軽くしないと動かなかったりするので、そこを技術革新で可能にしていきます」とのこと。さらに、表皮にレーザープリンターで影などを模様付けすることで、普通のシートにもかかわらずスポーツシートに見せるといったユニークなアイデアも採り入れられている。
もうひとつ、このSD15のポイントとして挙げられるのが安全だ。「事故が起きたときにどのポジションだと一番安全かということが重要。これからセンサーなど考えなければならないが、例えばシートバックが倒れていたり、いろいろな方向に向いていたりした時の安全性を確保するために、衝突時には一番安全な方向にシートが向くということを考えている」 そのほかにも、シートのさらなる軽量化技術や、新素材など、多くのコンセプトが語られた。
前述のとおり2016年秋に独立してアディエントになる同社。内田氏は「今後は自動車に限らず列車や飛行機なども含むシート事業を手がけていく」と語る。さらに今後の日本市場について、「(われわれの親会社は)アメリカの会社なので、日本のメーカーがいいクルマを作ってくれないとクルマが売れず、われわれの売り上げも落ちてしまう。そうすると、日本にオフィスがあっても仕方がないと手を引かれてしまう。絶対にそうならないよう、いいクルマを作ってほしい。そのためにわれわれはいい部品を供給していく」と述べたのが印象的だった。
(文と写真=内田俊一)

内田 俊一
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