スバルBRZ GT(FR/6MT)
「GT」の名が意味するところ 2016.11.28 試乗記 満を持して登場した「スバルBRZ」の最上級グレード「GT」。足まわりにおごられたSACHSダンパー、ブレンボブレーキは、走行性能にどのような影響を与えるのか。86/BRZ Raceで姉妹車「トヨタ86」を駆る筆者が、その走りをリポートする。高いスピードレンジで真価を発揮
2016年8月にビッグマイナーチェンジが行われたスバルBRZは、ボディー剛性から足まわり、さらにはエンジンからファイナルギアにまで手が入れられ、以前とは別物と思える仕上がりになった。スバルはイヤーモデルごとに車両を進化させ続け、常に最良のものを提供しようという姿勢を貫くメーカーのひとつ。これまでもBRZは、通称“A型”と呼ばれる初期型から“D型”まで地道に進化してきたが、今回の“E型”ではジャンプアップしたと言っていい。
ただし、これまで追求してきたものは、決して速さではない。はっきり言ってしまえば、初期型であっても新型であっても、サーキットのラップタイムはさほど変わらない。大切にしたのはリニアなハンドリングであったり、アクセルのツキであったりと、ドライバーとの対話にこだわってきたのだ。おかげでステアリングの微操舵域の反応はまさに狙い通り。スロットルだって右足に込めた思いを即座に反映してくれる。すべてにおいて応答遅れがなく、どんな道路であってもタイヤは路面を離さず、安心して走りを楽しめる環境を整えてくれている。
けれども、話はそれだけでは終わらなかった。GTなるグレードが2016年10月7日に発売されたのである。このGTは“E型”の「S」(これまでのトップグレード)をベースに、ブレンボ製のブレーキやZF製のSACHSダンパー、さらにはSよりも0.5J太い専用ホイール、リアスポイラー、アルカンターラを使ったシートを装備した、新たな最上級グレードだ。
以前、プロトタイプにサーキットで試乗したが、その時の印象はベースグレードの良さをさらに引き伸ばしたかに思える走りだった。ブレーキは制動力がやや向上した程度に感じるが、踏力(とうりょく)を抜く方向でのコントロール性が引き上げられ、車両の姿勢コントロールがしやすくなったことが好感触。フットワーク系はロールやピッチを減らしており、反応の良さを引き上げたにもかかわらず、安定性も損なっていないところが扱いやすかった。
今回はナンバーが付いた状態で一般道を走ってみる。走りだせばやはりブレンボのブレーキは扱いやすい。クルマを止める寸前の踏力コントロールがしやすく、無駄にピッチングさせずに済むのだ。これなら同乗者にも優しいかもしれない。ただ、足まわりは少しハードだ。50km/h以下で荒れた路面を走ると、やや突き上げが大きく、ベースモデルより引き締められたことが明らかに感じられた。応答性を求めて拡幅されたホイールに加えて、無駄な動きを規制しようとセットされたダンパーが組み合わされれば、それも当然かもしれない。だが、スピードレンジが高まると、それがかえってはまってくるから面白い。特に高速道路ではフラットな乗り味が高まってくるのだ。どこに合わせたかがはっきりと読み取れるそのセッティングはなかなか絶妙だ。だからこそ「GT」という名前を与えたのだろう。
こんな新たな世界が見えたのは、やはり長年の熟成があったからこそ。BRZ GTは単なるオプション装備てんこ盛りの、厚化粧なクルマではない。乗り手との対話をより深めようとしたグレードだということが、はっきりと感じられたのだ。
(文=橋本洋平/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
【スペック】
全長×全幅×全高=4240×1775×1320mm/ホイールベース=2570mm/車重=1250kg/駆動方式=FR/エンジン=2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ(207ps/7000rpm、21.6kgm/6400-6800rpm)/トランスミッション=6段MT/燃費=11.8km/リッター(JC08モード)/価格=331万5600円
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

橋本 洋平
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。




































