メルセデスAMG GLA45 4MATIC(4WD/7AT)
君子たやすく豹変す 2017.07.29 試乗記 メルセデスのコンパクトSUV「GLA」のマイナーチェンジに合わせて、ホットモデルの「AMG GLA45 4MATIC」も最新型へと進化。主な変更点である外装デザインの確認も早々に、リポーターは雨中のドライブに出発。その運動性能をつぶさにチェックした。AMGの割に控えめな外観
メルセデス・ベンツが展開するNGCC(ニュー・ジェネレーション・コンパクト・カーズ)も、全体としてモデルライフの後半を迎えた。次期型のおぼろげな姿や方向性が徐々に明らかになりつつあるが、値引きのことを考えると、消費者としては最もおいしいタイミングになってきたといえる。そんなタイミングでマイナーチェンジしたGLA。今回は一番高いGLAであり(「A45」「CLA45」とほぼ並んで)一番安いAMGであるメルセデスAMG GLA45 4MATICに試乗した。
GLA45について報告する前にGLA全体の印象を少し。車名からわかるようにメルセデスのSUVシリーズに属する。けれどもオーナーや興味をもっている人は、このクルマにSUVであることを期待しているわけではなく、SUV風のルックスをしたカッコいいハッチバックととらえているのではないか。前後フェンダーが黒い樹脂で縁取りされ、そのなかに径の大きなタイヤが収まっていて、踏ん張り感があって迫力がある。長さ、幅ともにコンパクトで、1500mmと日本の古い立体駐車場にも楽々入る低い全高でありながら、140mmのロードクリアランスが確保されているため、4WDシステム「4MATIC」のモデルならきっちり除雪されていない雪道など、ちょっとした悪路でも立ち往生することはない。絶妙に考えられたパッケージのクルマだ。売れているのもよくわかる。
さてGLA45とご対面。AMGというが、派手なエアロパーツが装着されることはなく控えめ。好感がもてる。細かく見れば、より多くの空気を取り入れるべくフロントマスク左右に大きなインテークが開けられ、グリルが他のAMGと共通するツインルーバー型のデザインとなったほか、フィン付きのリアディフューザーが加わるなど、結構変わった。リアコンビランプには「満天の星の輝きを想起させるクリスタルルックを採用した」そうだ。
土砂降りの雨のなかで試乗開始
インテリアは一転して派手。黒い内装のあちこちに赤いステッチが入り、すべてのエアコン吹き出し口が赤く縁取りされ、レザーシートにも赤いアクセントが入る。シートベルトも赤ければ、ステアリングホイールの一番上にある、センターをわかりやすくする印も赤い。シートは深いバケット形状で、全体に薄いのに剛性が高い「AMGパフォーマンスシート」が装着されていた。
このシートはセットオプションの「AMGアドバンストパッケージ」の一部。同パッケージには、「AMGパフォーマンスステアリング」「AMGエンブレム付きAMG Eセレクトレバー」といった内装を彩るものから、「AMGフロントリミテッドスリップデフ」「AMGパフォーマンスエグゾーストシステム」といった走りに影響を与えるものまで、いろいろ含まれている。速度リミッターが250km/hから270km/hに引き上げられる「AMGドライバーズパッケージ」も付く。実利はともかくネタにはなるだろう。パッケージの価格は90万円。車両本体価格は792万円だ。
取材日はところどころアスファルトに水が浮くほどの雨。まずは「AMGダイナミックセレクト」を「コンフォート」にして、ワイパーを最速にして慎重に走らせる。メルセデスはUIがどのモデルでもほとんど同じなので、久々に乗っても操作に戸惑うことがない。NGCCの先陣を切って登場した「Bクラス」や「Aクラス」は軒並み乗り心地が硬かったのを思い出すが、近頃はどれに乗ってもほどよくマイルドになった。
最高出力381ps/6000rpm、最大トルク475Nm/2250-5000rpmと、2リッター直4ターボエンジンを積む現行量産車のなかで最も額面上の数値が高いのがAMG45シリーズだ。しかしパワーは路面に伝わった分しか実際の速さにつながらないし、体感もできない。4WDだからこんな雨でも相当な蹴りだしとその後の伸びを体感できたものの、持てる力の3分の2も発揮できたかどうかといったところではないだろうか。
“凶暴”なレースモードを試す
GLA45に採用される4WDシステムは可変トルク配分型で、低負荷時は前輪で走行し、必要に応じて後輪にトルクが伝わるオンデマンド式。ただ“オンデマンド式=前輪がスリップしてから後輪にトルクを伝える仕組み”というのは昔の話で、近頃のオンデマンド式は前後左右の荷重のかかり具合をクルマがセンシングし、前輪がスリップしそうな段階であらかじめ後輪にトルクを伝える。多くのドライバーはきっと「やっぱり4WDは雨でも安定感が高いね」とざっくりした感想をもつだろうが、それは縁の下でトルク配分が連続的にめまぐるしく変化しているからだ。
雨が弱まった高速道路で慎重にパワーを確かめてみる。ダイナミックセレクトは「スポーツ」に。6速、7速で2000rpm未満で巡航している状態から少しだけ右足に力を込めると、ギアダウンせず回転がゆっくり上がるとともに、じわじわと、しかしよどむことなくしっかりと速度が上がっていく。最大トルク475Nmだからな。もう少し踏み込むと、7速なら6速、6速なら5速へとギアダウンし、背中がシートバックに押し付けられるほどのGを感じさせながら、結構な勢いで速度が増す。これ以上の加速力は実用上必要ない。
しかしそれでもまだアクセルペダルのストロークを半分くらいしか使っていない。せっかくなので新たに設定された「レース」モードに入れ、奥深くまでアクセルペダルを踏んでみた。7速から一気に4速までギアダウン、クォーンという排気音が高まると同時に、背中を蹴られたかのような加速が始まった。5速に上がったかと思うとあっという間に前が詰まってアクセルから足を離す。パン、パンと2度爆竹のような音がしたかと思うとガツンと衝撃を伴って4速に戻った。
各種ADASの充実も魅力
楽しいけれど、かなりの高回転を維持しようとするため、長い時間レースモードに入れておくのは精神的に疲れる(そもそもメーカーはサーキットでの使用を勧めている)。「スポーツ+」モードでもまだ高回転を保ち、スポーツモードよりも1段、コンフォートモードよりも2段低いギアを選びたがる。そこで項目別に好みのモードに設定できる「インディビジュアル」を選び、ドライブ(エンジン):スポーツ+、トランスミッション:オート、サスペンション:コンフォート、ESP:オンという、パワフルかつレスポンシブなエンジンの性格だけを際立たせ、変速や乗り心地は快適なモードを見いだす。というかたいていのクルマで結局こういう設定に落ち着く。
ハンドリングはいかにも4WDっぽい、安心感を覚える挙動に終始する。FRのようにこれ以上ペースを上げるとお尻がズリッといくんじゃないかという不安とは無縁で、ドライバーが思い描くオンザレールのいくぶん外側をトレースし続ける。安心感が高い。きっとドライ路面だともっとわずかなステアリング操作にも敏感に反応するのだろう。
電子制御によってドライブモードを選択できるようになり、クルマの特性が変化するようになって久しいが、GLA45のレースモードとコンフォートモードの差は豹変(ひょうへん)レベルだ。スイッチひとつで「ランエボ」の乗り心地が劇的に改善されるようなもの。山道をそれらしく走らせて汗をかいて帰りの高速道路は安楽にというのは、クルマのひとつの理想形にほかならない。加えて渋滞追従機能付きのディスタンスパイロットディストロニック(ACC)など、各種先進運転支援システム(ADAS)が充実している。安心感が高いことこそ一番のコンフォートモードといえるわけで、このクルマはハイテクによって豹変する君子といえる。いわばニュー・ジェネレーション君子。ただし900万円弱にめどが立つハイエンドなニュー・ジェネレーションズ向けといえよう。
(文=塩見 智/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデスAMG GLA45 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1805×1500mm
ホイールベース:2700mm
車重:1650kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:381ps(280kW)/6000rpm
最大トルク:475Nm(48.4kgm)/2250-5000rpm
タイヤ:(前)235/45ZR19 99Y XL/(後)235/45ZR19 99Y XL(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5P)
燃費:12.3km/リッター(JC08モード)
価格:792万円/テスト車=887万7240円
オプション装備:AMGアドバンストパッケージ<AMGドライバーズパッケージ+AMGパフォーマンスステアリング+AMGフロントリミテッドスリップデフ+AMGパフォーマンスシート+harman/kardonロジック7サラウンドサウンドシステム+AMGパフォーマンスエグゾーストシステム+AMGエンブレム付きAMG Eセレクトレバー+AMGエンブレム付きエレクトリックキー+チャイルドセーフティーシートセンサー>(90万円) ※以下、販売店オプション AMGフロアマットプレミアム(5万7240円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:3899km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:315.0km
使用燃料:40.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.8km/リッター(満タン法)/8.0km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。














































