日進月歩のテクノロジー
AI技術でカーライフはどう変わる?
2017.10.20
デイリーコラム
AIは使えるモノになる
自動車業界における昨今のトレンドのひとつに「自動運転技術」があることは今更いうまでもありませんが、それに関連したキーワードとしてよく取り上げられるのが「AI(人工知能)」です。
AIは「Artificial Intelligence」の略で、文字通り「人間が作った知能」のこと。語り始めるといくら文字数があっても足りないくらい、深く、複雑な領域です。そのAIは、これまで1950~1960年代の第1次、1980年代の第2次と、過去2度のブームを経て現在に至っているのですが、「ビッグデータの登場と活用」「ディープラーニング(より深いレベルで機械が学習できる手法)」「センサー類の高度な発達」などにより、その技術的レベルは急速に高まっています。いやらしい言い方ですが、「今度こそモノ(商売)になる!」と鼻息の荒い企業も多いのです。
それでは、昨今の「IoT(Internet of Things=あらゆるモノがインターネットと接続する)」時代、われわれの生活、中でも自動車の世界ではどのような変化が生じうるのでしょうか?
前述したように、AIはひとことでは語りきれない世界です。しかし実際の世の中ではあらゆるジャンルで「AI搭載」「AIによる〇〇技術」といった商品が乱立しています。それはまるで1980年代のパソコンブームに近いものがあります。当時も「パソコン1台あれば何でもできる」などとブームに乗りたがる傾向はあって、「魔法のパソコン、使えなければタダの箱」という言葉が私の周りで(皮肉も込めて)はやっていたくらいでした。
ただ現在のAIに関しては、技術レベルが大きく向上していることや、中長期的なビジョンがかなり確立されていることから、将来が期待できます。IoTに代表される「つながる」という考えをどこまで進化・協調させられるか。そこがポイントになるでしょう。
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弱ったヒトをクルマが助ける
自動運転技術はそもそも、それまであった「クルーズコントロール機能」にブレーキングやステアリング操作の技術を協調させることで進化してきたものです。
すでにスタートしている取り組みもありますが、渋滞やイベントの発生といった外部の環境変化をリンクさせることで、自動運転は一段と進化するはずです。さらにクルマと公共交通機関とのリンクを活用した「パーク&ライド」「カーシェアリング」なども大きな鍵になります。もちろんそのためには、クルマ単体の技術だけでなく、インフラ網の整備など行政にも期待する必要があるのですが。
逆にクルマ側に目を向けると、AI時代は、自動運転に関連した新しいアプローチが期待できます。そのひとつは「高齢化問題」。体力や運転技術の低下、運転中の体調変化といったフィジカルな問題をAIはどこまでサポートできるか。筆者はここが重要と考えます。「人の思考を読み取り、自ら判断する」というAIが得意とする能力を、クルマと人との良好な関係に役立ててくれることを期待したいのです。
ここ数年間、海外のIT系の展示イベントはもちろん、世界の主要なモーターショーでもAIを活用した提案は加速度的に増えてきています。今度の「東京モーターショー2017」でも、トヨタや三菱などがAIを活用したコンセプトモデルを展示することを明らかにしています。
むしろ問題になってくるのは、「何でもできる」というユーザー側の過度な期待と「とにかく急いでやろう」というメーカー側の論理です。何でも一番でなければならない、なんてことはありません。命を載せて走るクルマだからこそ、何重にもAI時代の安全について検証し、われわれの生活をより豊かにしてくれることを期待しています。
(文=高山正寛/写真=三菱自動車、トヨタ自動車/編集=関 顕也)
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高山 正寛
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