ジープ・コンパス リミテッド(4WD/9AT)
悩めるニューモデル 2018.02.08 試乗記 「レネゲード」とともにジープのエントリーレベルを担う都会派SUV「コンパス」が、2代目にフルモデルチェンジ。世界4大陸の工場で生産されるグローバルモデルの出来栄えを、車内の利便性や乗り心地、運転のしやすさなど、さまざまな視点から確かめた。アメリカ車の中で唯一気を吐く存在
トランプ大統領が何と言おうとも、「これでは日本で売れないのも仕方がないよね……」と、正直なところそう思えるモデルも少なくないのが、アメリカのブランド発のモデルたち。が、何事にも例外があるからこそ面白いというのも、また世の中の常。ここに紹介するのも、昨今とみに「鳴かず飛ばず」(!)という論評を免れない“アメ車”の中にあって、唯一気炎を吐き続けるブランドであるジープの最新作品だ。
そんな歴史あるブランドのエントリーモデルとして、初代コンパスが誕生したのは2006年のこと。以来、2016年に初のフルモデルチェンジを受けて再度ローンチされたのが、ここに採り上げる2代目モデルである。
4400×1810mmという全長×全幅サイズは、末っ子「レネゲード」と兄貴分「チェロキー」の間に位置するもの。“マルチエア”と呼ばれる2.4リッターの自然吸気4気筒エンジンを、4WD仕様では9段AT、FF仕様では6段ATと組み合わせて搭載するという構成から、ハードウエア上はレネゲードに近い存在であることが推測できる。
実際、そこに採用されたプラットフォームはFCAグループが「品質・信頼性を確保しながら開発期間の短縮を実現」と自画自賛する「スモールワイド4×4アーキテクチャー」。すなわちそれは、レネゲードで初採用されたものと同じとなるわけだ。
生産国はまさかのインド
欧州市場では“マルチジェット”という1.6リッターや2リッターのディーゼルエンジン搭載モデルも手に入る新型コンパスだが、日本で販売されるのは電子制御式の可変バルブリフト機構を備えた、2.4リッター自然吸気のガソリンエンジン搭載モデルのみ。
ちなみに、最高175psを発するその心臓が要求するのはレギュラーガソリン。欧州発のエンジンの場合、オクタン価設定の違いから現地でのレギュラー仕様は日本ではハイオク仕様とされてしまうのが通例。すなわち、ここは“アメ車”であるがゆえの、好ましいポイントというわけだ。
一方で、設計と開発はアメリカで行われるものの、世界100カ国以上で販売されるグローバルモデルとして企画され、生産も世界4大陸の工場で行われるこのモデルの場合、実は日本へとやって来るモデルの製造を担当しているのはインドの工場。えっ! インド製なの!? とあまりよからぬイメージで色めき立ってしまう人もいるやもしれないが、そこは心配ご無用。そうした情報を耳にしたゆえ、普段以上に“矯めつ眇(すが)めつ”と各部を眺めてはみたものの、生産国に起因すると判断できるような「気になるポイント」は皆無であったからだ。
そもそも、メルセデスだってBMWだって、一部の日本仕様車は南アフリカ工場製だったりする……というのは、すでに知る人ぞ知る情報。というわけで、グローバルでの人気者になればなるほどに、生産の拠点は多岐におよび、ブランド発祥の地とはまったくかけ離れた工場からクルマがやって来るというのは、今ではジープにも何の不思議もなく当てはまる事柄なのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
広さは文句ナシ、ただしシートは要改善
実はアメリカ産でも欧州産でもない、そんな最新ジープのチャームポイントは、まず「適度にジープの作品らしい」とでも言いたくなる、そのエクステリアデザインにありそうだ。
新型コンパスの場合、ジープ車最大の特徴的アイコンとも言えるフロントの“7スロット”は、実はエアインテークとしての機能は備えていないダミーデザイン。とはいえ、これがあるからこそジープ車らしい顔付きが演じられているのもまた事実。実際、「どこかで見たことがあるような」コンビネーションランプが与えられてしまったリアビューの方は、正直、自身の目にはちょっとばかり没個性的に映ることになった。
ボディーサイズについては、従来型比で全長が75mmの短縮と、文字通りの“ダウンサイジング”を実現させているものの、キャビン空間は大人4人にとって、それなりの長時間を過ごすにも不満のないもの。実際、今回は2時間余りを連続して後席上で過ごす機会もあったが、サイドシルやフロア位置がやや高めで乗降時の脚の運びに気を使う傾向はあったものの、比較的アップライトな姿勢で座ることもあり、レッグスペースには十分なゆとりを感じることができた。
むしろ、そんな長時間の移動で気になったのは、シートクッション部分の張りが妙に強く、面圧分布が今ひとつであるために疲労感がたまりやすかったこと。実はこれは、前席でも同様の傾向を感じることに。いずれにしても、この違和感を抱く着座時のフィーリングには、早急にリファインを施してほしいと思わずにはいられなかった。
後席使用時でも「日本で使うにあたっては、まずは不足というシチュエーションは考えにくいな」という程度のボリュームを備えるラゲッジスペースは、40:20:40の3分割可倒式シートバックをアレンジすると、フロア面がほぼツライチになるデザイン。テールゲートのパワー機構は、今回テストドライブを行った4WDグレードに限ってオプションで選択することが可能だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
強烈な個性を持つがゆえの悩み
スタートしてまず印象に残ったのは、「予想よりも静か」というポイントだった。そこには、失礼ながらそもそもジープ車にさほどの静かさを期待していなかったという“先入観”も影響していたかもしれない。ただし特筆事項として、今回のテスト車がスタッドレスタイヤを装着していた影響は少なからずありそうだ。
動力性能は、1.6tの重量に2.4リッター自然吸気エンジンの組み合わせという、そんなスペックから予想できたほぼその通りの実力という印象。飛び切り俊敏ではないが、だからといってイライラするほど鈍足という思いも一切抱かされることはなかった。
残念だったのはトランスミッションのフィーリングで、ダウンシフトをしてほしい場面で時にためらいを示し、わずかなアクセルの踏み込みに対してかい性なくキックダウンを行い、あまつさえCVTのごときラバーバンド感まで意識をさせられる……という仕上がりは、最後まで褒める気にはなれなかった。もちろんそれが、時にボードコンピューター上で15km/リッター超を軽々とマークした好燃費に貢献していたことなどは認めたい。が、前述のごとく“なかなか挙動が読めないAT”が上質な走りのテイストを幾ばくかでも妨げていたことは事実だ。
この点を除けば、それなりにしなやかでフラット感に富んだ走りのテイストはなかなかだったし、スタッドレスタイヤを装着しつつ、その不利を実感させないハンドリング感覚も評価に値するもの。とはいえ、レネゲードでは過剰とも思えるほどに“ジープ車らしさ”をアピールする遊び心を発散していながら、こちらでは意外なまでにビジネスライクなインテリアの雰囲気などに、「ちょっと期待外れ……」と思わせられたのも事実ではある。
そんなこんなで、率直なところ“400万円超”という価格を知ると、ちょっとビミョーとも思えた最新ジープ車がこのモデル。このブランド本来のヘビーデューティーぶりをアピールし過ぎれば自ら間口を狭めることになり、かといってカジュアルさを強調し過ぎれば、今度は「らしくない……」と言われてしまう。このブランドの作品ならではの難しさは、生産国うんぬんなどよりも、どうやらそうしたところにありそうだ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ジープ・コンパス リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4400×1810×1640mm
ホイールベース:2635mm
車重:1600kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 SOHC 16バルブ
トランスミッション:9段AT
最高出力:175ps(129kW)/6400rpm
最大トルク:229Nm(23.4kgm)/3900rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(ミシュランX-ICE3)
燃費:9.6km/リッター(JC08モード)
価格:419万円/テスト車=427万3160円
オプション装備:パールコート塗装(5万4000円)/フロアマットBLACK(2万9160円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:3448km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:507.0km
使用燃料:49.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.3km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。





















































