第481回:「粋」の表現がキーワードになる
アルバイサ専務が語る日産デザインの将来
2018.02.13
エディターから一言
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日産自動車が2018年1月の北米自動車ショー(デトロイトショー)で公開したコンセプトカー「Xmotion(クロスモーション)」。その見どころは、いかつい外観だけでなく、日本人の「粋」を表現したというインテリアにもある。同社のデザイン部門を率いるアルフォンソ・アルバイサ専務執行役員に日産デザインの将来について聞いた。
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次期「エクストレイル」を示唆している?
21世紀を挟んでの、ゴーン体制下なる日産のV字回復を支えてきたクルマたちを振り返るに、SUVの多さに気づかれる方もいらっしゃるのではないだろうか。
日本市場を支えた「エクストレイル」しかり、欧州市場での「キャシュカイ」(日本名:デュアリス)の大ヒットしかり、そして米国市場では日産ブランドの「ムラーノ」だけでなくインフィニティブランドの「FXシリーズ」が他社に先駆けてプレミアムスポーツ的なキャラクターを確立……と、この頃の日産は単なる収益源とするだけでなく、SUVカテゴリーの発展をけん引する側の立場にいた。そして商品を輝かせていた絶対的要素といえば、常に挑戦的なデザインといえるだろう。中には「ジューク」のように、小型SUVのイノベーターとして多くのフォロアーに影響を与えたモデルもある。
そんな日産の次世代のSUVデザインを示唆するコンセプトモデルとして、2018年1月の北米自動車ショーで発表されたのがクロスモーションだ。オケージョナルユースの3列目シートを配置する6シーターというその成り立ち、そして車格から推するにCセグメント級に見えなくもない。とあらば、次なる「ローグ」&エクストレイルあたりのデザインを示唆しているとも考えられる。
「粋」を大事にする日本人
どちらかといえばオーガニックな曲線的フォルムであるエクストレイルに対して、クロスモーションのスタイリングはキャラクターラインがバキバキに立っており、はっきりと印象を異にしている。2017年、同じく北米自動車ショーでお披露目されたセダンのコンセプトカー「Vモーション2.0」では同じく明快なキャラクターラインをもっていたが、クロスモーションは水平&垂直、そしてシンメトリック的なところが強く意識されていることが伝わるだろう。
おなじみ中村史郎氏の任期満了に伴い、2017年から日産のデザイン部門のトップに就任したアルフォンソ・アルバイサ専務執行役員は、クロスモーションのデザインは日本人の「粋」にまつわる精神性をイメージしたものだと語る。ちなみに氏は1988年の北米日産入社以来、30年にわたり日産およびインフィニティのデザインを手がけてきたいわゆるたたき上げ。メーカー間での移籍がよくあるカーデザイン部門にあって、むしろ珍しい経歴といえるかもしれない。
「私は日本人とともに長きにわたって仕事をしてきましたし、日本の文化に触れる機会も多々ありました。その中で常々感じていたことは、日本人は日々のつつましい生活の中にあっても、その中にささやかな粋を求め、粋心をとても大事にするということです。江戸時代の平民は一見質素な着物を着ているように見えても、その柄や裏地に華を加えてきたというのが江戸文化の特徴の一端です。その心はとても大切なものに見えます。私が日本人ではないことが、かえってそれをストレートかつポジティブに受け止める一因となっているのかもしれませんね」
今後、アルバイサ氏が指揮を執る日産のデザインにおいて「粋」は最も核心的なキーワードになるという。クロスモーションのエクステリアが見せる縦横のはっきりした造形は、日本建築が持つシンプリシティーに強く影響されているそうだ。
赤富士を思い起こさせるインテリア
というわけで、クロスモーションにおける粋がどこに隠されているかといえば、それは内装ということになるだろう。前後に貫く弓なりの形状が川に架かる橋を思わせるセンターコンソールは、実は組木の本杢(ほんもく)をスライスし、芯材に合わせることで気候変化や経年劣化を考慮したものだ。湾曲液晶を全面に敷いたダッシュボードを支える梁(はり)のような部材も同様に芯材を本杢でラッピングしている。
観音開きの扉を開けて一見するとその紅白のコントラストに目が奪われるが、そのドアトリムの形状を引き目線でみれば、富士の稜線(りょうせん)を思い浮かべる人もいるのではないだろうか。富嶽(ふがく)三十六景の赤富士を思い起こさせるあしらいは、本杢のセンターコンソールとのコントラストも相まって箱庭でも眺めているようだ。
「日本人は自らの文化を開けっ広げに自慢することを、よしとしないところがあります。それが美しさでもあるのですが、はた目にみてもったいないと思うことがあるのも確かです。日本らしい粋をいかに表現していくかは、日本のデザイナーと今後取り組むべき大きな課題になるでしょうね」
アルバイサ氏に言われるまでもなく、日本人は自らのセールスがかなり下手な人種だろうと僕も思う。それでも、以前ならちょっと赤面していたくらいに著しく日本を表現したクロスモーションの内装をみていると、このくらいならアリなんじゃないかと思えてくるのは、それこそ京都に殺到する外国人を目の当たりにした、日本人の遅ればせながらの気付きなのかもしれない。
(文=渡辺敏史/写真=日産自動車/編集=竹下元太郎)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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