ハーレーダビッドソン・ロードキングスペシャル(MR/6MT)
比類なき巨人 2018.02.17 試乗記 今日のハーレーを支える新世代エンジン「ミルウォーキーエイト」と、ラインナップ中随一の歴史を誇るツーリングファミリーのシャシーが織り成す走りとは? メッキを排したダークなカラーリングが特徴のカスタムモデル「ロードキングスペシャル」で試した。ビッグツインならではの鼓動感
「ハーレー良くなりましたよね。よく走るし鼓動感もあって楽しい」なんていう話を数名のバイク好きなカメラマンやジャーナリストから聞いた。彼らが言っているのは2016年に一新されたビッグツインエンジンを搭載したモデルのことだ。
ハーレーのエンジンにはいくつかのバリエーションがある。その中の主流がビッグツイン。OHV 1745ccの「ミルウォーキーエイト107」だ。クラシカルな外観のこのエンジンは、最新のテクノロジーによって高い環境性能と動力性能を両立するだけでなく、Vツインのフィーリングも考慮して設計されている。今回試乗したロードキングは、クラシカルなデザインの車体にこの最新Vツインエンジンを搭載したモデルである。
Vツインの不等間隔な爆発、長いストロークと重いクランクシャフトによって、アイドリングでは独特の車体をゆらすような鼓動感が生まれる。機械でありながら、鉄の“馬”を感じる時だ。スタートは回転を上げずにクラッチミートし、足りなくなったトルクをスロットルで補うようにする。低い回転のまま音圧があがって、低く腹に響くような排気音と鼓動感とともに車体が加速していく。こういう走り方が自然にできるようになったらハーレーを走らせるのががぜん楽しくなる。信号からのスタートのたびに幸せな気持ちになるだろう。
1745ccもあるから当然トルクはあるのだけれど、スロットルを開けた瞬間、柔らかく車体を押し出してくれるのもこのエンジンの特徴。そのままスロットルを開ければ、1回1回の爆発で路面を蹴っていくような素晴らしい加速をみせてくれる。驚いたのは高回転。こんなに排気量が大きなVツインでありながら、回転が上がると回り方がシャープになってレブリミッターが作動するまで一気に吹け上がっていく。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
予想外にスポーティーなハンドリング
もう一つ、ロードキングで予想外に素晴らしいのはハンドリングだ。重さがあるからどっしりとしている。バンクさせるとステアリングがワンテンポ遅れてからインに切れていってバランスし、旋回が始まる。この“タメ”があるから安定しているのだけれど、動き自体は軽快。恐る恐る乗っていないで決めたバンク角までスピーディーに傾ける。そして中途半端なスロットルワークはせずに向きが変わったらスロットルを大きく開けて車体を起こしながら加速していく。そんな走り方をしたら大きな車体を意のままに操ることができるようになる。
この安定した車体とエンジン特性なら、慣れてくるとそれが簡単にできるようになる。そして、ストリートを普通に走っているだけでも、大きな車体を操る楽しさを味わうことができるのもビッグツインの素晴らしいところ。公道ではその性能を到底使い切れないスポーツバイクに比べたら、ロードキングの方がよほどライディングを楽しめる。
気になったのはリアショック。普段は乗り心地も良いのだけれど、ストローク自体が少ないから、大きめのギャップがあるとちょっとお尻が突き上げられる。都内の幹線道路の段差でも「ウッ」と声が出てしまう時があるくらい。ハンドル幅が大きいためにフルロックさせようとすると手が届かなくなるのもちょっと考えもの。排気音や鼓動感は素晴らしいのだけれど80km/hを超えたあたりからライダーに排気音が聞こえなくなってしまうのはちょっと残念。最近のバイクは走行時の排気音も相当に研究されているのだけれど、ハーレーこそこういう官能性能的な部分に気を使ってほしいというのが正直なところ。
と、いくつか気になるところはあるものの、このマシンの走りと存在感は唯一無二。多少のことで色あせることはない。この美しいバイクにまたがってVツインエンジンの排気音を聞きながら走りだした瞬間、細かいことはどうでも良くなる。そんなところがロードキング最大の魅力なのである。
(文=後藤 武/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2420×--×--mm
ホイールベース:1625mm
シート高:695mm
重量:372kg
エンジン:1745cc 空冷4ストロークV型2気筒 OHV 4バルブ
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:150Nm(15.3kgm)/3250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:312万3000円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2026.2.23 「BYDシーライオン6」は満タン・満充電からの航続可能距離が1200kmにも達するというプラグインハイブリッド車だ。そして国内に導入されるBYD車の例に漏れず、装備が山盛りでありながら圧倒的な安さを誇る。300km余りのドライブで燃費性能等をチェックした。
-
アルファ・ロメオ・トナーレ ハイブリッド インテンサ(FF/7AT)【試乗記】 2026.2.22 2025年の大幅改良に、新バリエーション「インテンサ」の設定と、ここにきてさまざまな話題が飛び交っている「アルファ・ロメオ・トナーレ」。ブランドの中軸を担うコンパクトSUVの、今時点の実力とは? 定番の1.5リッターマイルドハイブリッド車で確かめた。
-
トライアンフ・トライデント800(6MT)【海外試乗記】 2026.2.20 英国の名門トライアンフから、800ccクラスの新型モーターサイクル「トライデント800」が登場。「走る・曲がる・止まる」のすべてでゆとりを感じさせる上級のロードスターは、オールラウンダーという言葉では足りない、懐の深いマシンに仕上がっていた。
-
マセラティMCプーラ チェロ(MR/8AT)【試乗記】 2026.2.18 かつて「マセラティの新時代の幕開け」として大々的にデビューした「MC20」がマイナーチェンジで「MCプーラ」へと生まれ変わった。名前まで変えてきたのは、また次の新時代を見据えてのことに違いない。オープントップの「MCプーラ チェロ」にサーキットで乗った。
-
アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ エストレマ(FR/8AT)【試乗記】 2026.2.17 「アルファ・ロメオ・ジュリア」に設定された台数46台の限定車「クアドリフォリオ エストレマ」に試乗。アクラポビッチ製エキゾーストシステムの採用により最高出力を520PSにアップした、イタリア語で「究極」の名を持つFRハイパフォーマンスモデルの走りを報告する。
-
NEW
右も左もスライドドアばかり ヒンジドアの軽自動車ならではのメリットはあるのか?
2026.2.25デイリーコラム軽自動車の売れ筋が「ホンダN-BOX」のようなスーパーハイトワゴンであるのはご承知のとおりだが、かつての主流だった「スズキ・ワゴンR」のような車型に復権の余地はないか。ヒンジドアのメリットなど、(やや強引ながら)優れている点を探ってみた。 -
NEW
第950回:小林彰太郎氏の霊言アゲイン あの世から業界を憂う
2026.2.25マッキナ あらモーダ!かつて『SUPER CG』の編集者だった大矢アキオが、『CAR GRAPHIC』初代編集長である小林彰太郎との交霊に挑戦! 日本の自動車ジャーナリズムの草分けでもある天国の上司に、昨今の日本の、世界の自動車業界事情を報告する。 -
NEW
ルノー・グランカングー クルール(FF/7AT)【試乗記】
2026.2.25試乗記「ルノー・グランカングー」がついに日本上陸。長さ5m近くに達するロングボディーには3列目シートが追加され、7人乗車が可能に。さらに2・3列目のシートは1脚ずつ取り外しができるなど、極めて使いでのあるMPVだ。ドライブとシートアレンジをじっくり楽しんでみた。 -
NEW
第862回:北極圏の氷上コースでマクラーレンの走りを堪能 「Pure McLaren Arctic Experience」に参加して
2026.2.25エディターから一言マクラーレンがフィンランド北部で「Pure McLaren Arctic Experience」を開催。ほかでは得られない、北極圏のドライビングエクスペリエンスならではの特別な体験とは? 氷上の広大な特設コースで、スーパースポーツ「アルトゥーラ」の秘めた実力に触れた。 -
ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2026.2.24試乗記ボルボの電気自動車「EX30クロスカントリー」に冬の新潟・妙高高原で試乗。アウトドアテイストが盛り込まれたエクステリアデザインとツインモーターからなる四輪駆動パワートレイン、そして引き上げられた車高が織りなす走りを報告する。 -
エンジニアが「車検・点検時に注意すべき」と思う点は?
2026.2.24あの多田哲哉のクルマQ&Aすっかりディーラー任せにしている車検・点検について、ユーザーが自ら意識し、注視しておくべきチェックポイントはあるだろうか? 長年トヨタで車両開発を取りまとめてきた多田哲哉さんに意見を聞いた。










