ルノーと日産がひとつの企業に!?
世界を揺るがす合併の可能性を考える
2018.04.09
デイリーコラム
目的はさらなる効率化の追求か
2018年3月末、通信社や新聞各紙が「ルノーと日産が合併交渉」と報じた。記事の内容はいずれも「関係者の話によれば」というもので、ルノーと日産自動車の両社から正式なコメントが発表されたわけではない。現時点ではまだ臆測の域を出ないが、なぜいま合併という話が出ているのか、一連の流れを少し整理してみたいと思う。
ふりかえればルノーと日産自動車の資本提携が始まったのは1999年のこと。当時、経営破綻の危機にひんしていた日産自動車に、同社への出資を決めたルノーから最高執行責任者(COO)としてカルロス・ゴーン氏が送り込まれた。即座に再建計画「日産リバイバルプラン」を発表、短期間で日産を立て直した経営手腕は世界中で高く評価された。
2016年には、日産自動車が三菱自動車の筆頭株主となり、「ルノー・日産自動車・三菱自動車」の3社によるアライアンス関係となった。そのかいあって、2017年のグローバルでの販売台数は、3社連合で約1060万台と、トヨタを抜いてフォルクスワーゲングループに次ぐ2位となった。
このタイミングで合併を狙う目的は、企業としての生き残りをかけ、単一企業として競合に匹敵するまでに事業規模を拡大すること。そして、電動化、自動運転といった喫緊の課題に対して両社のもつリソースを共有化し、またコスト削減を図ることにあるという。
現在のルノーと日産の商品ラインナップを見てみると、両社の個性を重んじた商品構成となっている。海外で販売される商用車など一部を除いて、バッジエンジニアリングのモデルもほとんどない。逆の見方をすれば非効率であるともとれる。年々、部品レベルでの共有化は増えているというが、もし合併すればコストのかかるパワートレインやプラットホームなどの面でも、より一層の効率化を図れるようになるだろう。
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合併はカンタンな話ではない
合併に際して問題となるのが、約20年間におよぶ資本提携が非常に複雑な構造になっていることだ。現状、ルノーは日産の株式の43%を、日産はルノーの株式の15%をそれぞれ保有している。さらに問題なのが、ルノーはかつて国営企業だったことから筆頭株主がいまもフランス政府であることだ。そして日産が保有するルノー株には議決権が与えられていない不均衡な状態にある。
両社の資本提携は投資家にとっても理解しづらく、またコーポレートガバナンス(企業統治)の観点からいえば非常に中途半端な構成といえる。経営サイドや大株主から「統合したほうがいい」という意見があったとしても不思議ではないだろう。
ちなみに、合併後の株式に関して新聞各紙によると「基本的にルノーの株主が新会社の株式を受け取り、日産自動車の株主も持ち株と新会社の株を交換する合併案が検討されている」とある。これも現時点では株主にどのようなメリットがあるのかはわからない。株式交換比率次第で、誰が得をし、誰が損をするのかまったくわからない。
またM&A(合併と買収)をするためにクリアしなければならない関連諸法規、商慣習や販売チャネルの問題は、グローバルに、多岐にわたるはずだ。そして日産への影響力を高めたいとされるフランス政府や、逆にそれを避けたい日産自動車や日本政府など、それぞれの思惑が交錯する。もちろんルノーや日産で働く人々の気持ちも何より重要だ。
ひとくちにM&Aと言っても、その中身は千差万別だ。近年の自動車業界では、インドのタタグループ傘下となったジャガー・ランドローバーや、中国のジーリーホールディングス傘下となったボルボの例もあるが、これらはフォード傘下からの買収であり、今回のものとはまったくケースが異なる。
従来では考えられなかったM&Aとしては、財閥の枠組みを超え住友系の住友銀行と三井系のさくら銀行が合併して発足した三井住友銀行の例が挙げられる。しかし、これとて政府主導のもと、国内企業の救済を目的として実現したものだ。
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ゴーン氏 最後の大仕事
では、仏政府を筆頭株主にもつ、いわゆる半官半民企業のルノーと、鮎川財閥をルーツにもつ日産自動車が国籍を超えてマリアージュ(フランス語で結婚)することができるのか。今回の件に関していえば、報道で使われている“合併”よりは“経営統合”という表現のほうがふさわしいのではないかと感じる。いずれにせよそのためには想像を絶する時間と手間と、タフな交渉が必要になることは間違いない。
昨年末、今年6月の株主総会をもってカルロス・ゴーン氏がルノーの会長兼CEOを退任するという報道が出た。しかし、実際は再任が決定。株主総会後も、ゴーン氏はルノーのCEOをはじめ、日産自動車の会長、三菱自動車の会長、「ルノー・日産アライアンス」の社長兼CEOを兼務する見込みだ。
ここでまた1つの臆測が頭をよぎる。誰かが「このタフな合併プロジェクトを遂行できるのはゴーンさんしかいない」と白羽の矢を立てた。そして「最後の大仕事としていっちょやってみますか」とゴーン氏が再び腰を上げた、というものだ。
もちろんまったくもって勝手な想像だし、この経営統合がいいのか悪いのかは、私にはわからない。ただ、トヨタ自動車の豊田章男社長いわく、自動車業界にとって“100年に1度の大変革”というこのタイミングにおいて、「より良い会社にするために権限と責任の所在を明確化する」という志はあってしかるべきだろう。今後の自動車業界にとって大きな影響力をもつ歴史的な出来事であることは間違いない。じっくりとその行く末を見届けたい。
(文=藤野太一/編集=堀田剛資)
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藤野 太一
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