ホンダ・クロスカブ110(MR/4MT)
安くてうまいオートバイ 2018.04.21 試乗記 ビジネス用途の「スーパーカブ」をベースに開発された、ホンダの小型バイク「クロスカブ」。その最新型は、「単なるバリエーションモデル」と割り切れない、独自の魅力を持っていた。見ると乗るでは大違い
最初に個人的なことを書かせていただくが、実は「ハンターカブ」が大好きである。今回紹介するクロスカブのルーツとなった、80年代のホンダのバイクのことだ。40代、50代のライダーには、ハンターカブのファンが少なくない。実際、友人たちの中にもハンターカブが欲しいと言っているのが何人かいるくらいだ。
そんなハンターカブ好きからすると、2017年の東京モーターショーで発表された最新のクロスカブは“微妙なバイク”だった。「新型クロスカブは、よりハンターカブに近くなりました」なんて言っているけれど「マフラーだってダウンタイプのままプロテクター付けただけだし、デザインもオモチャっぽいし、全然ハンターカブじゃねーぞ」と思っていた。
真剣にオフロードで使うことを考えて作られたハンターカブに比べて、ずいぶんお手軽にイメージだけ変えたような印象だった。だから編集部から「試乗しますか?」と言われて「そんなもん、乗らなくてもわかる」なんて軽口をたたいていた。ところが乗ってみて驚いた。大間違いだったのである。
またがった瞬間、ポジションがスーパーカブよりも、ずいぶんゆったりとしていることに気がついた。以前のリポートでも書いたけれど、スーパーカブは昔の小柄な日本人体形で考えられているからか、シートとハンドルの距離が短い。そのため大柄なライダーが乗るとちょっと窮屈な感じがする。しかもハンドルは完全に固定されてしまって調整や変更ができない。
ところがクロスカブはわずかだが車体がスーパーカブよりも大きい。全長やホイールベースがスーパーカブより数cmだけ伸びている。一つひとつの数値をみれば違いははわずかだけれど、車体寸法すべてが大きくなっているから総合的にはとても大きな差になる。さらにハンドルが一般的なオートバイのようにアップタイプのパイプハンドルをクランプで固定しているからアップライトなポジションになるしハンドルを前後に動かして調整することもできる。いざとなったら交換してしまうということだって可能なわけだ。
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排気量以上の走り
走りで驚いたのがハンドリング。ベースとなった「スーパーカブ110」もハンドリングの素晴らしさには定評があったのだけれど、クロスカブは素直で軽快なだけではなく、ビッグバイク的なしっとりとした安定感が生まれていた。
オフロードでの走りや安定性を考えてタイヤサイズを変えたり、ホイールベースを伸ばしたりしているからだろうが、このフィーリングがコーナリングをさらに楽しくしている。エンジンはスーパーカブ110そのままだけれど、相変わらず低中速から力強く、雑味のない気持ちの良い回り方をするし、動力性能にはなんの不満もない。
維持費が猛烈に安い原付二種でこれだけの走りができるのだから、相当に魅力的だ。スタイルは相変わらず(若干)気に入らないけれど、昔のハンターカブ風にすればいいわけで、そんなカスタマイジングも工夫しながらやったら、プラモデル的でかなり楽しそうな感じがする。
最初は否定的だったのに、そんなことを考えていたら、「これだったら買ってもいいかなぁ」と思ってしまったのだった。
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オフロードファンこそ乗ってほしい
クロスカブは、バリバリのオフロードライダーはターゲットにしていない。ただ、僕はそういうライダーにこそ、クロスカブに乗ってほしいと思う。
日本では、オフロードモデルが走ることのできる場所が年々少なくなっている。ライダーは高性能なオフロードマシンを走らせる場所を年中探しているような状態。一部の心無いライダーたちは、入ってはいけない場所に立ち入り、ブロックタイヤで土を削って白い目で見られたりしている。
その点、クロスカブのように走破性がそこそこのマシンであれば、今までなんでもなかったルートが難所になったりする。田舎のあぜ道を走るくらいでも楽しめるだろうし、スタイルも走りも過激でないから、山の中でほかの人たちに出会っても威圧感を与えるようなこともない。
アウトドアブームで、さらにエコが叫ばれている昨今、日本という狭い土地でオフロードを楽しむのであれば、クロスカブのようなバイクがメインストリームにならなければいけないのではないかと思うのである。
(文=後藤 武/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=1935×795×1090mm
ホイールベース:1230mm
シート高:784mm
重量:106kg
エンジン:109cc空冷4ストローク単気筒 OHC 2バルブ
最高出力:8.0ps(5.9kW)/7500rpm
最大トルク:8.5Nm(0.87kgm)/5500rpm
トランスミッション:常時噛合式4段リターン
燃費:61.0km/リッター(国土交通省届出値 定地燃費値)/66.7km/リッター(WMTCモード)
価格:33万4800円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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