第2回:“激しくない”イタリアンバイクといま注目のスクーターに乗る
2018.04.28 JAIA輸入二輪車試乗会2018今回は、ドゥカティのネイキッドモデル「モンスター797+」のほか、べスパやキムコの最新スクーターをピックアップ。オートバイの初心者にも薦められそうなこの3台、どんな走りをみせるのか?
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上質な入門イタリアン
ドゥカティ・モンスター797+……116万9000円
ドゥカティの「モンスター」は、アップハンドルのため、ドゥカティの入門用マシンのように思われていることがある。確かに前傾姿勢がきつくないと乗りやすいところもあるのだけれど、パワーのあるバイクでパイプハンドルにしてしまうと、フロント荷重が減って、スポーツライディングの時に本来の性能を発揮させることができなくなってしまう。
そこでモンスターの“激しいモデル”では、ライダーの座る位置を前にして、さらにハンドルを上から押さえつけるようなポジションになっている。これがくせ者で、実は乗りこなそうとすると意外に苦労したりする。
ところが「797+」は違う。ポジションも至って普通だし、ハンドリングも癖がなくて誰にでも乗りやすく、さらに攻めれば相当なレベルで走ることができる。
エンジンのフィーリングもおだやかで、Lツインの過激さはない。排気音はLツイン特有の歯切れのいいもので、ビートの効いた鼓動感とともに加速する。気持ちよく吹け上がっていくし、パフォーマンスも悪くない。けれど荒々しさはない。言ってみれば、多くの人たちがアップハンのモンスターにイメージしていた、ビギナーでも乗りやすい入門用モデルである。
この乗りやすさは、日本車と比べてもひけをとらない。ドゥカティが本来持っているスパルタンさはあまり感じられないが、モンスター797+はそういうマシンだから問題なし。イタリアンバイクに乗ってみたいけれど、乗りにくいのは勘弁してほしい。というのであれば間違いなくこれだ。そして激しいマシン、スパルタンなマシンに乗りたくなったら、その時はモンスターのほかのモデルに乗り換えればいい。
老舗ならではの気持ちよさ
ベスパ・セイ ジョルニ……79万8000円
スクーター一筋でやってきたベスパが50年代、スクーターをチューニングして数々のレースに参戦。オートバイとわたりあって数々の栄冠を手にした。このことを記念して発売された限定モデルが初代「セイ ジョルニ」。
伝統の名前を受け継いだ現在のセイ ジョルニは、イタリアンらしく上品で気品があるモデルだった。いろいろな部分にレーシーなエッセンスが加えられて、スクーターでありながら乗り物好きにはかなり“刺さる”デザインになっている。
名前に恥じず、走りも楽しめるのがこのマシンの魅力。ゼロからの飛び出し加速こそソコソコだが、走行状態からスロットルを開けたときの加速は素晴らしい。 エンジンのフィーリングもスムーズ。滑らかで雑味がない気持ちのいい回り方をする。
エンジンは278ccだから車検が必要になってしまうのだけれど、それも、理想のパワーやエンジンフィーリングを求めてたどり着いたのがこの排気量だったということ。一度乗ってみたら、その素晴らしさに納得してしまうはずだ。
スクーターはタイヤが小さいため、クイックには動くけれどバイクに比べると安定感に欠けるのが普通だ。しかし、このマシンは違う。ホイルベースが特に長いとか、ホイール径が大きいというわけではないのに、とてもシットリと落ち着いたハンドリングになっている。車体剛性と足まわりの出来がいいからこそ生み出されるガッシリとしたフィーリングだ。さすがにオートバイのように一気にフルバンクさせて……なんていう走りはちゅうちょしてしまうが、交差点を軽快に駆け抜けていくようなレベルであれば、とても気持ちよく走ることができる。
日本のメーカーがミドルクラススクーターの生産を終了していく中、趣味性の高いモデルを投入してきたベスパの姿勢は対照的。といってもこれは「生き残りをかけて」なんていうことではない。いつの時代も魅力的なスクーターを作り続けるというのは、ベスパが創業以来やり続けていることなのである。
コスパが光るスクーター
キムコ・レーシングS150……33万4800円
最近、スクーターの世界では150ccエンジンを搭載したモデルが大はやり。国産メーカーも250を引っ込めて150に移行している。125ccの車体でエンジンだけを150cc化したモデルも多い。
キムコの「レーシングS150」はまさしくそんなモデル。ベースになった「S125」がもともと、原付スクーターよりちょっと大きいだけというコンパクトな車格に125ccエンジンを搭載したモデル。それがこいつでは150ccにスケールアップされているのだから、元気でないわけがない。パッと見た目、原付スクーターのつもりでナメて走りだすとその動力性能に驚かされることになる。
スクーターは、そのデザインゆえステップ部分、つまり車体のド真ん中の剛性を高くすることが難しい。走りを追求するとこのあたりがネックになるのだけれど、このマシンではかなりの剛性を確保している。ハンドリングはボディーサイズが小さいこともあって、スクーターらしいクイックさ。慣れている人でないとちょっと過敏な感じがしてしまうくらい。
全体的に出来は悪くないけれど、何かが飛び抜けて秀でているというわけではない。ただ日常の利便性を一番に考えるスクーターであれば、このくらいがちょうどいいように思う。
重量税ゼロ、軽自動車税2400円、保険はファミリーバイク特約という125に比べると150ccは重量税4900円、軽自動車税3600円。結局、それくらいの価格差はあっても楽しく走ることができて、いざとなったら高速道路も使うことができる点が評価され、今、150ccのスクーターはとても人気になっている。レーシング150は、そんな中でも価格と性能が、とてもよくバランスしたマシンである。
(文=後藤 武/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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