ランドローバー・レンジローバー イヴォークHSEダイナミック(4WD/9AT)
待てば海路の日和アリ!? 2018.05.02 試乗記 ランドローバーのスタイリッシュなSUV「レンジローバー イヴォーク」の2018年モデルに試乗。細部のブラッシュアップもさることながら、最新型のハイライトは、なんといってもパワーユニットが刷新されたこと。大きな期待を胸に乗り込んでみると……絶対的なデザインを持っている!
ランドローバー・レンジローバー イヴォークは、地球に落ちてきた隕石(いんせき)のようなクルマです。いや、『2001年宇宙の旅』のモノリスか? イヴォークのデザインは、かつて人類が見たことないような、完璧に近い完成度を持っているような気がします。
元日産チーフデザイナーの故・前澤義雄氏は、イヴォークのデザインについて、こんな風に語っていました。
「並のデザインではない。すべての部分の質が高い。これを作った人は、SUVだとかクルマだとか、そういう常識を念頭におかずに、マーケティングも一切考えず、自分たちの作りたいものを作ったんだろう」
「大胆だが、しかし緻密でもある。ただ、一般的に褒めるべきデザインとはちょっと違う。イヴォークは、他のデザインの参考にはならない。鑑(かがみ)にすることはできない、絶対的なデザインだからだ」
さまざまな自動車デザインをメッタ斬りしてきた前澤氏がここまで褒めたクルマは、私の知る限り、「シトロエンC6」と「ジャガーXJ」(現行型)くらいのものです。
そんなイヴォークも、コンセプトカーのお披露目から数えるともう10年。日本に正式に導入されてから6年たちます。間もなくフルモデルチェンジともうわさされているので、今回試乗した2018年モデルが、熟成されまくった最終モデルになるのかもしれません。
エンジンの刷新が最大のポイント
で、その2018年モデル、何が変わったかというと、エンジンのラインナップが一新されたのが最大のポイントです。かつてのフォードエンジンベースに代わって、ジャガー・ランドローバーが設計から開発まですべてを手がけた新世代ユニット「インジニウム」の2リッター直4ガソリンターボエンジン(最高出力240ps/最大トルク340Nm)と、2リッター直4ディーゼルターボエンジン(同180ps/同430Nm)が新たに採用されているのです。
今回乗ったのはガソリンモデルの方。実はこのエンジン、以前のエンジンと比べてみても、最高出力や最大トルクなどのスペックには変更がありません。「すべてが一新されたエンジン」で、パワー/トルクの変更がないというのは逆にビックリですが、細かく見れば、これまでのエンジンから15%の燃費向上を実現したほか、1250rpmという回転域で最大トルクを発生する特性を持っています。ちなみに以前のエンジンは1750rpmからでした。
装備も充実し、スマートフォンを利用して離れた場所からドアを施錠・解錠したり、エアコンを操作したりできるコネクティビティー機能がオプション設定されています。正直私はアナログ人間でして、そこまでまったく求めないのでどうでもいいのですが、ITに強い人ならスマホでいろいろできますよ、ということですね。
さて、アナログ人間として気になるのは、インジニウムエンジンがどうなのか、ということです。
実を言うと、現時点でははっきりしたことが言えません! 私が試乗したのは、「HSEダイナミック」の1台きり。取りあえずその1台きりの印象を申し上げますと、不思議なほど低速トルクがありませんでした。
「えっ? 以前と比べるとより低速トルクが増したはずじゃ」。そう思われることでしょう。しかし私が乗った個体は、逆に以前より低速トルクが痩せていたのです! なんでなんで?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
自然と下品な走りになってしまう
乗ってみての率直な印象は、「タービンのレスポンスがやや遅い」というもの。ターボによる過給がモタつくので、すでに最大トルクを発生しているはずの1250rpmでは、ほとんど加速してくれなかったのです!
これは、ギアをマニュアルモードに固定してテストした結果です。カメのような加速しかしませんでした。これがDモードだと、低い回転でアクセルを踏み込むとまずシフトダウンし、そこから一拍遅れてターボが効く、という手順を踏みます。昔懐かしいターボラグというヤツが実感できてしまうわけですが、最近のレスポンス抜群のターボエンジンに慣れた身としては、低速域からアクセルを踏み込む→加速が物足りないからもうちょい踏み込む→その間にシフトダウン→やおら2000rpm以上でガバッとターボが効いて加速しすぎ→慌ててアクセルを戻す、という感じになってしまいます。
最大トルクを発生しているはずの1250rpmでは加速しないことは、優秀なる9段ATがよーく知っておりまして、Dレンジでアクセルを踏むと、とにかくシフトダウン→微妙なターボラグで一拍遅れてドーン、となる。つまり、これほど上品なルックスなのに、なんだか下品な走りになっちゃうわけです。
「HSEダイナミック」のタイヤサイズは20インチ。もともとサスペンションがスポーティーに締め上げられているので、乗り味はひたすらダイレクトです。これが例えば「SEプラス」なら18インチだし、「SE」なら17インチなので、印象がかなり激変するのだろうと想像しますが、このターボラグとガチガチな足まわりの組み合わせは、正直ツライ。見た目は完璧だけど走りが荒々しすぎるのではないか……。
実はインジニウムエンジンに関しては、ディーゼルの方にも同じ傾向を感じておりました。インジニウムディーゼルエンジンが最初に搭載されたのはジャガーの「XE」と「XF」ですが、その最初の試乗会で、「ディーゼルにしては低速トルクがないし、若干ターボラグもあるなぁ」と感じたのです。さすがにディーゼルだけに実用上問題のないレベルでしたが。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
個体差なのかもしれないが……
これがインジニウムエンジンの特徴なのか!? と思いきや、実は、そうでもないのです。まず、インジニウムディーゼルについては、最近のモデルではこの症状がかなり解消されていました。イヴォークのディーゼルモデルでそれを確認いたしました。
そしてそして、インジニウムガソリンエンジンの方も、先日導入された「ジャガーEペース」に搭載された個体では、イヴォークで感じたようなマイナス要素がほぼなかった! 1250rpm付近(Eペースの249ps仕様は最大トルク365Nmを1300-4500rpmで発生)からちゃんと加速してくれた! この差はつまり、初期ロットにありがちな個体のバラツキというヤツでしょうか?
こういう例は意外と多いです。最初に用意される媒体向け広報車両は超初期ロットなので、本来の性能が出てなかった、あるいはバラツキがあったという例を、過去何度も経験しております。昔の話ではなくここ数年で。正直な話、同じエンジンでこうも印象が違うと、評価する意味がないということになってしまいます。
ただですね、ジャガーEペースのインジニウムガソリンエンジンが本来の姿だったとしても、以前のエンジンに比べ、フィーリング的に良くなった部分は特になかったです。前から低速トルクはあったし、不満はまったくなかったので。
あえて言えば高回転域でのスムーズさは増したかな? でもそこまで回すことってめったにないので、やっぱりこういうSUVにとって重要なのは低速トルク。
そこに関して万全を期すならば、「買うのはもうちょっと待った方がいいかもしれない」とは申し上げておきましょう。1年くらいとか。こういうクルマはやっぱりエレガントにスムーズに走ってもらいたいですから。あ、1年たったらフルモデルチェンジしてるのかな?
(文=清水草一/写真=峰 昌弘/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー イヴォークHSEダイナミック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4355×1900×1660mm
ホイールベース:2660mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
最高出力:240ps(177kW)/5500rpm
最大トルク:340Nm(34.7kgm)/1250rpm
タイヤ:(前)245/45R20 91S XL/(後)245/45R20 91S XL(ミシュラン・ラティチュード ツアーHP)
燃費:13.4km/リッター(JC08モード)
価格:709万円/テスト車=966万4000円
オプション装備:セキュアトラッカー(9万7000円)/プロテクト(3万7000円)/コネクトプロ(5万7000円)/アダプティブダイナミクス(17万6000円)/ウインザーレザーインテリア<オックスフォード>(23万2000円)/グラファイトデザインパック(47万2000円)/アダプティブLEDオートマチックヘッドランプ(31万1000円)/ACC(12万6000円)/コールドクライメイトコンビニエンスパック(8万1000円)/ラグジュアリーパック(84万7000円)/ブラックコントラストルーフ(8万2000円)/ウェイドセンシング(5万6000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2517km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:270.4km
使用燃料:27.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:9.7km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
NEW
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。












































