ホンダ・フィットシャトル15X(FF/CVT)【ブリーフテスト】
ホンダ・フィットシャトル15X(FF/CVT) 2011.07.26 試乗記 ……207万7350円総合評価……★★★★★
売れっ子「フィット」をベースに、さらに広く、使い勝手をよくしたという「フィットシャトル」。ガソリンモデルで、その実力を試してみた。
ホンダらしい工夫、らしくない姿
標準型の「ホンダ・フィット」自体、よくできたクルマで、5ドアハッチバックのユーティリティは、小型の多用途車として最上位にランクされる。一見商用車風のスタイリングを採るものの、「フィットシャトル」はより広い荷室とハイルーフが追加された形で、さらに実用性がアップした。なかでも奥行き1.8mを超える長くフラットなフロアの確保や、自転車まで積めるといったアイデアの数々は、ホンダらしい個性として称賛できる。
若者向けのフィットに対し、これならシニア世代のユーザーをも取り込めそうである。が、スタイリングにはさらなる配慮が欲しいところだ。三角に切りっぱなしたCピラーはいかにも安手。オリジナルのハッチバックスタイルをもっと膨らませるとか、より乗用車的なホンダらしいデザインが望ましい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「フィットシャトル」は、コンパクトなハッチバック車「フィット」をベースとする、新しいホンダのワゴン。かつてのコンパクトワゴン「エアウェイブ」の後継ともいえるクルマである。
燃費をはじめとするスモールカーならではの経済性はもちろん、フィットよりも大幅に拡大されたラゲッジスペースとその使い勝手のよさ、車内の静粛性、走りの安定性などがセリングポイント。「エアウェイブ」で初めてホンダが採用した特大のガラスサンルーフ「スカイルーフ」もオプションで用意される。
(グレード概要)
ラインナップは大きく分けて、1.5リッターのガソリンモデルと、1.3リッターのガソリンエンジンにモーターを組み合わせるハイブリッドモデルの2種類。いずれのパワーユニットも「フィット」ゆずりのものであるが、フィットでは中心的な位置付けとなる1.3リッターガソリンモデルは用意されない。
それぞれ、装備別にエントリーグレードと上級グレードがある。今回のテスト車「15X」は、前者1.5リッターガソリンモデルの上級グレードにあたる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
傾斜した大きなフロントウィンドウの下にある空間を持て余すことなく利用して、室内を広々と見せている。凹凸の付けられた立体的な造形は、低価格なクルマとは思えないほど豊かなもの。温度や風量の設定ボタン、吹き出し口など空調関連部分をうまいこと隅に追いやっているが、操作に問題は無し。カーナビの画面は中央の“特等席”にあり、見やすく、操作もしやすい。ただ、ステアリングホイール内の操作スイッチやセンターパッド付近の造形はやや煩雑でやりすぎな印象。
(前席)……★★★★
シートの両サイドに用いられる新素材「グランスムース」は、本革風の肌触りで見た目も好印象。ファブリックとの組み合わせで高級感を演出している。クッションの厚みに頼ることなく適度なストロークが確保されており、座り心地も良好だ。横方向のサポートも良い。傾斜したウィンドウにより、前方視界はダッシュボードの見切りこそ高くなりがちだが、ボンネットそのものは低く、視界は悪くない。三角窓やドアミラー周辺の処理も上々だ。
(後席)……★★★★★
ガソリンタンクを車体中央下部に置く「センタータンクレイアウト」を生かしたフロアはつま先方向に向かって高くなっており、これがフットレストとしても働く。フロア後部は低くなり、座面からの距離を稼げるため、膝を浮かすことなく座れる。また、チップアップも可能な座面の下にも空間があるため、かかとのほうまで余裕がある。分割可倒式シートの折り畳み機構も簡単かつ便利なもので、作り出されるスペースは広い。頭上の空間は高いまま後部のラゲッジスペースにまで達する。スモールカーの後席としては、居住空間は最大ではなかろうか。シートのクッションは薄めだが、ストロークがあるので、乗り心地はあまり気にならない。
(荷室)……★★★★★
リアシートを折り畳めば自転車まで運べるという工夫は驚き。フロアボードは目的により表裏(カーペット地または樹脂パネル)で使い分けられたり、ついたて式の仕切りとすればさまざまな大きさの荷物に対応できるなど、いろいろ便利な仕組みが考えられている。ベースとなるフィット自体、いろいろ使える積載能力の高いクルマだが、“シャトル”にした意味がはっきり伝わってくるのは、このトランク部分のアイデアと空間の広さだ。もはや、ミニバンの領域にまで達している。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
4気筒横置きエンジンとしては、アイドル振動の封じ込めは完璧。ほぼ無振動を実現している。高速域に至るまでエンジン・駆動系の音や振動は低く、より上級なクルマのレベルにある。パワー感もある。CVTによる高効率とあいまって、その走りは滑らかにして快速だ。スロットルを踏み込んだ瞬間のレスポンスはGとして感じにくいが、それだけ加速はスムーズに進行する。
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(乗り心地+ハンドリング)……★★★
市街地やその他一般道など、低速域での乗り心地は快適。しかし高速道路では、路面によってはブルブルとバネ下が暴れて不快である。操縦安定性も、横Gの低い領域では問題ないが、少し入力が大きくなると、ロールセンターが低かった昔のホンダ車にありがちだった“つま先立った”挙動が出る。横風に対しても同じ影響がみられる。ルーフ部分が大きくなったための重心高アップは否めない。トレッドももう少し拡大したいところだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2011年7月14日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2011年型
テスト車の走行距離:1844km
タイヤ:(前)185/60R15(後)同じ(いずれも、ダンロップSP SPORT 2030)
オプション装備:車体色[ホライゾンターコイズ・パール](3万1500円)/Honda HDDインターナビシステム+リンクアップフリー+ETC(27万9300円)/Sパッケージ(8万5050円)/コンフォートビューパッケージ(3万1500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:368.9km
使用燃料:27.6リッター
参考燃費:13.3km/リッター

笹目 二朗
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