デュアルクラッチはもうイヤだ!
編集部員のマイカー探しに見る“いいクルマ”の普遍の条件
2019.04.22
デイリーコラム
webCGを襲ったクルマ購入熱
クルマの購入というのは、なんだかんだ言って人生の一大イベントだと思う。
まず単純に費用が高い。新車なら3ケタ万円が当たり前のお買い物だ。駐車場の確保に保険の契約、楽しい楽しい納税地獄と、購入後についてまわる面倒も相当なもので、買い物というよりむしろ、新しい家族を迎え入れる行為にも思えてくる。
ただ、そう大仰に考えているのは記者だけのようで、webCGかいわいではここ1、2年、クルマの購入熱が猛威をふるっていた。マーケティングの大和女史が「MTの練習がしたい!」と言って「アバルト500C」を買ったかと思えば、企画の折戸青年がセカンドカーに「ルノー・トゥインゴ」を購入。編集長のこんどーも、街乗りの足にと「スズキ・バンバン」を手に入れた。極めつけが社用車で、長年お世話になってきた「フィアット・パンダ4×4」から「BMW M140i」にバトンタッチ。そんでパンダは、ワタナベ女史の人生初マイカーに収まる次第だ。
いやはや。記者のようなのんびりカーライフイストからしたら、「みんな、ちょっと落ち着こうぜ」と言いたくなるような猛ラッシュである。
さすがに最近は沈静化したと思われていたのだが、過日、折戸青年が再びマイカーを購入した。お相手は2014年12月登録の「ボルボV70 T5 SE」。先代「V60」からの乗り換えである。動機は“前マイカーの故障を機に”というお約束のパターンだったが、「後期型のT5 SEを自分で探したんっすよ~」という話が、元中古車雑誌編集者(=記者)の心をツツいた。
というのも、高年式のV70で多数派なのは、エントリーモデルの「T4」系だからだ。大手の中古車物件サイトを何件かさらったところ、後期型のT5 SEなんて、片手で数えられる程度しかタマが出てこなかった。
パワー信者、排気量信者でもない折戸青年が、なぜわざわざそんな希少物件に手を出したのか? 「どうせ向かいの席に座っているんだし」と思ってコトの真相を聞いたところ、ギョーカイ関係者としては、ちょっと意外な回答が返って来た。
「とにかく、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)がイヤだったんですよ」
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機能が優れていればいいってモンじゃない
折戸青年が以前に所有していたV60は、1.6リッターターボエンジンに「パワーシフト」と呼ばれるゲトラグ製DCTを組み合わせた「T4」だった。そして、買い替えのきっかけとなったトラブルというのが、まさにそのDCTにまつわるものだったのだ。不具合が出たのは制御ではなくてメカのほう。修理にはアッセンブリーをごっそり交換する必要があり、費用はアバウト40万円と言われたそうな。内容を思えば良心的な見積もりだが、それでも折戸青年に買い替えを促すには十分だった。
このテのトラブルに見舞われた方ならご存じだろうが、DCTはCVTやトルコン式ATと比べて、修理が非常に難しい。内部構造が複雑なうえに高度な組み立て精度が求められるため、基本的に「パカっとフタを開けてギアを交換して……」という修理ができないのだ。結果として、何かトラブルがあった際に「お客さん、これはアッシー交換ですわ」というケースが増えてしまうのだという。かような経緯もあって、もともとDCT特有のギクシャク変速に不満があった折戸青年は、「次はトルコンAT」と心に決め、自らタマを探してT5 SEを購入したのだ。
スポーティーな変速フィールや伝達効率(≒燃費)のよさから、ときに“理想のトランスミッション”と評されるDCT。それは確かに事実なのだろうが、上述した折戸青年の実体験と判断もまた、DCTの実情だと思う。
記者が過去に碌(ろく)を食(は)んでいた中古車ギョーカイでは、こうした例が古(いにしえ)の世から語り継がれてきた。「トヨタ・セルシオ」のバイヤーズガイドでは「エアサスにご用心」が決まり文句。古くはフルタイム4WD、ひところは直噴エンジン、そして最近ではデジタルメーターと、「ハイテクがハイテクとしてもてはやされているうちは手を出すな」というのは、このかいわいではひとつのノウハウである。メーカー&インポーターがうたう手厚い新車保障は、ある意味、そうしたハイテクがもつ脆弱(ぜいじゃく)性の“裏返し”なのかもしれない。
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新車時の評価がすべてではない
「この世代のV70の中だと、T5 SEが断然コスパがいいんですよ。V60の下取りも含めて、コミコミ200万円で収まりました。まあ、高位の“ボルバー”の俺としては、harman/kardonやサンルーフも捨てがたかったんですけどねえ」(折戸)
「なんやねん“ボルバー”って。なにが“ボルバー”やねん」(ほった)
アホな会話を交わしつつ、最近調べる機会のあった自動車検査登録情報協会の統計を思い出す。メモをひっくり返したところ、わが国における2018年の平均車齢は8.6年、平均使用年数が13.24年だそうな。今日のニッポンでは、それほどまでに長い時間、1台のクルマが働き続けるのである。
ジドーシャというものを語るうえで、新車時のクルマの出来栄えが大きな指標なのは間違いない。しかしこの数字を見るに、新車時の評価がすべてではないこともまた明らかである。その機能が、そのキモチよさが、どれだけ長持ちするかも大事な性能だろう。
「モデル末期の『T4クラシック』もトルコンATじゃなかったっけ?」(ほった)
「高年式すぎて値段が高いんですよ。それに、同じ排気量だったら6段ATより8段ATの『T5クラシック』を選びますわ。パワーもあるし。まあ、どっちも高かったから“選外”でしたけどね」(折戸)
もうすぐwebCG編集部を卒業する折戸青年と語らいつつ、ジドーシャを語ることの難しさ、奥深さに思いをめぐらせる2019年の春であった。
(文=webCGほった/写真=webCG/編集=堀田剛資)
◆折戸青年オススメ! “後期型トルコンAT”の「ボルボV70」の物件はこちら
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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