ボルボV70 T-6 TE(4WD/6AT)【試乗記】
上質と喪失 2008.01.21 試乗記 ボルボV70 T-6 TE(4WD/6AT)……750.0万円
モデルランクをアップさせ、上質な印象になったボルボの主力モデル新型「V70」。3リッターターボの上級モデルでその実力を試す。
6気筒ボルボ
一見したところ従来型をベースとした”正常進化”。が、実は現行「ボルボS80」をベースとした骨格を採用し、一段と大きく、一段と上質に育ったのが今度の「V70」である。
大きな特徴は、「V70史上初めて6気筒エンジンを搭載」したこと。一方でS80がベースと言うことは、そのエンジン・コンパートメントにはV8ユニットも物理的に収まる理屈。で、エンジニア氏に尋ねてみればその将来的な可能性については「ノーコメント」というのが回答。すなわちそれは、近い将来のリリースが噂される「V90」、あるいは「V100」の存在をも示唆しているようにも感じられるわけだが……。
今回テストの「T−6 TE AWD」グレードは、新型ラインナップの“とりあえず”の頂点に位置するモデル。搭載エンジンは直列6気筒3リッターユニットにツインスクロール型ターボを加え、最高285psを発生する。アイシンAW製6段ATを介したトルクは、ハルデックス・カプリング式4WDメカによって4輪に分配。プレチャージ機構によってスタートの瞬間にも後輪側に最大8.2kgmが伝達される。このグレードの場合、3モードの選択式となる可変減衰力ダンパー「FOUR-C」のほか、ミリ波レーダーを用いた「アダプティプ・クルーズコントロール」や追突警告機構、ドアミラーの死角をカバーする「BLIS」などの先進アイテムも標準装備とされる。
安全のカタチ!?
「外観的には、主にリアビューでニューモデルらしさを表現したかった」というコメントが肯ける新しいV70、のドライバーズシートに乗り込む。例によって“スカンジナビアン・デザイン”を標榜するインテリアは多くのドイツ車ほどにはビジネスライクではなく、なるほどどこか“北欧家具”風の温かみを感じさせてくれる。従来型と比較して、左側のドアトリムが随分遠くなったように思えるのは、直列エンジンを横置きするため、全幅値が85mmも広がっているから。けっして“錯覚”ではないはずだ。
裏側が抜けてそこに小物などを置くことが可能な“センタースタック”は、最新ボルボ車に共通するインテリアのキーアイテムとなった。搭載機能が増加したゆえか各操作系のデザインは「分厚い手袋をしていても確実に操作が可能な大きなスイッチ」と紹介するには少々説得力に欠ける。しかし、たとえば剛性に富んだ厚いサンバイザーなどは、ボルボ車について今も語り継がれる「高い安全性と信頼性」を、実際のカタチとして表現しているようにも思える。
加速フィールは「さすがは直6」と思えるスムーズな回転フィールとジワリジワリと効きを強めるターボブーストの相乗効果で、かつての5気筒時代よりも上質さがずっと上と感じられる。ときにばね下の重さを意識させられるが、「FOUR-C」を採用の脚も、やはり新型V70の走りの上質さを強調する存在だ。ちなみに、そのモード・ポジションは総じて中間位置である“スポーツ”がベストと感じられた。最もソフトセッティングの“コンフォート”位置は、確かに路面凹凸に対する当たりは優しくなるものの、少々余分なボディの動きが発生しがちになるからだ。
ニューV70を日本の街で日常的に用いるにあたっての最大のマイナスポイントは、およそ1.9mという全幅のボディが、6mという大きな最小回転半径でしかターンできない点にありそうだ。特に、四角いボディが信じられない小回り性を発揮したFRレイアウト時代のボルボ車に魅力を感じる人にとっては、これは容認できかねる事柄であるだろう。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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