新型「ランドローバー・ディフェンダー」がついに上陸! 来日したデザイナーが語る このクルマの見どころとは?
2019.11.13 デイリーコラム日本でも大注目のニューモデル
2019年11月3日に、いよいよ日本でも先行予約の受け付けが開始された新型「ランドローバー・ディフェンダー」。ジャガー・ランドローバー・ジャパンの関係者によると、受注はまさに順風満帆。ショートの「90」が15台、ロングの「110」が135台という「ローンチエディション」は“瞬殺”だったそうだ。
思えば、モノコックボディー&四輪独立懸架ということで、正式発表の前から賛否両論盛り上がっていた新型ディフェンダーだが、こういうクルマはとにかく注目されてナンボ。支持派の声援はもちろん、アンチの批判もメーカーとしては織り込み済みで、実際それもディフェンダーの話題沸騰に拍車をかけたのだろう。取りあえずは順調な船出となったようで、おめでとうランドローバー、おめでとうディフェンダー。
さて、そんな新型ディフェンダーだが、2020年夏のデリバリー開始を待たずして、実車に触れる機会があった。webCGでも告知したのでご存じの方もいると思われるが、11月3日から5日にかけて、東京・代官山で一般展示イベントが催されたのだ。日本で新型ディフェンダーがお披露目されるのはこれが初……と書くと、「え? じゃあラグビーワールドカップの表彰式で登場したあのクルマは?」なんて言われそうだが、あれはあくまでコンセプトカー。市販版のお披露目は、ホントにこれが初なのだ。
ワールドプレミア(世界初公開)は2019年9月のフランクフルトなので、写真ではすっかりおなじみの感があるが、実車については記者も見たことがない。ヨンク好き、イギリスもん好きの記者は、カメラ片手に浮かれ気分で代官山 T-SITEへと出向いたのだった。
第一印象はとにかく「デカい!」
さて実車を拝見しての第一印象はというと、まぁとにかくそのスケール感に圧倒された。写真だとそうは見えないのだが、実物の新型ディフェンダーはとにかくデカい。小山のようにデカい。特に2mに迫る全幅&全高のボリュームはハンパではなく、モリっと張り出したショルダーと、そこからさらに突き出たオーバーフェンダーが、車体のデカさをより一層強調している。遠目に見る分には、「“オリジナル”とは全然違うけど、別段説明を受けなくてもこれが新型ディフェンダーだとはっきり分かるデザインだネ」なんて冷静でいられるのだが、近づけば近づくほど、強烈な存在感に圧倒された。
それにしてもこのフロントマスク。この造形の立体感は何かに似ているぞ。何だろう? と思ったら、同門の初代「フリーランダー」だった。『関口宏の東京フレンドパークII』で景品になっていた、懐かしのあのクルマをほうふつさせるではないか。
「ひょっとしたらそうかもしれません。コーナーまわりの形とか、ソフトな面質とか。でもリアとかインテリアとかを見ると、また全然違うクルマに感じられると思いますよ」
そう語るのは、ランドローバーのチーフ・デザイン・オフィサーを務めるジェリー・マクガバン氏だ。コベントリー大学やロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでデザインを学んだ後、クライスラーやプジョー、ローバー、フォードと渡り歩いてランドローバーのデザインディレクターとなった人物であるが……。ふっふっふ。なにが「ひょっとしたらそうかもしれません」ですか、アナタ。アナタがローバー時代に、リードデザイナーとして「MGF」や3代目「レンジローバー」、そしてフリーランダーのデザインを主導していたことは、こちとら調べ済みなのですよ!
はやりの回顧主義とは距離を置いたデザイン
それにしても、昨今のクロカン市場においては“新しくなる”“モダンになる”という至極普通のモデルチェンジが実にめずらしいことよ。この市場では「メルセデス・ベンツGクラス」に「スズキ・ジムニー」「ジープ・ラングラー」と、ここ1、2年で主要モデルが一斉に世代交代したのだが、“ご長寿モデル”が多いだけに自社の歴史を訴求しやすいのか、デザイン的にもGとラングラーは完全な(それも一目見ただけでは従来型と見分けがつかないほどの)キープコンセプト。ジムニーは初代や2代目を思わせる意匠への“原点回帰”と、いずれも他のジャンルではありえないような路線をとってきた。それに対し、新型ディフェンダーはご覧の通り、従来型とは大きく異なる“新しいデザイン”をまとう道を選んでいる。
「もちろん初代に対するリスペクトというか、尊敬の念はありますが、やはり“過去にとらわれないこと”にこだわりました。なにせ『シリーズI』の頃とは世の中が大変に変わっています。人の行動様式が変わりましたし、歩行者保護を含む衝突要件の法規や安全性に対する考え方も変わりました。新しいテクノロジーやインテリアの要件もあります。ディフェンダーが変わることは、不可避だったんですよ」
とはいえこのクルマはディフェンダー。従来型のアイコンも、きっちり踏襲されている。氏の説明によると、ルーフラインやショルダーライン、サイドシルがおりなす水平基調のサイドビュー、スクエアなホイールアーチ、ルーフのアルパインライトウィンドウなどは、その好例とのこと。横開きのドアにスぺアタイヤを背負わせたリアまわりは、初代との共通性を持たせるだけでなく、機能性や悪路走破性の向上にも配慮したものなのだ。
新型をディフェンダーたらしめるさじ加減
一方で、伝統だったクラムシェルボンネットを廃するなどして新しさも演出している。従来型とは大きく異なるフロントまわりは、シンプルで幾何学的なヘッドランプと特徴的なグリルまわりで堅牢(けんろう)性、堅実性を表現しつつ、過度に攻撃的にしないことで親しみやすさやフレンドリーさを加味。先述の通り、すっぱりと切り落とされたリアまわりは従来型との共通性を強く感じる部分だが、実はその面は微妙にラウンドしており、シンプルなテールランプと相まって、クルマにモダンなイメージを与えているのだ。
先ほど「従来型とは全然違うけど、言われなくてもディフェンダーの新しいのって分かるデザインだね」なんて簡単に言っていた記者だが、シロートが抱くかような印象も、こうした“受け継いだところ”と“変えたところ”の微妙なサジ加減があればこそのものだろう。僭越(せんえつ)ながら、マクガバン氏の手腕には素直に拍手である。
とはいえである。ディフェンダー……という名前になったのは1980年代になってからだが……は1948年から2016年まで連綿とつくられてきた超ロングセラーであり、現在の車名になる前は、このクルマ自体が「ローバー社の多目的オフロードカー=ランドローバー」だったのだ。いうなれば、ブランドの開祖にして経典にしてアイコン。デザイン開発に際して、内外からの雑音、横やりはなかったのだろうか? もっと言うと、ここまでガラリと変えちゃって、関係者から文句は出なかったの?
「無視しました。だってデザイナーはワタシですから」
潔い言い分である。
「とにかく私たちは、やるべきことをしっかりやるだけ。あまり多くの人の意見を聞く必要はないと思います。それに皆さん、きっと『昔のままでいい』って言うでしょうから(笑)」
見ているとワクワクしてくる
「110もいいのですが、私の家族は妻と娘だけですし、個人的には3ドアの90の方がいいですね。あと、非常にシンプルなものですけど白塗りのスチールホイールも用意していて、それを装着すると、よりディフェンダーらしさが味わえると思います。個人的には大径のホイールが好きなのですが、小さなホイールが好きな方は、こちらを選んでもいいんじゃないかと思います」
マクガバン氏のトークを聞きつつ、思い出されるのは2001年(日本では2002年)に「ニューMINI」が登場した時のこと。そこにはBMWの戦略がどうこう、クルマとしての出来がどうこうという以前に、このクルマが登場することで何かが変わるんじゃないか。古臭いヒエラルキーを超えた価値を見せてくれるんじゃないかという、期待とワクワクがあった。
思うに新型ディフェンダーは、従来型ディフェンダーの後継モデルではなく、そのリバイバルモデルなのだ。そういうクルマを指して「キャラもの」とあざける向きもあろうが、このクルマについては、ランドローバー史上最強の悪路走破性能でもって、ブランドのオフロードイメージをけん引する存在でもあることをお忘れなきよう。
さらに言うと、そうした付加価値の高い商品を、エントリーモデルにほど近い価格帯に設定してきた点も新しい。なにせ本国では、商用のパネルバンも追加する予定だというのだ。なにそれ、欲しいんですけど。できればMTでお願いします。
アイコニックで、実力が伴っていて、それでいてこのお値段! 2mという全幅はいささか気になるが、その他の点では日本のユーザーとも親和性は高いのではなかろうか? バリエーションも幅広いし、正式デビューのあかつきにはこのクルマに人気が集中して、他のランドローバー車が売れなくなっちゃうんじゃないの? 記者はむしろ、そっちの方を心配しているのである。
(文=webCGほった/写真=webCG/編集=堀田剛資)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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