ランドローバー・レンジローバー イヴォークSE D180(4WD/9AT)
進化するのも結構だけど 2019.12.24 試乗記 2代目となった「ランドローバー・レンジローバー イヴォーク」の実力を確かめるべく、ディーゼルモデルの「SE D180」に試乗。より快適志向となったシャシー、文句のつけようのないエンジンなどに感心しつつも、リポーターがどうしても気になったポイントとは?ブランドを変えた一台
ランドローバーの品ぞろえが「レンジローバー」と「90/110」(のちの「ディフェンダー」)だけだったころ、ということはつまり前世紀の話だが、レンジローバーとはオフロード四駆界のロールス・ロイスである、とぼくは理解していた。頭文字は両方とも“R.R.”。RACラリーのコースに自分の土地を好意で貸すような元貴族のお金持ちがディアハンティングなどに使うクルマがレンジローバーであると。
そんなイメージを覆したのがイヴォークである。ランドローバーとしては掟破りに斬新で都会的なSUVの原形は、2008年デトロイトショーのショーモデル「LRX」。3年後、ほぼそのままの形で、しかもレンジローバーの名字を与えられて市販化されたイヴォークは、ランドローバー始まって以来のヒット作になった。こんなレンジローバーあり!? と思わせた新種が、メーカー(ブランド)のイメージや立ち位置までも変えてしまった。ランドローバーのゲームチェンジャーである。
その2代目は、一見、正常進化そのものだ。ランドローバー販売の3台に1台を占めるまでになった成功作をむやみにイジることはないわけだが、見た目は変わらなくても、横置きエンジン用プラットフォームは一新されている。初代のオリジナルデザインはクーペ(3ドア)だったが、今度は取りあえず5ドアのみ。3ドアは1割ほどしか売れなかったというから仕方ない。
エンジンはいずれも2リッター4気筒の「インジニウム」ユニットで、日本仕様の出だしはガソリンが3種類とディーゼルがD180のみ。今回試乗したのはディーゼルの上級グレード、SE D180である。
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インテリアはすっかりデジタル世代に
新型はホイールベースもボディーの3サイズも先代とほとんど変わらない。全高は1cm低い1650mm。その頂点からルーフは後ろ下がりに下降するから、クルマに近づくとスポーツクーペのように屋根の上面が見える。しかしそれは最大渡河水深60cmをうたう本格四駆SUV。アバンギャルドなキャラクターは変わっていない。
ランドローバー車のスペックではおなじみの「最大渡河水深」は、今度のモデルチェンジで10cmかさ上げされた。イヴォークもゲリラ豪雨や巨大台風によるまさかの道路冠水で一番冷静でいられる一台だろう。
乗り込むと、運転席まわりは一変した。計器類はすべてバーチャル。エンジンをかけると真っ暗なダッシュボードにメーターが現れ、センターパネルの液晶モニターには高精細なイヴォークの側面図が浮かび上がる。リアルなスイッチはスタート/ストップボタンとハザードのみ。すっかりデジタルに生まれ変わったコックピットだ。
始動するとせり上がるダイヤル式ATセレクターはなくなり、センターフロアにはジャガー各車と共通のシフトノブが突き出す。傾斜したセンターパネルはかつてのボルボのようなフローティング設計で、裏側は物入れになっている。外観の印象は変わらなくても、車内は8年ぶりの新築感がすごい。
出来のいいディーゼルに乗れるのもいまのうち?
試乗車にはオプションの電子制御可変ダンパー(アダプティブダイナミクス)が付いていた。走りだしてまず気づいたのは、乗り心地の新しさだ。先代はアダプティブダイナミクス付きのモデルでも足まわりはがっしりと硬かった。それが「高床式スポーツカー」と言いたくなるようなイヴォーク独特のスポーティーさを演出してもいたのだが、新型はかなりコンフォート系に振られ、ゆったりした乗り味に変わった。乗り心地の印象から、ボディーがちょっと大きくなったようにも感じる。2代目にしてますます本物のレンジローバーに近づいたといえるかもしれない。
先代の終盤から使われている2リッター4気筒クリーンディーゼルには、非の打ちどころがない。2t近いボディーをグワッと加速させる力強さはディーゼルならでは。マナーのよさも欧州クリーンディーゼルのなかでトップクラスである。
車内はもちろん、車外騒音も低い。9段ATは100km/h走行時のエンジン回転数を1500rpmに抑えてくれる。とにかく静かで滑らかなエンジンだ。かなりのクルマ通でも、タコメーターのレッドゾーンが4000rpmから始まっていることに気づかなければ、ディーゼルと知らずに乗ってしまうのではないか。排ガス対策の不正問題や一足飛びの電動化機運で、突如、ヨーロッパではディーゼルに暗雲が垂れ込めている。このあたりがディーゼルエンジンの最高到達点になるかもしれない。そう考えると、乗るならいまのうち、という見方もできる。
クルマも高くなりにけり
ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)付きのイヴォークに乗ったのは初めてだったが、ハンドルを握る右手親指で操作できるこれはとても使いやすかった。“SET”ボタン一発で電脳クルーズに入る。街中でも「ペダルちょっと代わって」という感じで使える。ただ、ACCも11万3000円のセットオプションである。
ランドローバーは膨大といっていいくらいのオプションメニューをそろえている。オプション戦略といってもいい。機能装備も内外装もオーナーが細かく選べるようになっている。刷り物だと20ページにもわたるオプション表を見ていると、このメニューをつくるほうも説明するほうもタイヘンだろうなあといつも思う。
車両本体価格679万円のSE D180はD180の上級グレードで、ベーシックモデルのD180より144万円高い。それでもキーレスエントリー(10万円)やパドルシフト(3万3000円)はオプションだ。そうやって試乗車の状態にすると、総額900万円あまりになる。価格は昔のレンジローバーをとっくに超えているのだった。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー イヴォークSE D180
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1905×1650mm
ホイールベース:2680mm
車重:1970kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:180PS(132kW)/4000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104W M+S/(後)235/50R20 104W M+S(ピレリ・スコーピオンゼロ オールシーズン)
燃費:12.8km/リッター(WLTCモード)
価格:679万円/テスト車=918万3000円
オプション装備:セキュアトラッカー(10万1000円)/ドライブパック(11万3000円)/空気イオン化テクノロジー(2万円)/Meridianサウンドシステム(15万2000円)/アダプティブダイナミクス(17万5000円)/クリアサイトインテリアビューミラー(1万7000円)/20インチ“スタイル5079”5スプリットスポークホイール<グロスブラックフィニッシュ>(8万7000円)/ヘッドアップディスプレイ(15万4000円)/ウインドスクリーン<ヒーター付き>(3万2000円)/ウオッシャーノズル<ヒーター付き>(2万4000円)/固定式パノラミックルーフ(20万9000円)/プライバシーガラス(6万6000円)/電動調整ステアリングコラム(2万2000円)/フロントフォグランプ(3万1000円)/コンフィギュラブルアンビエントインテリアライティング(4万5000円)/マトリクスLEDヘッドライト(13万5000円)/キーレスエントリー(10万円)/アクティビティーキー(6万3000円)/パワージェスチャーテールゲート(1万5000円)/ブラックエクステリアパック(15万6000円)/ウェイドセンシング(0円)/パドルシフト<ブラック>(3万3000円)/プレミアムカーペットマット(3万8000円)/コントラストルーフ<ブラック>(8万1000円)/地上波デジタルテレビ(11万3000円)/コンフィギュラブルダイナミクス(4万8000円)/ヘッドライニング<クロススエード、エボニー>(21万8000円)/14ウェイフロントシート<ヒーター+メモリー機能付き>(5万8000円)/ボディーカラー<ユーロンホワイト>(8万7000円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:3556km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:417.9km
使用燃料:40.8リッター(軽油)
参考燃費:10.2km/リッター(満タン法)/10.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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