【F1 2020】最終戦でようやく奪還 フェルスタッペンの遅すぎた2勝目
2020.12.14 自動車ニュース![]() |
2020年12月13日、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行われたF1世界選手権第17戦アブダビGP。メルセデスとルイス・ハミルトンが席巻したシーズンは、レッドブルとマックス・フェルスタッペンの力強い走りで締めくくられた。
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ハミルトンが復帰 ラッセルはウィリアムズに戻る
新型コロナウイルスで陽性となり、1週間前の前戦サキールGPを欠場したルイス・ハミルトンの最終戦出場は、レースウイークが目前に迫った木曜日、陰性の結果をもってようやくゴーサインが出た。ホテルでの隔離生活中には軽い症状があったというが、短期間で回復できたことは幸いだった。
しかし一方で、「ジョージ・ラッセルにもう一回チャンスを与えたかった」というファンの声も十分に理解できるものだった。サキールGPで急きょハミルトンの代役を務めたこのメルセデス系の若手有望株は、僅差の予選2位からスタートしトップを奪うと、先輩格のバルテリ・ボッタスを相手に堂々首位をキープ。初優勝が見えかけたもののメルセデスのタイヤ交換ミスとパンクで9位という残念な結果に終わっていた。アブダビGPがその雪辱戦とはならず、再び下位のウィリアムズに戻ることとなったラッセルだったが、そのポテンシャルを世界中に披露できたことは、彼の今後のキャリア(と、メルセデス首脳陣のプラン)に大きな影響を及ぼすに違いないだろう。
コロナ禍でスケジュールが大きく変わり、3連続のトリプルヘッダーや同じコースでの2連戦、F1初開催コースや久々のカムバックとなったサーキットと、イレギュラー尽くしとなった2020年シーズンも、この17戦目で終わり。ドライバーズランキング2位のボッタスは、16点差のマックス・フェルスタッペンの追撃をかわせたのか? コンストラクターズランキング3位のレーシングポイント対4位のマクラーレンという、10点を挟んだ“中堅ナンバーワン”の争いはどう決着したのか?
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最後の大逆転 フェルスタッペンが今季初ポール
サキールGPではGP2年目のラッセルにお株を奪われ、赤っ恥をかいてしまった8年目のボッタス。シーズン後半に入りパンクなどの不運も続いていた彼は、自らをリセットするためSNSやメディアの閲覧をやめ、集中力を高め最終戦に臨んだ。
チーム代表のトト・ウォルフから、セッション中では異例ともいえる“声援”をかけられて予選Q3に入ったボッタスは、最初のアタックでトップ。2度目のラップでもハミルトンのタイムを0.061秒上回り、起死回生の予選P1になるかと思われた。しかし喜びもつかの間、フェルスタッペンが渾身(こんしん)の一発を決めてしまいポールを奪い去ってしまった。レッドブルのエースにとっては今季初、通算3回目のポール。パワーユニットとしては、過去16戦すべてでポールを取っていたメルセデス勢に、ホンダがストップをかけたかっこうとなった。
ボッタスは0.025秒差で2位、ハミルトンは0.086秒差で3位と、今季おなじみとなったトップ3のドライバーはいずれも接戦状態だった。
最終戦でランキング3位を取り戻したいマクラーレンは、ランド・ノリス4位、カルロス・サインツJr.は6位と好位置につけた。一方3位を守りたいレーシングポイントは、ランス・ストロールが8位、前戦ウィナーのセルジオ・ペレスはパワーユニット交換で19番グリッドと大きなハンディを背負った。
レッドブルのアレクサンダー・アルボンは5位、過去5戦で4回Q3進出を果たしたアルファタウリのダニール・クビアトは7位。予選9位だったフェラーリのシャルル・ルクレールは、前戦での接触のペナルティーで3グリッド降格し、アルファタウリのピエール・ガスリーが9番グリッド、ルノーのエステバン・オコンは10番グリッドにそれぞれ繰り上がった。
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フェルスタッペンが好発進で首位キープ
先頭からのスタート、しかも病み上がりのハミルトンは本調子ではなく、さらにメルセデスのパワーユニットは「MGU-K 」の懸念からパワーダウンを余儀なくされるなど、フェルスタッペンにはレース前から好条件がそろっていた。
実際、55周のトワイライトレースは、最初からレッドブルが優位に進め始める。各車順当にスタートを切り、1位フェルスタッペン、2位ボッタス、3位ハミルトン、4位ノリス、5位アルボンと、トップ5はグリッド順でオープニングラップ終了。6周目にノリスを攻略しアルボンが4位に上がると、レッドブルがメルセデスをサンドイッチするフォーメーションはゴールまで続くことになる。
コンストラクターズランキングの3位争いは、10周目に決定的な出来事を迎える。後方から追い上げていたペレスのマシンにトラブルが発生し、レーシングポイントは1台がリタイアするという緊急事態に陥ったのだ。
このタイミングでバーチャルセーフティーカーが出て、各車が続々とピットに入りタイヤをハードに交換、このままゴールまで走り切れる算段となった。上位に順位変動はなく、1位フェルスタッペン、2位ボッタス、3位ハミルトン、4位アルボンのまま。ペレスのマシン撤去に時間がかかったためセーフティーカーに変更され、13周まで徐行が続いた。
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完勝のフェルスタッペンの遅すぎた2勝目
レースが再開すると、フェルスタッペンはスタート直後と同じように軽快なペースで再びリードを広げ、20周して3.4秒、25周時点で5秒、30周を過ぎると7秒と順調にマージンを築いていった。
一方、2位ボッタスと3位ハミルトンは2~3秒台をキープしつつ、どちらも一向にレッドブルに牙をむくようなそぶりは見せない。そればかりか、残り10周あたりから4位アルボンが少しずつ差を詰めてきて、5秒あった間隔は4秒、3秒、2秒とゴールが近づくにつれ縮まってきた。しかし、アルボンにとっては時間が足らなかったようで、最終的に1.5秒差でチェッカードフラッグを受けることとなった。
ファステストラップは最後にリカルドに奪われたものの、一度もトップを譲らずポールから完勝。フェルスタッペンは、イギリス・シルバーストーンで行われた8月の第5戦70周年記念GP以来となる今シーズン2勝目を記録し有終の美を飾った。2位のボッタス、3位のハミルトンとも「今日のレッドブルは速すぎた」と語っており、表彰台間近まで迫ったアルボンにも称賛を送っていたほどだった。
フェルスタッペンの今季の表彰台はこれで11回目。優勝2回、2位6回、3位3回と、頂点は近いようで遠く、予選を含め2~3位がほぼ定位置となり、だいたいいつも最上段には、今シーズン11勝したハミルトンが立っていたことになる。
われわれがシーズンを通して見たかったコンペティションのかたちは、真っ向勝負で勝ち負けが分かれるような、手に汗握るスリリングなものだったはず。その意味で、ようやく2勝目を手にしたレッドブルの覚醒は遅すぎたと言っていいだろう。
最後まで白熱したコンストラクターズランキング3位争奪戦は、ノリスが5位、サインツJr.は6位でフィニッシュし、マクラーレンが3位奪還に成功した。来シーズンは、ぜひトップ争いでもそんなレースを見てみたいものである。
(文=bg)