メルセデスAMG GLA45 S 4MATIC+(4WD/8AT)
“やりすぎ”くらいがちょうどいい 2021.03.01 試乗記 CセグメントのSUVをベースに、メルセデスAMGが徹底的に走りを突き詰めた「メルセデスAMG GLA45 S 4MATIC+」。421PSの高出力ターボエンジンと専用チューニングのシャシーを備えたハイパフォーマンスモデルは、好事家の心をくすぐるトガった一台に仕上がっていた。リッター200PSオーバーのハイチューン
メルセデスAMGが手をかけるコンポーネンツのなかでも、前衛的なエンジニアリングの象徴として君臨するエンジン。その筆頭は、4リッターV8直噴ツインターボの「M178」型だろう。他社の製品を含め、あまたのモデルに搭載される「M177」型とは一線を画し、2ドアの「AMG GT」系のみに与えられるそれはドライサンプによる極限の低重心化を図ったもの。先ごろニュルブルクリンク北コースを6分48秒台と市販車最速で走り抜いた「AMG GTブラックシリーズ」に搭載された「M178 LS2」は、同じV8直噴ツインターボを積む「マクラーレン720S」や「フェラーリF8トリブート」にも勝る730PSをマークしている。
一方で、排気量対出力比で言えばそれよりがぜん過激なチューニングとなっているのが、2リッター直4直噴ターボの「M139」型だ。その出力は421PSと、リッターあたり200PSを優に超えている。負けじとトルクも500N・mと、2リッターエンジンとしては強烈なものだ。ひと通り手を入れてブーストアップした「ランエボ」の「4G63」が400PSくらい……と考えると、それ以上のスペックが均等にメーカー品質で頂戴できるというすごい時代になったことを実感する。
いわばAMGの“裏番長”ともいえるこのM139型ユニットを搭載するモデルは現在4車種。「A45 S」と「CLA45 S」「CLA45 Sシューティングブレーク」ときて、最も新しいのがGLA45 Sだ。
現行世代になってSUV度を高めたGLAに421PSの組み合わせが果たしてどんなあんばいかは、にわかに想像がつかないが、強いてライバル的なモデルを挙げるとすれば、アウディの「RS Q3」シリーズになるだろうか。独自色の強い2.5リッター直5ターボユニットは400PS&480N・mと、それでもアウトプットはGLA45 Sの側に軍配が上がる。が、そのパワーバンドの幅広さはRS Q3の側が勝っている。ともあれGLA45 Sとは、これほど幅広くきめ細かい市販車のラインナップにおいても、相当ぶっ飛んだキャラであることは間違いない。
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可変ダンパーの恩恵を感じる
「AMG 4MATIC+」と名づけられた四駆システムは、前後駆動配分を100:0~50:50の間で、ドライブモードや走行状況に応じてリニアに可変させる。それに加えてリアデフには「AMGトルクコントロール」を採用。後左右輪の駆動配分をほぼ0~100の間で制御することが可能だ。トランスミッションは8段DCTの組み合わせとなり、0-100km/hは4.3秒と、同じメカニズムを採用するA45 Sに対して0.4秒劣る。
GLAS45 Sはベースモデルに対して前側のトレッドが若干広がっている。同様に専用設計のハブを使用するA45 Sの場合は、それに伴いフェンダーが拡幅されるが、GLA45 Sの場合はベースモデルにオプションの「AMGライン」を装着したものと寸法的な差異はない。全高はベースモデル+AMGラインに対してさらに20mm低い1585mm、最低地上高は160mmとなる。このモデルで悪路に向かう人はまれだろうが、爆速にして軽い雪道などは躊躇(ちゅうちょ)なく走れそうな隙間を腹に持たされているあたりが、このモデル独自のセリングポイントということになるだろう。
ドライブモードセレクトをコンフォートに設定して走りだすと、望外にスムーズな転がり具合にまず感心させられた。4本おそろいサイズのタイヤは255/40R20と、「日産GT-R」の前輪とほとんど変わらない。それを履くのがCセグメント相応の車格のクルマであることを鑑みれば、バネ下をしかと受け止めバタつかせることなく、小さな入力は穏やかに丸めて、ここまで快適に走らせるのは相当調律のレベルが高い仕事だと思う。
ただし、速度域が高まり負荷が大きくなると、時折タイヤのバウンドが強く感じられ、それに乗じて車体が大きく揺すられることもある。これは減衰力の調整が可能なダンパーのモードを1段締めれば随分収まるが、乗り心地的には若干突き上げのインパクトが大きくなるので、首都高以上の速度域の高速道路や、路面環境のいいところで使うべきだろう。大柄な車体に大径タイヤ、強烈な動力性能ということで、さすがにベストレートを一発で決め打ちするのは無理。可変レートダンパーの効能を実感する。
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好事家のココロをくすぐる“無理やり感”
「さすがに無理筋だな」という印象を受けたのは、低中回転域での使い勝手も然(しか)りだ。エンジンのハジけっぷりを鑑みれば平地での低回転域トルクの粘りようはむしろ称賛されるべきだろうが、少し力強く加速しようと思ったくらいでも、スロットルコントロールのみでは対応できず、8段DCTが頻繁にキックダウンすることになる。結果的に、飛ばすでもなく交通の流れに乗って走るような状況では、結構ビジーな印象となってしまうのが惜しい。
やはりこのクルマの輝ける場所はワインディングロードだろう。固められているとはいえ重心もアイポイントも普通のクルマよりはどうしても高い、そんな物体が物理を無視するかのように駆動制御をうまく効かせながらグイグイと曲がっていく感覚は、他に類するものがない。さりとてサーキットのような場所を走ることはもちろん無理ではないにせよ、あまりお勧めはしない。そこは速さや負荷の少なさを鑑みればA45 Sのほうが適任だし、CLA45 Sであれば日常域での上質感もプラスされる。
これだけの火力が破綻なく扱えるのはさすがだなぁと思いつつ、この手のクルマの使い方を想定するに、オールラウンドで適性が高いのは、やっぱり弟分にあたる「GLA35」のほうだと思う。動力性能に柔軟性があって乗り心地に長(た)けるうえ、そちらでも十分速く走り、気持ちよく曲がる。じゃあGLA45 Sの存在意義とは何なんだ、何のためのクルマなのだと言われれば、このナリに著しく見合わない性能をあえて押し込んじゃいましたという、カスタムカー的な嗜好(しこう)に応じるイチモツなのではないだろうか。そういう意外性に引かれる富裕層が意外といらっしゃるということを、メルセデスAMGあたりは重々承知していらっしゃるのだ。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
メルセデスAMG GLA45 S 4MATIC+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1850×1585mm
ホイールベース:2730mm
車重:1800kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:421PS(310kW)/6750rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/5000-5250rpm
タイヤ:(前)255/40ZR20 101Y XL/(後)255/40ZR20 101Y XL(コンチネンタル・スポーツコンタクト6)
燃費:10.4km/リッター(WLTCモード)
価格:900万円/テスト車=988万5000円
オプション装備:AMGアドバンスドパッケージ(15万2000円)/AMGパフォーマンスパッケージ(56万3000円)/パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(17万円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:1293km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:230.1 km
使用燃料:31.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.2km/リッター(満タン法)/7.8km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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