アウディQ5スポーツバック ファーストエディション(FF/7AT)
スタイルこそ命 2021.08.11 試乗記 「アウディQ5」から派生したニューモデル「Q5スポーツバック」が上陸。クーペスタイルのスポーティーなフォルムと、最新のディーゼルパワートレイン「40 TDIクワトロ」が織りなす走りを、ロングドライブに連れ出し確かめてみた。買い得感のあるファーストエディション
Q5スポーツバックは、BMWでいうと「X4」、メルセデスなら「GLCクーペ」に相当するQ5のクーペ版で、ベースとなる現行2代目Q5のデビューから約4年遅れの追加となった。Q5といえば、日本でもマイナーチェンジモデルが2021年2月に上陸しており、今回のQ5スポーツバックも、ハードウエアはその最新型Q5と同様である。ちなみに本国ではマイチェン版Q5が2020年6月、スポーツバックが同年11月に登場しており、日本での発売は全体に8カ月ほど遅れているが、両車のタイムラグはほぼ同じだ。
車体そのものにおけるスポーツバックならではの造形は、リアに向けて弧を描いて下降していくルーフラインや、強く傾斜したリアゲートなど、センターピラーより後方にかぎられるようだ。実際にはさらに、前後バンパーやグリルの意匠も差別化されている。上級スポーツモデルの「SQ5」を除けば、日本のQ5スポーツバックに用意されるエンジンは、ひとまず2リッターディーゼル=「40 TDIクワトロ」のみである。
今回の試乗車は“記念限定車”の名目で先行輸入された「ファーストエディション」だった。これはカタログモデルでいう「40 TDIクワトロSライン」をベースに、通常はSQ5専用装備となる「マトリクスOLEDリアライト」を備えるほか、コントラストペイントやコントラストカラー20インチホイール、ダンピングコントロール付きサスペンション、ファインナッパレザーシートなど、通常はオプションあるいは設定のない装備の数々をトッピングしている。
まあ、これら特別装備の内容は通常オプションのそれと微妙にちがうのだが、ベースモデル比でプラス50万円というファーストエディションの価格設定には、まずまずの買い得感はある。マトリクスOLEDリアライトのOLEDとはいわゆる有機ELのことで、最近のアウディが順次導入している新機軸だ。通常のLEDライトにはない、浮き上がるようなグラフィックと、後続車に接近を自動警告する機能などがOLEDリアライトの売りだ。
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車内の実質的なスペースはQ5と同等
通常のQ5と比較すると全長が15mm長く、全高が5mm低いスポーツバックだが、実用上で影響を受けているのは、見た目からも想像できるように後席空間と荷室である。公式資料によると、後席の頭上高はQ5より16mm減少して、荷室空間はフル乗車時で40リッター削られているという。
ただ、実際のスポーツバックの後席は、身長178cmの典型的胴長日本人である筆者が背筋を伸ばして座っても、頭上にはまだ少し余裕がある。しかも、ホールド性の高い形状でスライド機構まで備わるリアシートそのものもQ5と共通だ。また、数値上は40リッターせまくなっているというトランクスペースも、床の形状や面積、トノカバーより下の荷室高……といった主要部分の寸法では、Q5とのちがいはほとんどない。つまり、使い勝手における実質的な差は驚くほど小さい。
その他のインテリアデザインや装備もベースのQ5と選ぶところはない。マイチェン版Q5と同じ音声操作も可能なタッチセンサー式の10.1インチ中央モニターが目をひくが、もともとが最新の八角形モチーフが使われはじめる直前世代のデザインゆえに、なんとなく古さを感じなくもない。
しかし、ドアポケットにまであしらわれたソフトパッドや、体が当たりやすいところに効果的に配されたレザーパッド、繊細なメッキ使いなど、細部のつくりこみはさすがアウディ。個人的には、ちょっとガチャついた印象のある最新アウディの内装よりも、落ち着いていて好ましいくらい……なんていうと、若者には古いセンスで凝り固まったオジサン世代だと思われてしまうのだろうか。
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12Vマイルドハイブリッドの効果は控えめ
改良された新世代ディーゼルエンジンにベルト駆動の12Vスターター兼発電機を備えたマイルドハイブリッド(MHEV)となるパワートレインは、以前に乗ったマイチェン前のQ5ディーゼルと比較すると、確実に洗練された印象だ。エンジンノイズは音量・音質とも当時より確実にディーゼル臭が薄まっている。とくに80~100km/hで淡々と巡航していると、エンジン音はほとんど耳に届かない。
12VのMHEVの効果は、最近ヨーロッパでハヤっている48Vタイプより、体感的な効果ははっきり控えめだ。たとえば、アイドルストップからの再始動も、反応速度やスムーズさにおいてちょっと物足りない。1500rpm付近の超低速域もスムーズであるが、いわゆる電動パワートレインらしいパンチには欠ける気がする。また、実燃費への貢献もごくわずかで、“電動パワートレイン”というには黒子に徹しすぎるくらいのシステムだが、かといって邪魔になるわけではない。
ただ、2000~4000rpmのパワーバンドにハマったときのレスポンスは、ちょっとうれしくなるくらい活発になった。ほどほどの快音を伴いながら、アクセルペダル操作とのラグをほとんど感じさせないリニアな吹け上がりは素直に気持ちいい。このあたり、アクセル操作と明確な過給ラグを感じた以前のディーゼルからはハッキリと進化している。
このように明確にパワーアップしつつも、同時に過給ラグも体感的にほぼ解消してみせているパワートレインの洗練度は、新型エンジンによるところが大きいと思うが、もしかしたら瞬間的なMHEVのアシスト効果があるのかもしれない。もしそうであれば、ここまではパッとしなかった(失礼!)12VのMHEVのありがたみも一気に増すというものだが、実効果がどれくらいなのかは現時点ではよくわからない。
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レアな足まわりにも注目
本国ではスポーツバックのみスポーツサスペンションを標準にして差異化を図っているようだが、日本では普通のQ5もスポーツバックも「ダイナミックサスペンション」に統一されており、各グレードのタイヤサイズもQ5とスポーツバックで共通である。そこに電子制御の可変ダンパーと20インチタイヤを追加したフットワークは、日本だと現時点でファーストエディションでしか手に入らないレアな組み合わせである。
ファーストエディションのシャシーは、ずばり能力は非常に高い。いくつかのドライブモードも用意されるが、デフォルトの「オート」モードのデキが飛びぬけて良好だ。ここにセットしておけば、市街地でも「コンフォート」に大きく劣らず快適で、高速では明確にフラットとなり、山坂道では「ダイナミック」に匹敵するくらい俊敏に曲がる。ロール剛性も高く、一般公道ではいかに振り回してもロールはほとんど体感できないほどである。
ただ、最近のアウディとしては、乗り心地や接地感が絶品とまではいえないのが、ちょっと残念といえば残念。マイチェン前に試乗した複数台のQ5経験からすると、より有機的な乗り心地や接地感がほしいなら、カタログモデルに用意される「アダプティブエアサスペンション」(Q5スポーツバックでは32万円)を選ぶといいかもしれない。
そんなQ5スポーツバックの本体価格は、カタログモデルどうしで比較すると、同エンジンの同等グレードのQ5に対して48万円高。走行メカや装備内容は普通のQ5と基本的に差はない。「スポーツバックのほうが割高やん。カッコのためだけの48万円か?」との指摘があると思うが、それはそのとおりである。クーペとは本来そういうものだ。
もっとも、実車を目の前にしたときの(Q5との)別物感は写真で見るより明らかに強いし、販売台数もスポーツバックのほうが少なくなるのは間違いない。そうした“たたずまい”や希少性に、ためらいなくエクストラコストを支払える人が、この種の高級クーペの想定顧客である。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
アウディQ5スポーツバック ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1900×1660mm
ホイールベース:2825mm
車重:1910kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:204PS(150kW)/3800-4200rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1750-3250rpm
タイヤ:(前)255/45R20 101W/(後)255/45R20 101W(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:14.5km/リッター(WLTCモード)
価格:837万円/テスト車=837万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1455km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:587.0km
使用燃料:48.6リッター(軽油)
参考燃費:12.1km/リッター(満タン法)/12.8km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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