独自の道を行く運転支援システム「マツダ・コパイロット コンセプト」を試してみた
2021.11.10 デイリーコラムあくまで事故発生を抑制する技術
技術は使い方によって、ユーザーが受ける印象や恩恵が大きく変わる。カメラなどのセンサーで車両周囲の状況を高精度に「認知」し、どうすれば安心・安全に動くかクルマが「判断」。その判断に基づいてクルマが自立的に「操作」を行うのが高度運転支援技術だ。操作の一部をクルマが肩代わりすることで、ドライバーはアクセルペダルの操作から解放されたり、ステアリングの操作から解放されたりする。特定の条件下でステアリングから手を放すことができる「ハンズオフ」や、前方を注視していなくても済む「アイズオフ」の機能は、安全運転支援技術のひとつの方向だ。
「Mazda Co-Pilot Concept(マツダ・コパイロット コンセプト)」は、ハンズオフやアイズオフを実現するのと同種の技術を使いながら、それをドライバーの負荷軽減に用いるのではなく、「事故の発生を抑制する技術」として使う。それはなぜか。
マツダは「クルマを運転することで、すべてのドライバーに毎日を生き生きと過ごしてほしい」と考えているからだ。疲れにくく、運転に集中できるような環境を整えるのが第一。運転支援技術はドライバーの認知や判断をサポートするという位置づけ。そして万が一、ドライバーが正常に運転できない状況に陥ったときは、裏で控えていた「コパイロット(副操縦士)」が操縦かんならぬステアリングホイールをドライバーに代わって(実質的に)握り、周囲の状況を確認しながら、クルマを安全に停止させる。これを実現するには、ドライバーの判断に頼らず、クルマが自立的に認知・判断・操作する技術が求められる。
運転を楽しむために
マツダの三次自動車試験場(広島県)で行われた技術説明会では、「78%のドライバーが運転中に眠気を感じている」というデータが示された。身に覚えのある読者も多いことだろう。さらに、体調急変に起因する交通事故のデータが示された。近年、ドライバーの体調急変に起因する悲惨な事故の報道が後を絶たない。「急な体調変化による事故の95.8%が時速60km以下で起きている」という。眠気も同様で、高速道路上だけでドライバーの異変に対処するだけでは不十分。事故を抑制するためには、一般道での対応も不可欠だ。
マツダ・コパイロット コンセプトは、ドライバーの居眠りや体調の急変を検知した際はドライバーに知らせ、高速道路でも一般道でも、ドライバーが運転できないと判断した場合には、クルマをすみやかに停止させ、安全を確保する。この技術が搭載されたクルマなら、常に、運転の上手なシステムが二人羽織のように寄り添ってくれる。だから、「ドライバーはいつでも安心し、心から運転を楽しんでください」ということだ。
三次自動車試験場に用意されていたのは現行の「マツダ3」をベースとする技術試作車で、2025年以降の実用化を目指す「マツダ・コパイロット コンセプト2.0」に相当する技術が搭載されていた。ハードウエア面では、マツダ3がもともと搭載する車内のドライバーモニタリングカメラに、車両の周囲を認知する12個のカメラと高精度地図、ロケーターECUが追加されていた。
ドライバーの居眠りや異常の発生を検知する技術が、マツダ・コパイロット コンセプトを成立させるうえでのポイントで、脳科学の知見を取り入れて研究を重ねている。ドライバーの状態異常は「運転操作」「頭部挙動」「視線挙動」の3つのパラメーターで総合的に検知・判断している。このうち視線挙動について説明すると、健常なドライバーであれば、変だと思うところに視線を向けながら、ミラーやメーターを意識的に確認する行動をとる。
ところが、脳機能が低下した状態では、意識的な視線挙動が失われ、注意が引きつけられやすいところ(専門的には「サリエンシーが高いところ」)に視線が偏ってしまうという。こうした特徴的な変化をいち早く捉えることで、ドライバーの異変を察知する仕組みだ。
ドライバー以外への気配り
技術試作車の試乗では居眠りを再現するために意図的に目を閉じたり、意識を失ったテイでセンターコンソール側に倒れ込んだりしてみた。すると間髪を入れず、システムは起動する。事前あるいは事後に特別な操作を必要としないのが、マツダ・コパイロット コンセプトの特徴だ。システムが起動するとハザードとブレーキランプが点滅。さらに、ホーンを鳴らして周囲に「異常が発生している」ことを知らせる。
一方、車内では「ドライバー異常のため、安全なところまで自動で走行し、停車します」→「500m先のパーキングに停車します」→「停車します」→「停車しました。ヘルプネットに接続します」と、落ち着いた男性の声でアナウンスがある。
マツダの気配りは、ドライバーの異常を検知した後のクルマの動きに表れている。クルマにはドライバーだけが乗っているとは限らない。助手席や後席に乗員がいる場合だってある。ドライバーに異変があって運転不能な状況が突然訪れた場合、残された乗員はパニックに陥ってもおかしくない。そんな状況で少しでも落ち着いてもらうため、システムがドライバーに代わってクルマを動かす際は(この状況では自動運転となる)、なめらかにクルマを動かすことに留意して開発している。前後左右とも加速度は0.2G以下に抑えているそう。何もできない乗員の立場で異常事態を疑似体験したが、技術試作車はクルマの運転のお手本のような、スムーズな動きに終始した。
マツダ・コパイロットを搭載していれば、いつでも安心してクルマを運転し、マツダがブランドの価値として掲げる「走る歓び」を日々味わうことができる。もしもの際の見守り技術はまず、既存のハードウエアを活用して構築した「マツダ・コパイロット コンセプト1.0」として、2022年に導入が始まる予定だ。
(文=世良耕太/写真=世良耕太、マツダ/編集=藤沢 勝)

世良 耕太
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