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第310回:マツダの夜明けを待つ!

2025.05.19 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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「マツダ3」の素質は日本のエース級

私はカーマニアなので、マツダというメーカーを気にかけている。あんまり買ったことはないのだが、常に尊崇の念を抱いている。

守旧派カーマニアにとって、マツダは武士(もののふ)そのもの。内燃エンジン技術へのこだわりは、「ドブの中でも前のめりに死にたい」という強い覚悟を感じる。

なかでも「マツダ3ファストバック」は特別だ。カーマニアが大好きなスポーティーなハッチバックボディーであり、しかも魂動デザインの集大成的な美しいフォルムを持つ。

パワーユニットには、これまたマツダ入魂の「SKYACTIV-D」や「SKYACTIV-X」が投入され、いわゆるカーマニア的な“いいクルマ“の究極の姿になることが約束されていた……が、実際そうはならなかったことは、皆さまよくご存じのとおりだ。

デザインはすばらしかったが、サスペンションは固すぎてしなやかさ皆無。SKYACTIV-D(1.8リッター直4)はパワーもトルクも物足りなかった。「SKYACTIV-G」(1.5リッター直4)のMTモデルは、一部でカーマニア御用達といわれたものの、乗ってみたらあまりにも遅かった。

真打ちとして登場したSKYACTIV-Xに至っては、大幅に値段が高い割に見返りが小さすぎ、見事な看板倒れ。「ガソリン圧縮着火という夢の技術を実現するためだけに生まれたエンジン」という、本末転倒の結果に終わった。

それでも、守旧派カーマニアにとってマツダ3は、ロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希的存在だ。いまだ不発ながら、素質は日本のエースのはず、というクルマなのである。

登場から6年。久々に「マツダ3ファストバック」のステアリングを握った。マツダ3ファストバックは、カーマニアが大好きなスポーティーでシュッとしたハッチバックボディーが目を引くイケメンだ。魂動デザインの集大成的なフォルムも美しい。
登場から6年。久々に「マツダ3ファストバック」のステアリングを握った。マツダ3ファストバックは、カーマニアが大好きなスポーティーでシュッとしたハッチバックボディーが目を引くイケメンだ。魂動デザインの集大成的なフォルムも美しい。拡大
Cセグメントモデル「アクセラ」の4代目モデルにあたる「マツダ3」は、2019年5月に登場。グローバルな名称に統一された車名が話題を呼んだ。最新ラインナップは2024年8月に発表された改良モデルで、今回はドアミラーやホイール、シグネチャーウイングなどをブラックで統一する特別仕様車「XDレトロスポーツエディション」に試乗した。車両本体価格は350万2400円。
Cセグメントモデル「アクセラ」の4代目モデルにあたる「マツダ3」は、2019年5月に登場。グローバルな名称に統一された車名が話題を呼んだ。最新ラインナップは2024年8月に発表された改良モデルで、今回はドアミラーやホイール、シグネチャーウイングなどをブラックで統一する特別仕様車「XDレトロスポーツエディション」に試乗した。車両本体価格は350万2400円。拡大
1.8リッター直4ディーゼルの「SKYACTIV-D」は、最高出力130PS、最大トルク270N・mを発生。登場当時、自動車用量産ディーゼルエンジンとして世界一低い圧縮比14.0の実現や燃料の多段噴射、NOx後処理装置なしでポスト新長期規制に適合するなど、多くの特徴がうたわれた。
1.8リッター直4ディーゼルの「SKYACTIV-D」は、最高出力130PS、最大トルク270N・mを発生。登場当時、自動車用量産ディーゼルエンジンとして世界一低い圧縮比14.0の実現や燃料の多段噴射、NOx後処理装置なしでポスト新長期規制に適合するなど、多くの特徴がうたわれた。拡大
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欧州勢のディーゼルに抜き返されて周回遅れ

そんなマツダ3に、久しぶりに乗る機会があった。

マツダ3が発表されたのは、2019年5月。ちょうど6年前になる。もう6年なのか! あれだけ期待されながら、6年間鳴かず飛ばずなのか! こりゃ佐々木朗希というより井川 慶か……。

久しぶりに対面したマツダ3は、1.8リッターSKYACTIV-D搭載の「XDレトロスポーツエディション」(FF)。美しいフォルムにオシャレな「ジルコンサンドメタリック」がよく似合う、相変わらずのイケメンだった。

でも、乗ったら少し暗い気持ちになった。

足まわりは、6年前に比べるとだいぶしなやかになったものの、路面のジョイントでは、相変わらず「ガツン!」という突き上げをお見舞いされる。

なにより残念だったのは、1.8リッターのSKYACTIV-Dと6段ATの組み合わせだ。6年前からまったく進歩が感じられない! こっちもマイチェンで出力が116PSから130PSに向上しているが、体感的にはなにも変わってない! パワーもトルクも物足りないし、今となっては最もガラガラ音が目立つ乗用ディーゼルとなった。ATのキレの悪さ(変速ラグ)は、完全に時代遅れレベルである。

SKYACTIV-Dが登場したのは、先代「CX-5」のときだから、13年前になる。

あのときは、ディーゼルとは思えないほど静かでトルクフルで、しかも排ガスの後処理がいらない超画期的なクリーンディーゼルってことで、自動車技術の金メダル級だと大感動したが、13年間、あまり進歩しないでいたら、他社、特に欧州勢のディーゼルに全部抜き返され、周回遅れになった(直6ディーゼルを除く)。

美しいフォルムにオシャレな「ジルコンサンドメタリック」の外板色がよく似合う「マツダ3」の特別仕様車「XDレトロスポーツエディション」。レトロモダンの世界観にスポーティーさを融合させたという内外装がセリングポイントだ。
美しいフォルムにオシャレな「ジルコンサンドメタリック」の外板色がよく似合う「マツダ3」の特別仕様車「XDレトロスポーツエディション」。レトロモダンの世界観にスポーティーさを融合させたという内外装がセリングポイントだ。拡大
インテリアでは、テラコッタカラーとブラックを組み合わせたカラーコーディネートやガンメタリックの加飾が特徴的。運転席10Wayパワーシート&ドライビングポジションメモリー機能、運転席&助手席シートヒーターなどがセットになる「ドライビングポジションサポートパッケージ」が標準で備わるなど、充実した装備の採用も「レトロスポーツエディション」のトピックである。
インテリアでは、テラコッタカラーとブラックを組み合わせたカラーコーディネートやガンメタリックの加飾が特徴的。運転席10Wayパワーシート&ドライビングポジションメモリー機能、運転席&助手席シートヒーターなどがセットになる「ドライビングポジションサポートパッケージ」が標準で備わるなど、充実した装備の採用も「レトロスポーツエディション」のトピックである。拡大
「レトロスポーツエディション」は「マツダ3ファストバック/セダン」のほか、クロスオーバーSUV「CX-30」「CX-5」にもラインナップ。2020年から各モデルに設定された「ブラックトーンエディション」に続く、同一コンセプトで複数車種をカバーするという特別仕様車シリーズの第2弾として登場した。
「レトロスポーツエディション」は「マツダ3ファストバック/セダン」のほか、クロスオーバーSUV「CX-30」「CX-5」にもラインナップ。2020年から各モデルに設定された「ブラックトーンエディション」に続く、同一コンセプトで複数車種をカバーするという特別仕様車シリーズの第2弾として登場した。拡大

技術でもヒットを飛ばしてもらいたい

私はディーゼルが大好きで、ロングドライブの多いカーマニアには最適なパワーユニットだと思っている。現在は「プジョー508」の2リッター直4ディーゼルに乗っているが、それと比べても、マツダ3のSKYACTIV-D 1.8は、あまりにも物足りない。

まぁ508は2リッターなのでクラスが違うが、同じプジョーの1.5リッター直4ディーゼルに比べても、静粛性や実用トルクなど、あらゆる面で負けている。

トランスミッションもプジョーがアイシン製の8段ATなのに対して、マツダ3は旧態依然とした6段ATのまま。ステランティスにコテンパンにされているのだから、ドイツ勢に対しても同様だ。

欧州勢はフォルクスワーゲンのディーゼルゲート事件で、ディーゼル開発が大打撃を受けたはずなのに! なんでなんで? どうして? やっぱSKYACTIV-XとかロータリーEVとか、大コケ技術に莫大(ばくだい)な資金を投入したから?

マツダ3は、このまま井川 慶で終わるのか。世界的なSUVムーブメントを考えると、残念ながらその公算大である。

マツダ3は仕方ない。あきらめよう。しかしマツダは、デザインだけでなく技術でもヒットを飛ばしてもらいたい。今や、デザインに比してあまりにも技術が物足りない。どれだけデザインがよくても技術がスカだと、カーマニアの評価は全体としてスカになる(「ロードスター」みたいに古典的であることに意義がある場合を除く)。

期待の「SKYACTIV-Z」も、「SKYACTIV-Xの圧縮着火を進化させた」と聞いただけで、なんとなく「どうかな……」と思ってしまう。カーマニアのつまらぬ先入観だといいのだが。マツダの夜明けを待つ!!

(文=清水草一/写真=清水草一、マツダ/編集=櫻井健一/車両協力=マツダ)

「マツダ3 XDレトロスポーツエディション」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4460×1795×1440mm、ホイールベース=2725mm。太く力強いCピラーの造形は、キャビンとボディーが一体となった塊感を印象づける。
「マツダ3 XDレトロスポーツエディション」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4460×1795×1440mm、ホイールベース=2725mm。太く力強いCピラーの造形は、キャビンとボディーが一体となった塊感を印象づける。拡大
究極の燃焼技術HCCI(予混合圧縮着火)に近い、SPCCI(火花点火制御圧縮着火)を用いた新エンジンとの触れ込みで登場した「SKYACTIV-X」。しかし、カーマニアのハートをアツくさせるまでには至っていない。
究極の燃焼技術HCCI(予混合圧縮着火)に近い、SPCCI(火花点火制御圧縮着火)を用いた新エンジンとの触れ込みで登場した「SKYACTIV-X」。しかし、カーマニアのハートをアツくさせるまでには至っていない。拡大
2年と少し前、「マツダ・ロードスター」で青森・三沢基地までロングドライブを行った。ドラポジが最高だし、シートもすばらしいので、長距離を一気に走っても全然疲れなかった。ロードスターはGTとしても名車であることを確認した。
2年と少し前、「マツダ・ロードスター」で青森・三沢基地までロングドライブを行った。ドラポジが最高だし、シートもすばらしいので、長距離を一気に走っても全然疲れなかった。ロードスターはGTとしても名車であることを確認した。拡大
マツダには、デザインだけでなく技術でもヒットを飛ばしてもらいたい。ひとりのカーマニアとして、「武士(もののふ)の次の一手」に期待している。
マツダには、デザインだけでなく技術でもヒットを飛ばしてもらいたい。ひとりのカーマニアとして、「武士(もののふ)の次の一手」に期待している。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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