ダイハツ・ムーヴ キャンバス ストライプスG(FF/CVT)
男も選べるカワイイ系 2022.10.29 試乗記 スタイリッシュなデザインで人気を博す「ダイハツ・ムーヴ キャンバス」。2代目となる新型は、定評のあった従来型からどのような進化を遂げたのか? 新しい時代の、新しいユーザー層にも受け入れられる軽セミトールワゴンの実力に触れた。ちょうどいいバランス
2016年に初代がデビューしたときの試乗会以来だから(参照)、ムーヴ キャンバスに乗るのは6年ぶりである。ひと世代で38万台を売り上げたという人気車は、2代目となって大きな変更があった。まずはツートンカラーの「ストライプス」に加え、シックなスタイルを持つモノトーンの「セオリー」が加わったこと。もうひとつは、新たにターボモデルが設定されたことである。
webCG編集部に受け取りに行くと、そこにあったのは「ストライプスG」。カワイイ系ルックスのノンターボ車である。今までどおりのタイプかぁ、と落胆しかけたが、先代からの変更点を見極めやすいのだと思い直した。見た目に関しては、すぐには違いに気づかない。わかりやすく変わったところは、フロントとリアだ。「CANBUS」のエンブレムが付いたこと、ナンバープレートの位置がリアハッチからバンパーに移されたことである。
横から眺めると、先代とそっくりだ。全長×全幅×全高はまったく同じで、両側スライドドアのセミトールワゴンというコンセプトが貫かれている。新型は「DNGA(ダイハツニューグローバルアーキテクチャー)」プラットフォームを採用しているから内部構造はかなり異なっているはずで、それでも同じフォルムに仕立てたのはこの形が好評だからだろう。ボクシーではあるが、角を丸めて柔らかで優しげな表情をつくり上げている。そのコンセプトは、「シカクマル」とでも表現すればいいだろうか。いや、それは新型「トヨタ・シエンタ」のデザインテーマだった。
旧型の写真と見比べてみると、少しだけテイストが変わったことに気づく。ファニーさが抑えられ、洗練度が増している印象なのだ。ヘッドランプの形状、ドアの下部に加えられたガーニッシュなどの小変更が、すっきり感をもたらしているのだろう。従来の「カワイイ」「レトロ」も受け継がれていて、甘すぎないバランスがちょうどいい感じだ。
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見晴らしがよく取り回しが楽
運転席に座ると、見晴らしがいい。webCGの駐車場は奥まった場所にあり、大通りに出ようとすると難所が立ちはだかる。狭い路地を抜けていかなければならないのだ。大きなクルマだと角を曲がる際に誰かに見てもらう必要があるのだが、ムーキャンならサイズが小さいうえに視界がひらけているから楽勝である。最小回転半径は先代と同じ4.4mで、取り回しのよさは折り紙付きだ。
自然吸気の3気筒エンジンはそのままだが、改良が加えられた新世代バージョンである。52PS、60N・mという数字は同じでも、より低回転で最大トルクを発生するようになった。DNGAプラットフォームの恩恵でボディーも軽量化されており、ドライバビリティーは向上しているはずだ。実際、先代モデルは発進加速に物足りなさを感じたが、新型は出足が改善されたような気がする。街なかを走っているかぎりでは、室内は静かだ。
もっとも、これについては想定どおりで、特筆するほどの話ではない。考えてみれば先代モデルだって街乗りで不満を覚えることはなかった。ほかのシチュエーションも試してみよう。高速道路に入り、箱根を目指す。料金所ダッシュを試みると、アクセルを踏んづけてもなかなか速度は上がらない。エンジンの回転数が上がっても車速がついてこないのだ。4000rpmを超えると騒音が室内に充満する。追い越しをかける際は、早めに加速を開始したほうがいい。
巡航に移行すれば一安心である。100km/h走行ならエンジン回転は3000rpmに届かない。試乗車にはオプションの「スマートクルーズパック」が付いていたので、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)を使えた。ターボ版では標準装備となっていて、長距離移動が想定されていることがわかる。やはりノンターボ車は街乗りが主と考えられているようだ。
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改良された「置きラクボックス」
本来の用途ではないことは承知のうえで、山道を走ってみた。急な上り坂では力不足が露呈する。騒音が高まるのはもちろんのこと、一定のところでエンジン回転数もスピードも頭打ちになった。メーターの針はどちらもピクリとも動かない。スピードが出ないものだから、コーナーに差しかかっても減速せずに曲がっていけた。ハンドルは早めに切る必要がある。応答が鈍いので、クルマが曲がり始めるまでに一瞬の間があるからだ。
このクルマにとっては不得意分野なのだから仕方がない。過敏な動きは求められていないのだ。買い物や通勤などに使うなら、神経質な操縦性はむしろ欠点になる。安全性に重点を置くのは正しい開発方針だろう。かように登りでは力を発揮することができなかったが、パワーが不要な下りでは能力の高さを見せた。コーナーで大きめにロールしながらも、姿勢を乱すことはない。安定感があり、怖い思いはしない。
せっかく箱根まで来たので道の駅に寄り、買い物をした。ここで役立つのが「置きラクボックス」。初代から受け継がれた後席のシート下収納だ。地味なようだが、商品性を高める便利機構である。ついたてを立てたバスケットモードでは、雑に放り込んでも物が床に散らばることはない。片手で操作できるようになったのが先代からの改良点である。見られたくないものを収納するには、ケースモードにしてシートの下に隠しておけばいい。
荷室にはアンダーボックスが備えられているし、インストゥルメントパネルやセンターコンソール、ドアなどには豊富な収納スペースがある。インパネアッパーボックスにはマスクを置くことが奨励されていて、コロナ対応まで考えられていた。センタートレイのワイヤレススマホ充電器も重宝したが、それよりもカップホルダーに保温機能が付いているのには意表を突かれた。カタログには「体を冷やしたくない女性にうれしい装備」と書いてある。昨今では、シートヒーターを超えるおもてなしが求められているらしい。
簡素だが心地よいインテリア
インテリアのつくりは先代から一変した。メーターがインパネセンターから運転席の前に移されたことで、まったく違う印象を受ける。水平基調なのは同じだが、外観同様にファニーさは控えめとなり実用的なしつらえになった。ストライプスはホワイト、セオリーはブラウンと色調が決められていて、選ぶことはできない。シンプルな造形が都会的なイメージで、試乗車は白と黒が心地よいコントラストだと感じた。
触ってみると硬い素材で、一体成型の簡素なものだとわかる。質感の高さを求めるのは限界があり、与えられた条件のなかでの成果を受け入れるべきなのだろう。ただ、ウレタンのステアリングホイールは残念な質感だった。革巻きはセオリーのターボモデル専用の装備で、ストライプスにはオプションでも用意されていない。内装色に加えてシート生地もストライプスとセオリーで分けられているので、好みによって選択はおのずから決まるはずだ。
街なかから高速道路、山道を走って、特段の不満点はなかった。なめらかとまでは言えなくても、乗り心地も上々である。DNGAの導入で、ダイハツの軽自動車は明らかに上質感を増していると思う。ムーヴ キャンバスは実用車として優秀で、ルックスにもアドバンテージがある。女子人気はこれまでどおり安泰だろう。
新型ではセオリーをジェンダーレスなモデルとして推しているようだ。ただ、初代モデルにもモノトーンの設定はあり、ツートンでも濃色とグレーの組み合わせなどが設定されていた。カワイイ以外の魅力も備えていたのに、ユーザーのほとんどが女性だったわけだ。もったいないことである。ムーヴ キャンバスが便利で実用性の高いクルマなのは間違いない。男性ユーザーも気後れすることなく乗っていい。カワイイ系のストライプスも選択肢に入れるのが新時代の男である。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ダイハツ・ムーヴ キャンバス ストライプスG
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1655mm
ホイールベース:2460mm
車重:880kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:52PS(38kW)/6900rpm
最大トルク:60N・m(6.1kgf・m)/3600rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:22.9km/リッター(WLTCモード)/25.7km/リッター(JC08モード)
価格:167万2000円/テスト車=189万8666円
オプション装備:9インチスマホ連携ディスプレイオーディオ スマートパノラマパーキングパック付き(14万8500円) ※以下、販売店オプション カーペットマット<高機能タイプ、グレー>(2万6026円)/ETC車載器<エントリーモデル>(1万7380円)/ドライブレコーダー<スタンドアローンモデル>(3万4760円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1086km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:376.7km
使用燃料:23.3リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.2km/リッター(満タン法)/16.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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