写真や映像じゃダメ! 「レンジローバー・スポーツSV」の内覧会で感じた“実物”の説得力
2023.07.23 デイリーコラム限られた人のための限られたクルマ
世の中には、一部の限られた人にしか開かれることのない、魔法の扉があるという。その向こうでは、いかなる宴が催されているのか? それを知るため、webCG編集部は東京・渋谷の某所へ赴いた。
表通りから一本入った閑静な路地に、その建物はあった。ライトグレーのコンクリートとガラス張りの組み合わせがいかにもモダンだが、特別なところはない。非日常の入り口はこんなところに紛れているのかと、戸惑いを覚える。しかし、場所はここで間違いない。なにせそこには、確かに「RANGE ROVER」のパイロン(広告塔)が立っているのだから……。
いい加減に種明かしをしましょう。このたびwebCGは、新型「レンジローバー・スポーツSVエディションワン」の内覧会、その名も「RANGE ROVER SPORT SV Unlocked」……の、メディア向け取材会にお呼ばれしたのだ。レンジローバー・スポーツSVエディションワンといえば、JLR(旧ジャガー・ランドローバー)から“とあるお手紙”を受け取った、本当に限られた人にのみ商談の機会が設けられた限定モデルである。日本向けの割り当てはわずかに75台で、もちろん完売御礼。今回の催しは、誓約書に判を押した顧客を招き、最終的なクルマの仕様を決めてもらうこと、新しい技術を知ってもらうこと、そして何より、一足早くその実車を見てもらうことが趣旨となっている。
グローバルではイギリスやドイツ等でも同様のイベントが開かれており、アジアではドバイ、そして日本がその舞台となる。会場が限られるだけに、わざわざ海外から足を運ぶ人もいるそうで、例えば日本での回には、「ニューカレドニアのお客さまがくる。インドからもオンラインで参加する方がいる……」とのことだった。ゆえに会場には、日本だけでなく海外のスタッフもセッティングされているのだ。
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先進技術を直感と体感で知ってもらう
まずは最初に通された部屋で、クルマの世界観を紹介するムービーを視聴する。で、一山いくらの民草(=記者)は、早速その映像と音響に焦るのである。「映画館かよ。いくらのホームシアターを持ち込んだんだよ」。次いで案内されたのは、クルマに取り入れられた先進技術に触れる部屋なのだが、そこにも無粋なパネルなどはない。今回のために調度をそろえた空間に、控えめに「それ」を知れる展示が紛れているのだ。
例えば、大きなハードカバーの本が、無数の“ルーローの四面体”の上に置かれている。一見するとおしゃれなオブジェだが、実はこれ、「前後左右に動いてもローリング/ピッチングしない」という「油圧連動式6D ダイナミクスエアサスペンション(ピッチ&ロールコントロール付き)」の効能を伝える展示なのだ。普段、新技術が出るたびに説明に難儀する筆者は、“体験”ならではの理解の速さ、ストレートさを、自身の手で再確認した。
さて、こうした技術説明のなかでも、記者が特に「これはいい!」と実感したのが「ボディー&ソウルシート」だ。これはSUBPAC(サブパック)という企業が開発した触覚オーディオシステムで、スピーカーから流れる音楽に合わせてシート内のアクチュエーターが振動。より臨場感・没入感のある音楽体験が得られるというものだ。筆者もデモンストレーション用のシートでそれを体験したのだが、これが非常にわかりやすかった。ライブハウスや音響が自慢の映画館では、音を空気の振動として肌でも感じると思うのだが、あの振動をシートが発し、腰と背中でそれを感じるのだ。
冗談交じりに「マキシマム ザ ホルモンとか流したらすごそうですね」と言ったら、スタッフ氏に「(アクチュエーターに使われる)モーターが結構パワフルだから、気をつけないと本当にすごいことになりますよ」と答えられた。このクルマに試乗できる機会があったら、ぜひ『刃渡り2億センチ』の入ったウォークマンを持参したいと思う。
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現物ならでは、実体験ならではの説得力
そうこうしているうちに、いよいよ一行は会場の深奥、すなわちレンジローバー・スポーツSVエディションワンが展示されるガレージへと行き着く。そこにたたずむ一台は、ハイパフォーマンスモデルであるSVのSVたるゆえんを、全身で表現したものとなっていた。すなわち標準装備のカーボンファイバーボンネットや同テールパイプフィニッシャーのみならず、オプションの23インチカーボンホイールやブレンボ製の8ピストンキャリパー、カーボンセラミックブレーキなどが盛られていたのだ。
一部のピューリタンな読者諸兄姉は、「SUVにカーボンホイールなんて!」と嘆くことでしょう。かくいう記者も、普段は「JLRのSUVなら『ディフェンダー』こそ至高」と言ってはばからぬ偏屈なのだが、そんなワタシでさえ「ああ、こりゃ。……なるほどね」と言わざるを得なかった。不本意ながら(?)、各所にカーボンのあや織り模様がのぞくその実車は、まぎれもなくカッコよかったのだ。自分では買えもしないのに講釈をたれたがる口プロレスのプロ(=記者)も、言葉を飲まざるを得ない。これもまた、画像・映像では決して生成できない、現物だからこそのすごみなのだろう。
また、ここでは実車であらためてボディー&ソウルシートを体験できたのだが、今度は“体で感じる音楽のすごさ”もさることながら、それを支える車内の静けさにも驚かされた。この、ドアを閉めたときの隔絶感を、どう文字と写真で伝えればよいのか。ホントに「瞬間・別世界」といった風だったのだ。
移動のツールであり、人間が動かす機械であり、リビングルームであり、時に音響空間にもなる。クルマというやつは圧倒的にまさに実存であり、文字でも写真でも映像でも伝えきれない体験にあふれている。だからこそ、プレミアムブランドは自社製品の訴求においても実物、実体験を大事にするのだろう。「高級車を買っていただく」というのがいかなることか、ちょっと勉強になった。
(文=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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