ボルボEX30シングルモーター エクステンデッドレンジ(RWD)/EX30ツインモーター パフォーマンス(4WD)
史上最も楽しいボルボ 2023.11.06 試乗記 2030年の電気自動車(BEV)専業ブランド化を掲げるスウェーデンのボルボ。量販が見込めるコンパクトサイズの「EX30」には、そのプランをリードする重要な役目が与えられているはずだ。国内導入を前にプリプロダクションモデルの仕上がりを試した。待望のニューモデル
“ボルボ史上最も小さな電気自動車”として2023年6月にワールドプレミアを果たし、日本でも8月に導入が発表されたEX30。ボルボの「C40」「XC40」に続く新世代BEVは、兄貴たちよりひとまわりコンパクトで、さらに全高が1550mmと低めということもあって、日本への上陸を今か今かと待ちわびている人も多いのではないだろうか。そんな待望のニューモデルを、ひと足先にスペインのバルセロナで試乗することができた。
C40/XC40が「CMA(コンパクトモジュラーアーキテクチャー)」を採用するのに対して、EX30はBEV用プラットフォームの「SEA(サステイナブルエクスペリエンスアーキテクチャー)」の上に成り立つBEV専用モデルだ。
全長×全幅×全高=4235×1835×1550mmの比較的コンパクトなボディーに、容量51kWhあるいは69kWhのリチウムイオンバッテリーと、1基または2基のモーターを搭載する。その組み合わせにより、3つのグレードが設定され、今回はともに69kWhバッテリーを搭載するRWDの「EX30シングルモーター エクステンデッドレンジ」と、4WDの「EX30ツインモーター パフォーマンス」の2グレードが試乗のために用意された。いずれも量産直前のプリプロダクションモデルであり、実際にカスタマーが手にするまでに、さらなる改良が加えられるのだという。
ちなみに日本では、2024年初にEX30シングルモーター エクステンデッドレンジの納車が始まり、その後、2024年中にEX30ツインモーター パフォーマンスが追加となる予定である。
シンプルなコックピット
すでに日本でもお披露目が済んでいるEX30だが、私自身はこのバルセロナが初対面。グリルレスのフロントマスクはC40やXC40のBEVで見慣れているが、BEV専用のEX30ではよりすっきりとまとめられていて、モダンなエクステリアになじんでいる。リアビューは、横に1本のLEDライトストリップを配置するクルマが増えるなか、それとは異なる新しいデザインとしたのがユニークなところだ。これなら昼夜を問わず、一発でEX30と分かるだろう。
EX30のインテリアは実にシンプルで、見た目にもとても心地よい雰囲気に仕上げられている。特に「ミスト」と呼ばれる内装を選ぶと、明るいグレーのファブリックがシートをはじめ、ダッシュボードやドアトリムにも張られて、カジュアルで居心地がよいのが個人的には気に入ってしまった。
その一方で、EX30のコックピットはあまりにシンプルすぎて戸惑うほどだ。ステアリングホイールの先にあるはずのメーターパネルが省かれ、速度計やシフトインジケーターが縦型のセンタースクリーンに統合されているのが一番の理由。ダッシュボードには物理スイッチがなく、ほとんどの操作はタッチ式のセンタースクリーンで行うことになる。フロントドアにはパワーウィンドウやドアミラーのスイッチが見当たらず、あるのはドアを開けるレバーだけだ。
試乗前に簡単な操作方法を教えてもらったからよかったものの、それがなければドアミラーを調節するだけでも困りそうだ。ちなみに、その操作方法はセンタースクリーンで車両設定を呼び出し、ドアミラーのメニューを開いて、左右いずれかの調節したい側を選択。あとはステアリングホイールの右スポークにある矢印でミラーを動かす、という手順である。慣れればわけないが、直感的に操作できないのがもどかしいのは私だけだろうか。
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運転が楽しいシングルモーター
コックピットのデザインやユーザーインターフェイスには戸惑いがあったが、肝心の走りはどんな印象だろうか。まずはシングルモーター仕様を試す。このEX30シングルモーター エクステンデッドレンジは、リアにマウントされる最高出力272PS(200kW)のモーターにより後輪を駆動。最新のC40/XC40の「リチャージ シングルモーター」と同じ方式だ。
Dレンジを選んで軽くアクセルペダルを踏むと、EX30は滑らかに動きだす。シングルモーターとはいえ343N・mの最大トルクを誇るだけに、出足からトルクに余裕があり、思いのほか軽々とした動きを見せてくれる。バルセロナの市内は車線が狭く、交通量も多いことから乗り始めこそ緊張したが、比較的コンパクトなボディーのEX30は扱いやすく、これなら日本の道でも楽に運転できそうだ。
ハイウェイでもシングルモーターのEX30は期待に応える加速を見せ、力不足と感じることはなかった。乗り心地も快適で、高速走行時のフラット感もまずまず。ステアリングの軽さが気になったものの、それ以外はよくまとめられており、総合点は高い。しかもこのシングルモーター、ワインディングロードに連れ出せば、ステアリング操作に素直に反応し、すっとノーズが入っていくのが実に気持ちがいい。これまでに経験したボルボのなかで、一番運転が楽しいクルマといったら、褒めすぎだろうか。
EX30の回生ブレーキは、“ワンペダルドライブ”をオンにすると利くのだが、減速は穏やか。アクセルペダルを完全にオフにすれば停止にいたるものの、一呼吸置いてストップするので、ついその前にブレーキを踏んでしまう。個人的にはもう少し強めの減速が得られるとともに、こころもち早く停止するといいと思う。
ツインモーターの加速にノックアウト
前後合わせてシステム出力428PS(315kW)を誇るツインモーター仕様も試すことができた。このEX30ツインモーター パフォーマンスは、通常時でも0-100km/h加速3.9秒を誇るうえ、パフォーマンスAWDモードに切り替えれば3.6秒をマークするという俊足ぶりだ。実際にハイウェイの合流でパフォーマンスAWDモードを試すと、上半身がのけ反るほどの鋭い加速に見舞われる。圧倒的なトルクを4輪で受け止めるおかげで、安心してアクセルペダルを踏みきれるのも驚きである。
一方、軽くアクセルペダルを踏んでドライブするぶんにはほぼリアモーターだけで走り、アクセル操作に過敏に反応することのないツインモーターは思いのほか扱いやすい。シングルモーターに比べるとやや硬めの乗り心地を示すものの、それでも十分な快適さを確保しているのもうれしいところだ。
室内のスペースにも触れておこう。全長が4235mmと短いわりに、後席はヘッドルーム、ニールームともに大人でも十分くつろげる余裕がある。ラゲッジスペースも70cm強の奥行きが確保され、ボディーサイズ相応の広さといえる。ボンネット下には“フランク”と呼ばれる小さいスペースがあり、充電ケーブルや三角表示板くらいであれば、無理なく収納が可能だ。
駆け足での試乗となったが、短時間でもレベルの高い走りやボルボならではの心地よいデザインなど、その魅力が理解できたEX30。日本でも扱いやすいサイズなこともあり、2024年、注目の一台になることは間違いないだろう。
(文=生方 聡/写真=ボルボ・カーズ/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ボルボEX30シングルモーター エクステンデッドレンジ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4235×1835×1550mm
ホイールベース:2650mm
車重:--kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:272PS(200kW)/5375-9248rpm
最大トルク:343N・m(35.0kgf・m)/116-5375rpm
タイヤ:(前)245/45R19 102V XL/(後)245/45R19 102V XL(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンスSUV)
一充電走行距離:475km(WLTPモード)
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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EX30ツインモーター パフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4235×1835×1550mm
ホイールベース:2650mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)/--rpm
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
リアモーター最高出力:--PS(--kW)/--rpm
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
システム最高出力:428PS(315kW)
システム最大トルク:543N・m(55.4kgf・m)
(前)245/40R20 99V XL/(後)245/40R20 99V XL(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンスSUV)
一充電走行距離:445km(WLTPモード)
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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