スバル・トレジア1.3i-S(FF/CVT)【ブリーフテスト】
スバル・トレジア1.3i-S(FF/CVT) 2010.12.20 試乗記 ……172万2000円総合評価……★★★★
「トヨタ・ラクティス」の兄弟車、「スバル・トレジア」に試乗。他のスバル車にも通ずるという、使い勝手や乗り心地を確かめた。
白いキャンバス
「スバル・トレジア」は、5ナンバー枠におさまるお手頃サイズの2ボックスカーだ。ルーミーなファミリーセダンとしても、格好のモデル。実は新型「トヨタ・ラクティス」の兄弟車であり、トヨタが製作を担当する。
その割には、コストダウン至上の廉価車という感覚は薄く、価格相応の“そこそこ感”もなく、まともなレベルにまとめられている。とはいえ、欧州車の剛性感までは備えていない。何度かのモデルチェンジを経験して、欠点をつぶしていったクルマのような完成度をもつ。
個性的な部分をユーザーに押し付けることがないから、距離を置いて、使い切れる道具として接せられるよさがある。設計担当陣は特別な思い入れをもたず、仕事と割り切って淡々とこなしたようにも感じられる。しかしそれは、ユーザーにとっては白いキャンバスのようなものであり、自由に自分の好みに描きあげる楽しみを残す。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「スバル・トレジア」は、2008年4月にトヨタ自動車とダイハツ工業、富士重工業の間に築かれた「新車開発・生産における協力関係」に基づくOEMモデル。「トヨタ・ラクティス」の兄弟車である。
クルマとしての基本的な造りは、「トヨタ・ラクティス」と同じ。インテリアも、広さ、デザインともに共通で、高さを変えられるラゲッジボードや、特大サイズのサンルーフなど、一部グレードで選べる特徴的な装備も継承される。
逆に違いとして挙げられるのはフロントまわりのデザインで、Aピラーより前の部分が、「インプレッサ」などに似た“スバル顔”に仕立て直されている。「トヨタ・ラクティス」にはないステアリングホイールの前後(テレスコピック)調節機構も、エントリーグレードを除き全車に備わる。
(グレード概要)
ラインナップは、1.3リッターと1.5リッターのエンジン別に、大きく2種類に分かれる。そのそれぞれに、エントリーグレード「i」、装備充実の「i-L」、スポーティグレード「i-S」の3グレードが並ぶ。1.5リッターモデルには、専用の足まわりやシートが与えられた走りのグレード「タイプ ユーロ」も用意される。
なお、今回のテスト車は、1.3リッターのスポーティグレード「1.3i-S」。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
計器類は特別に凝った造りではないが、必要なものが要領よく納められている。数字はやや小さめだが、かえって針のポジションを認識しやすい。センターコンソール部のシフトレバー周辺は「フィアット・パンダ」的な造りで操作しやすく、横方向にウォークスルーする際も邪魔になりにくい。カーナビ画面の位置もよく、角度的にも見やすい。ステアリングポストはチルト機構だけでなくテレスコピック機構もあって、ポジションを決めやすい。
(前席)……★★★
サイドシルの敷居は低めで、乗降性に優れる。乗り降りの際の、路面への足着き性も良好だ。ドアのスピーカーもえぐれており、出っ張ってはいない。
シートは見た目には平板ながら、座るとうまく沈み込んでホールド感はよい。サイズのわりに窮屈さもない。アームレストも好き嫌いはあるが邪魔にはならない。ただし、ドア側のアームレストはちょっと低め。ヘッドクリアランスが十分取られているため、外寸のわりに広々と感じさせる。
(後席)……★★★
折り畳めるタイプにしてはクッションのストローク感もあり、概して座り心地は悪くない。ここもヘッドクリアランスがあって開放的だ。足先も前席下に余裕をもって納まる。目前のヘッドレスト(前席)も小振りで、視界を妨げない。
前席同様サイドシルが低く、乗降性に優れる。シートバックはやや背丈が短めながらヘッドレストを上げれば落ちつく。後輪からのロードノイズはやや耳につく。
(荷室)……★★★
全長4mを切るコンパクトサイズにしては十分な広さ。後席を畳めば広さは倍増するのはもちろん、ここでもルーフの高さが生き、背の高い荷物も許容する。バックドアの幅はやや狭めながら、フロアがバンパーの高さからフラットなので、荷物の積み下ろしは容易だ。そのフロアボードの下にも小物を隠せるトレイが備わる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
1.3リッターで(1.5リッターでなくとも)十分と感じさせる動力性能をもつ。CVTは、スロットルを開けていれば開けただけ期待に応えてくれるし、変速に伴うエンジン音の変化が無く連続的なので、かえってうるさいという感覚は少ない。速度が上がるに連れて音量は下がってゆくから、高速ほど静かに感じる。トルコン式のATのようなスリップ感がなく、スロットルの動きにダイレクトに反応しながらも、エンジン音はなだらかに変化するので、運転も穏やかになる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
背の高いボディ形状ながら、重心高の高さを感じさせない、自然なロール感。操舵(そうだ)感も特別敏感さはなくスローでもない。乗り心地も特記するほどフラットではないし、ダンピングも印象的ではない。そんなフツウさが全体を通して嫌みのない走行感を作り出している。
実用車やファミリーカーにとって、実はコレこそ得難い特性。重箱の隅を突っつくならば、軽積載時を設計の基本としているのか、荷重が増すにつれ乗り心地は悪化する。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年12月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:1338km
タイヤ:(前)175/60R16(後)同じ(いずれも、ダンロップSPスポーツ2030)
オプション装備:SRSサイドエアバッグ+SRSカーテンエアバッグ(4万2000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:579.6km
使用燃料:41.19リッター
参考燃費:14.07km/リッター

笹目 二朗
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