第171回:【Movie】圧巻熱烈動画! これが「スマート」世界ミーティングだ
2010.12.04 マッキナ あらモーダ!第171回:【Movie】圧巻熱烈動画! これが「スマート」世界ミーティングだ
「スマート」なら、みんなおいで
「スマートタイムズ」は、スマートファンのために毎年行なわれる大ミーティングである。
第10回目となった2010年度は、8月18〜22日の5日間にわたって開催された。約20カ国から約900台にのぼる「スマート」の各モデルが、オーストリアのツェル・アム・ゼーに集結。参加者は1300名に達した。
会場は、隣町カプルンとの間にある飛行場に隣接した滑走路跡地だ。イベントは、スマートならボディタイプや年式を問わず参加費無料という、太っ腹な企画である。加えて、早着した熱烈ファンには、市内提携喫茶店で特別料金適用という特典が。条件はスマートのキー提示という、しゃれたものだった。
「スマートタイムズ」は2009年に、主催者がメルセデス・ベンツの現地法人からダイムラー本社に格上げされた。おかげで今年はメルセデスデザインスタジオで働くデザイナーのトークや、無料点検までもが用意された。
さらに会場の一角には、僅かなチャリティ募金をするだけで、スマートのEV仕様「スマート エレクトリック ドライブ」のステアリングを握れるコースも設けられた。
「スマート」に16人のチアガール!?
「お楽しみ系イベント」も豊富だ。
今年はスマートの改造車を使ったスタントショーや「ストロングマン」と称する怪力男たちによる、スマート持ち上げパフォーマンスなどが次々と展開され、来場者を沸かせた。
しかし最も盛り上がったのは、インスブルックから来たチアガールたちによる「スマート詰め込みチャレンジ」である。チャレンジ開始前、司会者が来場者に「過去にスマートに何人で乗ったことがあるか?」と問うと、次々と手が挙がった。まもなく9人乗車をしたオーナーがいることが判明。「おいおい、道交法違反じゃないか!」と、すかさず突っ込みを入れたところで競技はスタートした。
チアガールたちはスニーカーをクルマの周りに脱ぎ捨て、スマートに乗り込んでゆく。たちまち、すし詰め状態となった。往年のバラエティ番組における熱湯コマーシャルに匹敵する試練である。
チアガールのひとりは筆者に「もうサウナ状態!」と悲鳴をあげていたが、「一緒に参加して、詰め込まれたい」と口先まで出掛かった男性参加者は、筆者だけではなかろう。
幸い彼女たちはこれまでのギネス記録を上まわる16人でスマートに乗車し、車両を前進させることに成功した。
会場にはコンボイを組んでやってきたクラブも多かった。ポーランドのクラブは1000km、ギリシアの愛好会は2000kmの道のりをたどって到着した。ベルギーのクラブも13台を連ねてやってきた。
いっぽう来場者参加のクライマックスは、なんといっても4日めのパレードだ。こう言ってはナンだが、いい年をしたオジサンがホーンをプープー鳴らし、一見マジメそうなおばさまがハコ乗りになってビデオを回していたりする。現行モデルでここまでハイになれるクルマは少ない。
勢いあまってミスコースをするスマートに、地元の人たちが「そっちじゃない、そっちじゃない」と慌てて教えるほほ笑ましいシーンもみられた。
その夜には、近郊のカプルン城で夜会が催された。光のスペクタクルが展開されたあと、周囲が突然真っ暗になった。人々が騒然とするなか、まもなく緑、白、赤のトリコローレが城塞に映し出され、カンツォーネのBGMとともに「来年はイタリアのビーチリゾート、リッチョーネで開催」の旨が告知された。
この10年で世界各国からファンが集まるイベントに成長したため、今後は第1回からの開催地オーストリアを出て、各国を回りながら開催する予定という。夜空に大きな拍手が沸きあがり、参加者たちは来年の再会を誓い合った。
クルマ界の「断捨離」だ!
ところで日本では、モノを捨ててシンプルな生活を目指す「断捨離(だんしゃり)」という言葉が話題となって久しい。
提唱者・やましたひでこさんの解説を引用すると、「不要・不適・不快なモノとの関係を、文字通り『断ち・捨て・離れ』、引き算の解決方法よって停滞を取り除き、住まいの、暮らしの、身体の、気持ちの、人生の、新陳代謝を促すこと」だという。
スマートを見ていると、まさにクルマ界の「断捨離」であることに気付く。不要なシートを捨てて身軽な2シーターとなる。従来のブランド意識、グレード意識によるクルマ階級闘争と決別する。
かわりに、こんな愉快なイベントに参加できる権利を無料で獲得でき、世界中の仲間と知り合うことができるのだ。実際そのあたりが快感なのだろう。参加者の中には、「メルセデスの『ML』も持っているけど、今はもっぱら『スマート』」というリタイア夫妻や、「BMWの12気筒から乗り換えた」といった64歳のドライバーもいた。
「reduce to max」とは1998年のスマート誕生時におけるスローガンだ。まさに12年前に「断捨離」をクルマ界で実行していたといえまいか。
蛇足ながら、最近はボクも「断捨離」を実行に移そうと、自分が好きでもないのに取っておいた古いクルマのカタログをどんどん捨てている。しかし最後の段階になって未練が募り、道端に出したゴミ袋の中をまさぐることが何度かあった。「スマートな生活」とは程遠く、情けないことこの上ない……。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
【Movie】さまざまなモデルの「スマート」が集まるミーティング会場
【Movie】「スマート」に16人乗り込む!? 楽しいイベントが盛りだくさん!
【Movie】イベントのクライマックス、パレードスタート!
(撮影と編集=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第944回:こんな自動車生活は最後かもしれない ―ある修理工場で考えたこと― 2026.1.15 いつもお世話になっている“街のクルマ屋さん”で、「シトロエン・メアリ」をさかなにクルマ談議に花が咲く。そんな生活を楽しめるのも、今が最後かもしれない。クルマを取り巻く環境の変化に感じた一抹の寂しさを、イタリア在住の大矢アキオが語る。
-
第943回:スバルとマツダ、イタリアでの意外なステータス感 2026.1.8 日本では、数ある自動車メーカーのひとつといった感覚のスバルとマツダだが、実はイタリアでは、根強いファンを抱える“ひとつ上のブランド”となっていた! 現地在住の大矢アキオが、イタリアにおけるスバルとマツダのブランド力を語る。
-
第942回:「デメオ劇場」は続いていた! 前ルノーCEOの功績と近況 2025.12.25 長年にわたり欧州の自動車メーカーで辣腕(らつわん)を振るい、2025年9月に高級ブランドグループのCEOに転身したルカ・デメオ氏。読者諸氏のあいだでも親しまれていたであろう重鎮の近況を、ルノー時代の功績とともに、欧州在住の大矢アキオ氏が解説する。
-
第941回:イタルデザインが米企業の傘下に! トリノ激動の一年を振り返る 2025.12.18 デザイン開発会社のイタルデザインが、米IT企業の傘下に! 歴史ある企業やブランドの売却・買収に、フィアットによるミラフィオーリの改修開始と、2025年も大いに揺れ動いたトリノ。“自動車の街”の今と未来を、イタリア在住の大矢アキオが語る。
-
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達― 2025.12.11 イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。
