トヨタ・クラウン スポーツRS(4WD/CVT)
地に足がついている 2024.02.23 試乗記 「トヨタ・クラウン スポーツ」にプラグインハイブリッド車(PHEV)が登場。先にデビューしたハイブリッドがトヨタ車の最上級グレードでは一般的な「Z」を名乗るのに対し、PHEVには特別な「RS」が与えられている。果たしてその仕上がりは?足元はRS専用
「足元を見る」とは人の弱みにつけこむ、とのあまりよろしくない慣用句だが、実はわれわれも、そういう意味ではないけれど足元を見がちだ。ホイールとタイヤとブレーキが気にならないクルマ好きはいませんよね。その点、PHEVのクラウン スポーツRSは頼もしい。ひと足先に発売されたハイブリッドと同じ21インチの大径ホイールを装着しているのだが、大きなブレーキディスクと赤いキャリパーがたくましく、見た目だけで(もちろん性能面でも)本物感にあふれている。マットブラック塗装の専用アルミホイールも、奥のブレーキをよく見せんがためのスポークが細いデザインだという。
いいじゃないか、こうじゃなくちゃ。せっかくの肉感的なボディーなのだから、つま先まで気を遣わなければもったいないというもの。対向6ピストンをアピールする「OP-6」のアルミキャリパー(フロントのみ、リアはスチール製)のロゴはちょっとあれだが、失礼ながら、ライト類とブレーキには金をかけない傾向があるトヨタにしては珍しい大奮発だ。トヨタの標準装備としては初めてではないかと推測するが、この辺については口が重い。社内事情があるのかもしれない。大径ホイールを採用しながら、その奥に見えるブレーキが貧弱だと何とも寂しい気持ちになってしまうものだが(トヨタ以外にも日本車には多い)、クラウン スポーツRSはたくましく引き締まって見える。このブレーキシステムはプラグインハイブリッドのRS専用という。オプションでいいから他のクラウンシリーズにも設定すればいいのに、と思うが、クラウンの他のモデルに採用する予定は少なくとも今のところはないという。
足元が軽い
都内での試乗ゆえに、そのブレーキの制動力を本格的に試すような場面はなかったが、そもそもの剛性感や乗り心地も違った。ひと足先に発売されたハイブリッドは「Z」グレードのみだったが、PHEVはRSだけのモノグレード。パワートレインはもちろんクラウンファミリーで唯一のプラグインハイブリッドだが、それ以外にも電子制御可変ダンパーのAVS(アダプティプバリアブルサスペンション)が標準装備され、駆動用バッテリー搭載による重量増(Zの1810kgに対してRSは2030kg)に対応するためか、トンネルブレースやリアサスペンションのロッカー部分にも補強が加えられているという。
そのおかげか、RSは新しいクラウンシリーズのなかで(方向性が違う「セダン」以外では)一番滑らかでスムーズな乗り心地に感じられた。がさついたザラザラ感やゴロゴロしたラフな振動がなく、引き締まってはいるが洗練されている印象である。聞けばAVS自体も「クラウン クロスオーバー」に採用したものからさらに改良されているという。後輪操舵システム(DRS)も標準装備で、2tあまりの車重にもかかわらず、スルッと自然に鼻先が向きを変えるシャープさもクラウン随一ではないだろうか。
使える機能全部盛り
パワートレインは他のトヨタPHEVと同様のシステム、すなわち2.5リッター4気筒エンジンに前後モーターを搭載、後輪はモーターのみで駆動される「E-Four」4WDである。エンジン単体ではハイブリッドZ(186PS/221N・m)よりもわずかにスペックが低い177PS/6000rpmと219N・m/3600rpmを発生するが、その代わりにフロントモーターは182PSと270N・mとずっと強力で(Zは120PSと202N・m。リアモーターは同じ)、結果ハイブリッドZの234PSというシステム最高出力に対して、PHEVのRSは306PSとその差は明らかだ。街なかを走るぐらいではスルスルとモーターで走るのみ。ドライブモードを変えたり、床まで踏んだりすればかなり強烈に加速するが、その際もラフではない。
フロア下に搭載されるリチウムイオン電池容量は18.1kWh、WLTCモードのEV走行換算距離は90kmとされている。同じくWLTCモードのハイブリッド燃費も20.3km/リッターとZ(同21.3km/リッター)と大差なく、燃料タンク容量も55リッター(レギュラー)と変わらないため、電動走行距離と合わせて計算上は1200km以上の長い航続距離を持つと主張する。また普通充電のみの「プリウス」や「ハリアー」のPHEVとは異なりDC急速充電にも対応しており(50kW器の場合約38分で80%まで充電可能という)、さらに外部給電できるV2H機能も備わる、という具合に出し惜しみなくあらゆる機能が盛り込まれている。ハイブリッドZの590万円に対してRSの価格は765万円とだいぶ差があるが、充実の専用装備に加えて補助金を勘定に入れれば案外安いのではないか、とさえ感じる。クラウン スポーツのプラグインハイブリッドなら、もう少し強気でもいいんじゃないか?
こっちが先に出ていれば
といいながら、たとえクラウンブランドでも以前ほど強気で攻めるわけにはいかないのかな、と考えさせられるのが巧妙に“抜いている”部分も見受けられることだ。かつての“いつかはクラウン”とは違って、現在のクラウンシリーズにはスペックを下げたパーツが使われている。以前にも書いたが、速度コントロール式ではないパワーウィンドウモーターや、高さが調節できない単純なランバーサポート、さらに助手席側シートには(スイッチは同じなのに)高さ調整機構が付かないこと(そのために着座位置が高くて頭上が窮屈)など、ここで節約しなくてもいいのに、と感じる部分が少なくない。
いっぽうで専用のブレーキローターやキャリパーなど明確に力がこもっている部分もある。この温度差は何だろう、と昔のクラウンを知る身としてはちょっとふに落ちない。もちろん単純なヒエラルキーでは語れない時代であり、事実上国内専用だった先代までのクラウンとは違って投入する市場向けにつくり分ける必要があるのだろうが、そういう細部で倹約するのはクラウンというブランドにはふさわしくないと思うし、GA-Kベースのなかでは現状ベストのクラウン スポーツRSがクロスオーバーよりも先に出ていれば、世の中のイメージもずいぶん違っていたのではないだろうか。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
トヨタ・クラウン スポーツRS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1880×1570mm
ホイールベース:2770mm
車重:2040kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:219N・m(22.3kgf・m)/3600rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:306PS(225kW)
タイヤ:(前)235/45R21 97W/(後)235/45R21 97W(ミシュランeプライマシー)
ハイブリッド燃料消費率:20.3km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:90km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:90km(WLTCモード)
交流電力量消費率:165Wh/km(WLTCモード)
価格:765万円/テスト車=794万2600円
オプション装備:ボディーカラー<ブラック×エモーショナルレッドIII>(9万9000円)/パノラマルーフ<電動シェード&挟み込み防止機能付き>(11万円)/デジタルキー(3万3000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ロイヤルタイプ>(5万0600円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1042km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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