KTM 1390スーパーデュークR EVO(6MT)
猛獣注意 2024.03.19 試乗記 誕生30周年を迎えたKTMのロードモデル「デューク」シリーズ。その頂点に立つ新型車「1390スーパーデュークR」にいち早くライディングする機会を得た。既存のモデルからの進化の度合いと、“THE BEAST(猛獣)”という愛称のゆえんを、スペインから報告する。キーワードは“THE BEAST, EVOLVED”
KTM 1390スーパーデュークR EVOは、2016年に登場し、2022年にアップデートされた「1290スーパーデュークR」シリーズの流れをくむモデルだ。今回、エンジンの排気量拡大と吸気系レイアウトの変更、一部フレームレイアウトの変更、最新世代のセミアクティブサスの搭載、燃料タンクの大型化やウイングを持つ外装トリムの採用、ヘッドライトおよびその周辺の刷新……と大幅な改良が行われ、それに伴い車名も改められた。
190PSの最高出力と145N・mの最大トルクが生み出す加速は、まるでグランプリマシンのようだ……とは、元MotoGPライダーでありテストライダーを務めたジェレミー・マクウィリアムス氏が製品説明のときに放った言葉だ。エンジン吸気の入り口を車体中央から前部に移動し、走行風圧による過給効果も狙ったことで、高回転までタレないパワー特性を得たという。
新世代のWP製セミアクティブサスペンションは、フロントフォークでは片側がダンパー、片側がスプリングと機能を分けることで、変更可能なセッティング領域が一気に拡大されている。これはリアショックユニットも同様で、セッティングの要素を羅列するだけでも話が尽きないほどに機能が増強された。5インチのTFTモニターからメニューを呼び出し、左側、右側のスイッチでパラメーターを変更すれば、オーナーは自分好みにそれをアジャストできる。
また、ハンズフリーキーにはリレーアタック対抗機能が、灯火類にはメインスイッチをオフにしてもしばらく残照を届けるカミングホーム機能が搭載されている。プレミアムクラスの一台としての資質も持ち合わせているのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
高難度のコースをリラックスして攻められる
今回、初めて走るアルメリアサーキットは難しかった。緩やかな丘陵地帯に敷設されたコースには、クリッピングポイントが手前からでは完全に見えない場所が点在する。
コースインした自分を励ましてくれたのは、「スロットルを開けずしては速く走れるハズもない」ことを深く理解する、KTMがつくる乗りやすい特性だ。パワートレインやハンドリングはとっつきやすく、排気量を49cc上げて1350ccとしたエンジンの太いトルクを追い風に、4速でタイトコーナーから脱出するのもお手のもの。神経戦を演じることなくコースと車両の学習ができた。
コワモテのわりに乗りやすい1390。車重は軽量だが過敏さはなく、しっとりとした旋回特性を持ち、タイヤをしっかりと路面に張り付けるようなグリップ感が味わえる。基本アンダー傾向なのだが、それが強すぎることもなければ、バイクを寝かすのに反発してくることもない。
ライディングモードは「トラック」。アクセルレスポンス、トラクションコントロールなどの介入度といった各種パラメーターはアラカルトできるのだが、基本のセットでもまだまだ不満を感じるまでには至っていない。その能力がわかると、ブレーキングも次第に奥へとポイントが移っていく。それでもピッチングのつくり方が絶妙で、裏ストレートで260km/hのちょっと手前から一気に3速までシフトダウンするような場面でも、リアの浮き上がりは少なく、安心感をもってトライすることができる。
ポジションはネイキッドのなかでも「ストリートファイター」と呼ばれるジャンルのそれで、ステップ位置は高すぎず、後ろすぎもしないのだが、かなりスポーティー。ハンドルバーの高さもツーリングでギリ疲れない低さとなっている。サーキットでの加速時では、ライダーの体重を使ってフロントまわりに荷重を“追い増し”する必要があるが、ブレーキング時は意外にリラックスしてコントロールに没頭できる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
これならスーパースポーツだって追い回せる
エンジンは力強い。クリップから外の縁石めがけ、3速・パーシャルの状態から全開にすれば、標準装備のハイグリップタイヤ「ミシュラン・パワーGP」ですらたまらず軽く尻を振るようなダッシュを見せる。前輪が軽くなり、猛然とした加速は1万rpmまで遠慮なく続く。その勢いは4速、5速とギアをつないでも衰える印象がない。1290時代のエンジンは軽快な印象だったが、この豪快なトルク感を伴った加速も魅力的だ。
何度か、コンベンショナルなサスペンションの「R」と「R EVO」とを乗り換えながら走ったが、コーナリング時はもとより、加速時、減速時に感じる姿勢変化の穏やかさがEVOの美点に思えた。さらに「サスペンションプロ」というオプションを選択すれば、加速時、減速時、旋回時といった場面ごとに、サスペンションの減衰特性を伸び側、圧側それぞれで調整できる。
極端なことを言えば、このアルメリアサーキットを攻め倒すなら「ホンダCBR1000RR-R」的なバイクが適任だ。しかし、セッティングリテラシーを強化したいというライダーなら、この乗りやすさ、わかりやすさを持つネイキッドが最適だろう。むしろトラックデイなどのイベントなら、簡単にスーパースポーツすらカモれるに違いない。「オレのバイクが負けた」と驚かされるライダーからすれば、やはりこのバイクは、恐るべきビーストなのではないだろうか。
(文=松井 勉/写真=KTM/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1491mm
シート高:834mm
重量:212kg
エンジン:1350cc水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:190PS(140kW)/1万0000rpm
最大トルク:145N・m(14.8kgf・m)/8000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、WMTCモード)
価格:269万9000円

松井 勉
-
インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)【海外試乗記】 2026.2.6 アメリカの老舗、インディアンの基幹モデル「チーフ」シリーズに、新機種「チーフ ヴィンテージ」が登場。このマシンが、同社のラインナップのなかでも特別な存在とされている理由とは? ミッドセンチュリーの空気を全身で体現した一台に、米ロサンゼルスで触れた。
-
スズキeビターラZ(4WD)/eビターラZ(FWD)【試乗記】 2026.2.5 スズキから初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」がいよいよ登場! 全長4.3mで、航続距離433~520km(WLTCモード)、そして何よりこのお値段! 「By Your Side」を標榜(ひょうぼう)するスズキ入魂のBEVは、日本のユーザーにも喜ばれそうな一台に仕上がっていた。
-
日産エクストレイル ロッククリークe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.2.4 「日産エクストレイル」に新たなカスタマイズモデル「ロッククリーク」が登場。専用のボディーカラーや外装パーツが与えられ、いかにもタフに使い倒せそうな雰囲気をまとっているのが特徴だ。高速道路とワインディングロードを中心に400km余りをドライブした。
-
フェラーリ849テスタロッサ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.2.3 フェラーリの新型スーパースポーツ「849テスタロッサ」は、スペシャルモデル「F80」に通じるデザインをまとい、歴史的な車名が与えられている。期待高まる、その走りは? スペインで試乗した西川 淳の第一報。
-
レクサスRZ550e“Fスポーツ”(4WD)【試乗記】 2026.1.31 レクサスの電気自動車「RZ」が大型アップデートを敢行。特に今回連れ出した「RZ550e“Fスポーツ”」は「ステアバイワイヤ」と「インタラクティブマニュアルドライブ」の2大新機軸を採用し、性能とともに個性も強化している。ワインディングロードでの印象を報告する。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”(前編)
2026.2.8思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「トヨタ・カローラ クロス“GRスポーツ”」に試乗。人気の都市型SUVに、GRのデザイン要素と走りの味つけを加味した特別なモデルだ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
無限N-ONE e:/シビック タイプR Gr.B/シビック タイプR Gr.A/プレリュード【試乗記】
2026.2.7試乗記モータースポーツのフィールドで培った技術やノウハウを、カスタマイズパーツに注ぎ込むM-TEC。無限ブランドで知られる同社が手がけた最新のコンプリートカーやカスタマイズカーのステアリングを握り、磨き込まれた刺激的でスポーティーな走りを味わった。 -
インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)【海外試乗記】
2026.2.6試乗記アメリカの老舗、インディアンの基幹モデル「チーフ」シリーズに、新機種「チーフ ヴィンテージ」が登場。このマシンが、同社のラインナップのなかでも特別な存在とされている理由とは? ミッドセンチュリーの空気を全身で体現した一台に、米ロサンゼルスで触れた。 -
ホンダの「Hマーク」がいよいよ刷新! ブランドロゴ刷新の経緯とホンダのねらい
2026.2.6デイリーコラム長く親しまれたホンダ四輪車のロゴ、通称「Hマーク」がついに刷新!? 当初は「新しい電気自動車用」とされていた新Hマークは、どのようにして“四輪事業全体の象徴”となるに至ったのか? 新ロゴの適用拡大に至る経緯と、そこに宿るホンダの覚悟を解説する。 -
ライバルはGR? ホンダが発表したHRCのモデルラインナップとその狙いに迫る
2026.2.5デイリーコラムホンダが東京オートサロン2026で、HRC(ホンダ・レーシング)の名を冠したコンセプトモデルを6台同時に発表した。ホンダのカスタマイズカーとして知られるモデューロや無限との違い、そしてHRCをメジャーシーンに押し上げる真の狙いを解説する。 -
スズキeビターラZ(4WD)/eビターラZ(FWD)【試乗記】
2026.2.5試乗記スズキから初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」がいよいよ登場! 全長4.3mで、航続距離433~520km(WLTCモード)、そして何よりこのお値段! 「By Your Side」を標榜(ひょうぼう)するスズキ入魂のBEVは、日本のユーザーにも喜ばれそうな一台に仕上がっていた。













