予断を許さぬ氷上ドライブ 「ボルボEX30」でスウェーデンのカントリーロードを行く
2024.03.27 デイリーコラム世界遺産の街を走っていた
この前「ボルボEX30」をスウェーデンの凍った湖の上で試したとリポートした(参照)が、実はホテルからの移動などで周辺の一般道もドライブできた。
スウェーデンに限らず欧州ならどこでも似たような感じかもしれないが、ルーレオには小さな集落が点在していて、多くの道路はそれらを結ぶように走っている。制限速度は目まぐるしく変わり、70km/hだったのが、集落が近づくにつれて50km/h→30km/hと下降。集落を過ぎると再び70km/hに戻るという具合である。
30km/h制限の区間にはスピードバンプが設けられているばかりか、ご丁寧にスピードカメラまである。だからなのか住人が律義なのかは分からないが、こちらでは猛スピードでぶっ飛ばすような人は見かけなかった。その代わり70km/hのところを65km/hくらいで走っているとぴったりと後ろにつけられる。その追従ぶりは最新のACCも顔負けの執念深さである。
ちなみにこのあたりには赤い家ばかりが立ち並んでおり、ネーデルルーレオ教会を中心とした「ガンメルスタードの教会街」という世界遺産だったようだ。ドライブに集中しすぎたのと、スピードカメラに注意を払いすぎたために立ち寄りそびれてしまった。
道幅をいっぱいに使える
こうした集落を縫って走る道は除雪が行き届いているが、もちろんそうでない道もある。例えば郊外にある凍った湖への道などはガリガリに凍りついていた。ここを「ボルボEX30ツインモーター パフォーマンス」で走った。湖上で乗ったのとは違う個体だが、仕様はまるで同じ。タイヤも同じスパイク付きの「ミシュランX-ICEノース4」だ。
除雪がされていないだけあって、湖に向かう取材チームのほかにクルマはまるで通らない。そしてルート沿いにほとんど家がないため、ここは制限速度が80km/hに設定されているのだ。
スパイクタイヤ装着車とはいえ、初めてのクルマで初めての道、しかも凍結路面を80km/hで走るのは怖い。後ろにぴたりとつける後続車もいないため最初はゆっくりと走り始めたのだが、慣れるにつれて徐々にスピードが増してくる。雪国にお住まいの方ならご承知のとおり、こうした地域では路肩に積み上げられた雪によって冬場は道幅が狭くなる。最初はそれが恐怖感を招いていたのだが、少し走った後にEX30は前方と前側方の視界がとても良好で、道幅をいっぱいに使えることに気がついた。メーターパネル(センタースクリーンに統合)がないだけで、こんなにも前がよく見えるものかと驚いた。前にも書いた強力なシートヒーターが心と体を温め、勇気づけてくれたのも理由のひとつに違いない。
安心・安全が一番
いくら凍結路面でもスケートリンクのようにどこまでもツルツルなわけではない。氷の上に降った雪がまた凍り、それが層を形成。滑らかどころかどちらかといえばデコボコのひどい道である。EX30の足まわりはこうした路面からの入力をすべて受け止め、われわれの体を衝撃から守ってくれる。路面が路面だけにそれなりに揺すられることはあったが、ショックアブソーバーが底づきするようなことはただの一度もなかった。
デコボコなだけでなく、時には氷の下のアスファルトや砂利が表面に顔を見せていることもある。何しろ自然界のことなので、すべてが想像したとおりには運ばない。左タイヤがアスファルト、右タイヤは氷というひやりとするような場面でも、EX30は優れたトラクションコントロールによって万全のスタビリティーを見せてくれる。普通に走って普通に安心・安全が享受できる。これこそがEX30の真骨頂といえるだろう。
湖に向かう道のりも楽しかったが、氷上で限界性能を試した後の帰り道はさらに自信をもってドライブできた。スパイクタイヤ装着車であったことには留意せねばならないが、ボルボEX30は日本の道でも季節を問わずに活躍してくれるに違いない。ちなみにこの日の気温は0℃前後。制限速度に合わせて走っている限りEX30の燃料消費率は極めて良好で、きちんと計測できたわけではないが、センタースクリーンには15~16kWh/100km(約6.3~6.7kWh/km)と表示されている時間が長かったように思う。スリップのない平滑な舗装路であればまだまだ伸びるはずだ。
(文=藤沢 勝/写真=ボルボ・カーズ/編集=藤沢 勝)

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
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