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ボルボEX30ツインモーター パフォーマンス(4WD)

頼りになるぜ! 2024.03.25 試乗記 藤沢 勝 ボルボの新しい電気自動車「EX30」が日本でも話題だが、2024年中には待望の4WDモデルも発売される予定だ。スウェーデン北部の凍った湖の上といういささか特殊な環境下ではあるものの、国内導入を前にその仕上がりを試してきた。
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ボルボ史上最速モデル

幹線道路から一歩脇に入ると路面は氷に覆われ、凍りついた河川の上では人々がアイススケートやスノーモービルに興じている。スウェーデン北部の都市ルーレオには、冬はそうした景色が広がっている。

スカンジナビア半島の付け根に位置するこの街でボルボEX30に乗った。EX30はすでに日本でも発売されているし、何を今さらと思われるかもしれないが、まあとにかく乗ってきたのである。ドライブの時間はたっぷりと与えられていたが、それでも飛行機に乗っていた時間のほうが圧倒的に長かったのは間違いない。日本とは1万2000kmほど離れているらしい。

われわれがドライブしたのはEX30の4WDモデル、すなわち「ツインモーター パフォーマンス」というグレードである。日本には2024年内に導入とのことなので、次の冬がやってくる前にひととおりの使い勝手と、氷上性能はどうか、極限の寒冷地での使用感はどんなものかをリポートせねばならない。

EX30ツインモーター パフォーマンスはフロントに最高出力156PS、リアに272PSのモーターを搭載。合わせて428PSものパワーを誇るが、これらが全長4235mmという「フォルクスワーゲン・ゴルフ」クラスのボディーに積まれているところに価値がある。0-100km/h加速のタイムは思わず二度見する3.6秒で、これはボルボ史上最速だという。

スウェーデンのルーレオで試乗した「ボルボEX30」は4WDの「ツインモーター パフォーマンス」。日本には2024年内に導入される予定だ。
スウェーデンのルーレオで試乗した「ボルボEX30」は4WDの「ツインモーター パフォーマンス」。日本には2024年内に導入される予定だ。拡大
「EX30ツインモーター パフォーマンス」はフロントに最高出力156PS、リアに272PSのモーターをそれぞれ搭載。システム出力428PSを発生する。
「EX30ツインモーター パフォーマンス」はフロントに最高出力156PS、リアに272PSのモーターをそれぞれ搭載。システム出力428PSを発生する。拡大
ルーレオで試乗した車両はどれもスパイクタイヤだった。この個体が履いていたのは「ミシュランX-ICEノース4」で、コツコツと独特の走行音を立てる。
ルーレオで試乗した車両はどれもスパイクタイヤだった。この個体が履いていたのは「ミシュランX-ICEノース4」で、コツコツと独特の走行音を立てる。拡大
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シンプル極まりないインテリア

駆動用リチウムイオンバッテリーの総容量は69kWh(使用可能分は64kWh)で、WLTPモード計測による一充電走行距離は445-450km。超高速モードのない日本のWLTCモードであれば500kmは超えるものと思われる。充電を試すチャンスはなかったが、充電ステーションを目的地に設定すると、そこまでの道中で予熱、または予冷してバッテリーが充電されやすい温度に最適化する機能が付いている。バッテリーは熱すぎても冷たすぎても思うようにはいかないのだ。

「Google搭載」(という言葉の是非はともかく)の12.3インチセンタースクリーンにすべてを詰め込んだ内装は、殺風景というくらいシンプルなしつらえだ。何しろメーターパネルまでセンタースクリーンの上部に統合している。ただし、スクリーンの配置が適切なので、運転中でも視界の端にデジタル表示の速度計を捉え続けることは容易である。

さすがに各種項目の設定は難しいが、そもそもドアミラーの調整(これもスクリーンに統合)などは走行前に済ませておくのが望ましい。ハザードはスクリーンの左端のほかに、ルームミラーの付け根のあたりのスイッチでも操作できる。ラジオやオーディオの選局・選曲には音声コマンドが便利だ。BEGINに『それでも暮らしは続くから 全てを 今 忘れてしまう為には 全てを 今 知っている事が条件で 僕にはとても無理だから 一つずつ忘れて行く為に 愛する人達と手を取り 分け合って せめて思い出さないように 暮らしを続けて行くのです』という曲があるようだが、こういうのを聴きたい場合はどうしたらいいのだろうか。日本語が通じる日本仕様であらためて試してみたい。

駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は69kWh。WLTPモードの一充電走行距離は445-450km。
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は69kWh。WLTPモードの一充電走行距離は445-450km。拡大
ダッシュボードにあるのはステアリングホイールと12.3インチの縦型センタースクリーンのみという潔さ。シンプルさを極めたために広く見えるという利点がある。
ダッシュボードにあるのはステアリングホイールと12.3インチの縦型センタースクリーンのみという潔さ。シンプルさを極めたために広く見えるという利点がある。拡大
ドアミラーの調整もセンタースクリーンを介して。左右を選んでステアリングスイッチでポジションを合わせる。
ドアミラーの調整もセンタースクリーンを介して。左右を選んでステアリングスイッチでポジションを合わせる。拡大

ステアリングは9時15分で握れ

河川が凍っているくらいなので、当然ながら湖も凍りついている(港も凍る)。今回はルーレオ近郊の湖の上に用意された特設ハンドリングトラックでEX30ツインモーター パフォーマンスの限界性能を試してみようという腹づもりである。全長3.7kmにも達するトラックは全部で75のコーナーで構成。ストレートセクションはないものの、コーナーをうまくつなげて走れば80km/hくらいまでは加速できる。ちなみに、こちらで試せたのはすべてスパイクタイヤ装着車である。

コースインの前にボルボのスタッフから軽いレクチャーがあった。「ステアリングは9時15分の位置で握れ。必ずだ」(意訳)と強い口調でまくしたてる。ちょっとワイルドな人々がしているような、リムの中央上部を片手で持つ運転は厳禁だという。というのも「クラッシュしてエアバッグが展開したときに、おでこに腕時計のあとが付いちゃうだろ」(意訳)と、つまりは氷点下で凍えるわれわれをまずはハートから暖めてくれようという配慮である。余談が過ぎた。

何しろスパイクタイヤなので、氷の上でもダッシュは鋭い。ステアリングを切ったままでグイッと踏み込めばリアは流れるが、滑り出しが分かりやすく、滑ったあとも車体がきれいに流れていく。それに事前に予測したよりもグリップの回復がずっと早い。スパイクタイヤの効果はもちろんだが、車体バランスが優れていなければこういう動きにはならないはずだ。

ルーレオ近郊の凍った湖の上で「EX30ツインモーター パフォーマンス」をドライブ。優れたトラクション能力とスパイクタイヤのおかげで自由自在に走れる。
ルーレオ近郊の凍った湖の上で「EX30ツインモーター パフォーマンス」をドライブ。優れたトラクション能力とスパイクタイヤのおかげで自由自在に走れる。拡大
ダッシュボードの奥=フロントウィンドウの下にはサウンドバーが備わっている。その代わりにフロントのドアパネルからはスピーカーが省かれている。
ダッシュボードの奥=フロントウィンドウの下にはサウンドバーが備わっている。その代わりにフロントのドアパネルからはスピーカーが省かれている。拡大
オーディオのセッティング画面。細かな調整が可能なイコライザーも備わっている。
オーディオのセッティング画面。細かな調整が可能なイコライザーも備わっている。拡大

専用プラットフォームの効果は如実

EX30はプラットフォームに電気自動車専用の「SEA(サステナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャー)」を使う。ここが先に登場した「C40リチャージ/XC40リチャージ」との違いで、SEAのほうが圧倒的に軽量で前後重量配分にも優れているとボルボのスタッフが教えてくれた(ツインモーターではほぼ50:50らしい)。だから滑ったあとのコントロールがしやすいし、滑っても内側に巻き込むような姿勢になりづらい。スリップの収まりが早いので、どんどん攻め込んでいけるのだ。

EX30のツインモーターは基本的に後輪駆動が主体で、必要なときにだけ前輪も駆動するようになっている。もちろん今回のような氷上ではほとんどのシーンで前輪も駆動しているはずだが、センタースクリーンで「パフォーマンスオールホイールドライブ」にチェックを入れると、いつでも4WDで走るようになる。確かにダッシュ力は増すものの、お任せの4WDでも何の不満も感じなかったというのが正直なところである。このあたりは日本のスタッドレスタイヤ装着車であらためて試してみたい。

あと、シートヒーターがとても優秀だったこともぜひ記しておきたい。寒がりの私は常に一番強いレベルにしていたのだが、代わりばんこで運転していたドライバーが乗り換えるたびに「熱い!」と腹を立てていた。熱いと感じたら設定温度を下げればいいんだし、走り以外も誠に心強いEX30である。

(文=藤沢 勝/写真=ボルボ・カーズ、webCG/編集=藤沢 勝)

先に登場した「C40リチャージ/XC40リチャージ」がエンジン車と共通のプラットフォームを使うのに対し、「EX30」は電気自動車専用シャシーを採用している。
先に登場した「C40リチャージ/XC40リチャージ」がエンジン車と共通のプラットフォームを使うのに対し、「EX30」は電気自動車専用シャシーを採用している。拡大
常時4WDになる「パフォーマンスオールホイールドライブ」の設定もセンタースクリーンで。出足の鋭さが明らかに変わる。
常時4WDになる「パフォーマンスオールホイールドライブ」の設定もセンタースクリーンで。出足の鋭さが明らかに変わる。拡大
荷室の容量は318リッター。2人分の海外取材用の荷物と普通充電用のケーブルが収納できた。
荷室の容量は318リッター。2人分の海外取材用の荷物と普通充電用のケーブルが収納できた。拡大

テスト車のデータ

ボルボEX30ツインモーター パフォーマンス

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4235×1835×1550mm
ホイールベース:2650mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:156PS(115kW)
フロントモーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)
リアモーター最高出力:272PS(200kW)
リアモーター最大トルク:343N・m(35.0kgf・m)
システム最高出力:428PS(315kW)
システム最大トルク:543N・m(55.4kgf・m)
(前)245/40R20 99T XL/(後)245/40R20 99T XL(ミシュランX-ICEノース4)
一充電走行距離:445-450km(WLTPモード)
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロード&トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

ボルボEX30ツインモーター パフォーマンス
ボルボEX30ツインモーター パフォーマンス拡大
藤沢 勝

藤沢 勝

webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。

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