フォーミュラE世界選手権 第5戦東京ラウンド「Tokyo E-Prix」観戦記
2024.04.01 画像・写真2024年3月29日・30日にわたって開催された「ABB FIAフォーミュラE世界選手権」の第5戦東京ラウンド「Tokyo E-Prix」。日本初開催のフォーミュラE、そして日本初開催の本格公道レースは、webCG編集部員の目にどう映ったのか? 現場で感じた「よかったところ」「不満なところ」を、写真を交えて率直に語る。
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1/62「Tokyo E-Prix」の決勝当日、2024年3月30日早朝の東京国際展示場の様子。普段、モーターショーや各種発表会、説明会などで来る機会の多いビッグサイト。そこにレース観戦で来るというのだから、なんとも不思議な気分だ。
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2/62会議棟の柱(?)にでーんと貼られたフォーミュラE東京大会の懸垂幕。設営日や29日の記者会見、フリー走行をパスした記者は、これを見てようやく「ああ、ホントにここでやるんだ」と実感が湧いた。
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3/62まずはアクレディテーションセンターでメディアパスを受け取る。……のだが、このセンターの場所が分からず、誘導スタッフも場所を知らず、迷子になっている報道関係者が散見された。かくいう私もその一人。次回以降は、もう少し分かりやすい案内をお願いします(笑)。日本のメディアには「北コンコース1Fのレストランですよ」って伝えるだけで分かると思うので。
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4/62東展示場4の屋内に設けられた、「ファンビレッジ」のゲート。りんかい線やゆりかもめの駅から来た人は、実質的にここがフォーミュラE東京大会の“入り口”だったと思う。それにしてもこのゲート、なんだかレースの観戦というより、リアル脱出ゲームみたいなイベントに遊びに来たような気分になる。
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5/62「ファンビレッジ」のなかはこんな感じ。イベント広場兼展示エリア兼休憩スペースといった雰囲気だが、東展示場の3ホールをぶち抜きにしているので、まあ広い!
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6/62ゲートの先で真っ先に来場者を迎えていたのは、フォーミュラEのフォトスポットだが……。
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7/62来場者のカメラ/スマホが活躍したのは、むしろこちら……というかコイツに向けてだろう(笑)。ここはいわゆるキッズエリアで、塗り絵や落書きのコーナーに加え……。
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8/62電動のキッズカートも用意! 記者は結構早い時間から会場を訪れていたのだが、カート場には早くも家族連れの列ができていた。
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9/62フォーミュラEのドライビングシミュレーターのコーナー。ちまたでは「電気自動車は音がしなくてツマラン!」という人もいるけれど、バーチャルとはいえフォーミュラEの走りを体感した人は、どう感じただろう。
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10/62こちらはフォーミュラEと日本のカスタムショップ、リバティーウォークがコラボレーションして製作したフォーミュラカー。GEN3の(つまり現行の)フォーミュラEのレーシングカーをベースに、リバティーウォークがカスタムを施したものだ。
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11/62フォーミュラEに参戦している自動車メーカーもブースを出展。DSペンスキーとマセラティMSGレーシングにパワートレインを供給するステランティスは、DSオートモビルの「DS 4」を展示していた。
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12/62ポルシェは東京大会専用にピンクのカラーリングを施したレーシングカー「99Xエレクトリック」と、電気自動車の「タイカン」を展示。派手な展示に、皆が足を止めていた。
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13/62唯一の日本勢となる日産はというと、フォーミュラEに参戦する全11チームをイメージしたという着物を展示。……あれ、クルマの展示はないの?(答え合わせは後ほど)
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14/62フォーミュラEの冠スポンサーにもなっているABBは、電力やオートメーション関連の事業を手がける欧州の重工業メーカー。ファンビレッジでは自慢の急速充電器の展示に加え、全自動ロボットを使ったカーペイントの実演も行っていた。
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15/62こちらのムーディーな空間は何? というと、携帯端末の充電スポット。場内の移動に疲れたパパ&ママは(とにかく広くて歩くんだよ! スマートモビリティーはどこ行った?)、ここでスマホと体力を充電できるというわけだ。
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16/62充電といえば、ファンビレッジにはバーも開設されていた。アルコールは心の清涼剤。でも飲酒運転は厳禁なので、公共交通機関で来ていない人はNGですよ。
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17/62東展示場を抜け、いよいよ観戦エリアへ。
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18/62看板でコース図をチェック。フォーミュラE東京大会のコースは、東京国際展示場の東棟屋外臨時駐車場と公道(青梅・有明南連絡線/有明南縦貫線)、公道とその駐車場を結ぶ取り付け道路をつないだもの。ホームストレートとグランドスタンドは、東棟屋外臨時駐車場に設けられている。
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19/62グランドスタンドからホームストレートを眺める。特設のゴールブリッジの向こうには、見慣れた有明のビル群が。この日常と非日常のコントラストも、市街地サーキットのだいご味よ。
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20/62グランドスタンドの裏は、巨大モニターによる観戦エリア&フードコートとなっていた。お祭りならではの味の濃いフード(笑)とビールをやりながら、レースの行方を追えるというわけだ。
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21/62ちなみに、グランドスタンド裏のお店やスクリーンの電力は、こちらの水素エンジンでまかなっているのだとか。
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22/62広場には、フォーミュラEの各開催地の方角と距離を示した看板も。
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23/62会場の各所では、日産の応援団が来場者に応援旗を配っていた。
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24/62橋を渡ってホームストレートの向かい側へ。それにしても、このコースの近さ、そして狭さよ! この至近距離でフォーミュラカーがかっ飛んでいくのを見ると思うと……。
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25/62ピットの裏側は、パドックとホスピタリティーエリアが一緒くたになったようなスペースとなっている。
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26/62各スペースに飾られた青竹と唐傘に、「そういえば、記者会見が行われた29日は雨だったよな」と思い出す。決勝当日は晴天に恵まれて、本当によかった。
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27/62パドックの裏には、競技車両のパーツがふつうに置かれていてびっくりする。「ボディーはワンメイクなので、見られても問題ない」ということなのだろうが、F1やルマンと比べて、なんだかとってもおおらかな雰囲気だ。個人的に大好きだった、かつてのインディジャパンを思い出す。
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28/62ピットレーンに出て、各チームのパドックを眺める。フォーミュラEは他のレースでは見られないようなチームが出場していて、個人的にとても興味深い。写真右手はマセラティMSGレーシングのパドック。
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29/62こちらはDSペンスキーのパドック。フランスの、それもあまりモータースポーツのイメージがないDSと、アメリカのゴリゴリのレーシングチームがタッグを組んでいて面白い。
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30/62アンドレッティ フォーミュラEチームのパドック。……アンドレッティの挑戦を拒否したF1の判断を、ワタシは絶対許しません。参戦を認めるまで根に持ちますよ(笑)。
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31/62ジャガーTCSレーシングのパドック。SUPER GTやスーパーフォーミュラでも活躍してきたニック・キャシディ選手は、今のところポイントリーダーで今シーズンを引っ張っている。
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32/62皆大好き、タグ・ホイヤー ポルシェ フォーミュラEチームのパドック。レース前までは「ピンク色のレーシングカーって、どうなの?」と思っていたが、実際には結構きれいで格好よかった。……まぁ、「ポルシェ917」にも“ピンク・ピッグ”なんてマシンがありましたもんね。
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33/62ニッサン フォーミュラEチームのパドック。レース前までは特にどうとも思っていなかったのに、いざパドックやマシンを見ると、日本のメーカー/チームを応援してしまう私はやっぱり日本人なんだなぁと思う。
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34/62ニッサン フォーミュラEチームのレーシングカーは、日本大会では桜をちりばめた特別なカラーリングが施されていた。
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35/62ほかにも、マヒンドラ(写真)にERTと、インドや中国のチーム/サプライヤーも参戦。こうしたあたりも既存のモータースポーツとはやや趣が違って、パドックは国際色豊かな印象だった。
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36/62コース脇をさらに散策。こちらはフォーミュラEの競技車両に搭載されるバッテリー。全チームにワンメイクで供給されるこのバッテリーは、資料にいわく「持続可能な方法で調達された鉱物で構成」され、「寿命が尽きればリサイクルされる」という。今、ちまたでは電気自動車のバッテリーの回収・リサイクルが喫緊の課題になっているけど、レースカー用バッテリーのリサイクル技術って、それに応用できないのかな?
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37/62こちらのテントで休憩中なのは、フォーミュラEのセーフティーカー。電気自動車の「ポルシェ・タイカン ターボS」である。
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38/62観戦エリアから展示場に戻り、周辺を散策。ビッグサイトではフォーミュラEの開催に合わせて、東京都が「E-Tokyo Festival 2024」なるイベントを実施。電動化技術の展示や体験会、レースのパブリックビューイングなどが行われていた。
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39/62……で、ここでフォーミュラEの会場にはなかった日産のレーシングカーと物販エリアを発見! これ、レースを観戦しに来た日産ファンの何割が気づけたでしょう? 展示の場所は、ホントにここでよかったの?
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40/62「E-Tokyo Festival 2024」では、未来のモビリティーの体験試乗も可能だった。こちらはホンダの「UNI-ONE(ユニワン)」。ハンズフリーで運転できる、着座型のパーソナルモビリティーだ。
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41/62簡単な重心移動だけで操作できる「ホンダUNI-ONE」は、ご覧のとおり小さな子供でも運転が可能。ハンズフリーなので、歩行者と手をつないでの移動もできるという。ホンダでは近い将来の社会実装&市販化へ向け、検証を進めているという。
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42/62柵のなかをしずしずと走るモビリティーに、この日2万8499歩を歩いた記者は思った。「いや、それフォーミュラEの観戦エリアや、駅からの動線に提供してくれや。報道関係者はガマンすりゃいいけど、来場客の皆さんには、ちょっとでも快適に楽しんでもらおうよ」。……まぁ、ファンビレッジと観戦エリアの間には、電動のゴルフカートが細々と通っていたようですが。
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43/62そうこうしているうちに、フォーミュラEの予選がスタート。予選ではまずドライバーをA、Bの2グループに分けてタイムアタックを行い、各グループの上位4名(全8名)がクオーターファイナルに進出。その後はトーナメント方式、すなわち“一対一”でタイムアタックを行い、勝ち残った1名がポールポジションにつくこととなる。写真はファンビレッジにて、スクリーン越しに予選を見守る来場者の様子。
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44/62予選のファイナルは、日産のオリバー・ローランド選手とマセラティのマクシミリアン・ギュンター選手(写真)の勝負に。結果は最後のセクターで逆転したローランド選手が勝利! 会場の各所で、日産のファンから歓声が上がった。
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45/62予選が終わると、程なくしてグランドスタンド裏には長蛇の列が。ピットレーンでサイン会があるのだ。
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46/62予選で劇的な逆転勝利を挙げたオリバー・ローランド選手(奥)と、チームメイトのサッシャ・フェネストラズ選手(手前)。よく見ると、日産はサイン色紙も桜色だ。
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47/62ミニチュアのヘルメットにサインをするのは、DSペンスキーのストフェル・バンドーン選手。F1でも戦ったことのある選手で、2021-2022年シーズンにおけるフォーミュラEの年間チャンピオンだ。
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48/62予選のファイナルで惜敗したマセラティのマクシミリアン・ギュンター選手(手前)。チームメイトのユアン・ダルバラ選手(奥)は、今季のフォーミュラEで唯一の新人ドライバーだ。
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49/62熱心な様子でサインを書くのは、日本では「世界耐久選手権のトヨタのドライバー」として知られている、エンヴィジョン レーシングのセバスチャン・ブエミ選手。2015-2016年シーズンのフォーミュラEの年間チャンピオンで、開催初年度から参戦を続ける古つわものである。
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50/62サイン会の裏では、各チーム、マシンの最終調整に余念がない。写真は去年の年間ランキング2位、ニック・キャシディ選手のマシン。
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51/62サインを求めるファンの間を縫って、タイヤが運ばれていく。フォーミュラEでは、タイヤはハンコックのワンメイク。原材料の26%は天然素材またはリサイクル素材となっている。
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52/62サイン会の片隅で、皆がなにかを熱心に写真に撮っている。なんだろうと思って見に行ったら、ピットレーンの出口だった。確かにこれは、貴重な光景だ。ワタシも思わず写真に収めてしまった。
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53/62サイン会も無事に終わり、いよいよマシンがコースに登場。もろもろのセレモニーが終わると、各車タイヤをかいてスターティンググリッドに着く。コース上に湧き上がる白煙に、見ているほうもテンションだだ上がりだ。
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54/6213時4分、いよいよ決勝がスタート。決勝は33周+αの短期決戦!
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55/62カメラマンではない記者が入れるエリアは限られていたので、写真がストレートエンドからのものに限られる点はご容赦を。レースをリードしたのはポールポジションからスタートした日産のオリバー・ローランド選手だ。
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56/62狭いコースではマシンがクラッシュすることもしばしば。フォーミュラEでは、レース中にセーフティーカーが入ると周回が延長され、この東京大会でも2周が追加されることとなった。写真はパスカル・ウェーレイン選手の「ポルシェ99X」。接触でひしゃげたフロントウイングが痛々しい。
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57/62トップ争いは長く膠着(こうちゃく)していたが、24周目にマセラティのマクシミリアン・ギュンター選手が日産のオリバー・ローランド選手から首位を奪取。日産の応援席から悲鳴が!
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58/62両選手による首位戦いは最後まで続いた。最終ラップにはローランド選手が3度にわたりオーバーテイクを試みるも、ギュンター選手はガッチリそれを抑え込み、自身&マセラティの今シーズン初勝利を達成。同時に、フォーミュラE東京ラウンド初の勝者となった。
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59/62レースが終わると、ファンビレッジでは盛大な表彰式が。表彰式というよりはステージイベントといった趣で、特に“パリピ”でもない記者は、花火と巨大スクリーンの演出に、例えではなく本当に頭がクラクラした。
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60/62フォーミュラEの次戦は、4月13日・14日にイタリア・ミサノで行われる。
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61/62最後に、人生初のフォーミュラE観戦の印象を述べると、レース自体はお世辞抜きに面白かったし、迫力があった。最初は「エンジン音のないレースなんて!」と思っていたのだが、観客席からコースが近いこともあって、マシンの風圧がすごいのなんの。そのうちにタイヤのスキール音や電動パワートレインの音にもドキドキするようになる。またイベント全体を見ても、フリー走行、予選、決勝ととにかくテンポがよく、気持ちがタレることなく観戦を続けられたのは◎。後は、ファンビレッジのコンテンツのさらなる充実や、併催・同時開催のイベントとの連携(観戦エリアからの動線を含む)がもっとうまくいけば、来場者にお値段以上の満足を感じてもらえることでしょう。なにせほら、“一般”(年齢制限などの条件なしという意味)だと安くても1万8000円、高い席だと8万4500円のチケットですから……。
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62/62帰りがけ、駅へと通じる「やぐら橋」から閉鎖された「東京ビッグサイト前」の交差点を眺める。あの向こうをフォーミュラカーが走っていたのかと思うと、なんだか不思議な気分である。これを機に、日本でもさまざまなかたちでモータースポーツが開催されるようになるといいですね。