第3回:仕事に&私事に本気で使う!
4泊5日のオーナー体験で感じた「ルノー・カングー」の○と×
2024.05.02
ルノー・カングー日常劇場
見せてやるよ、真の“日常劇場”をな!
当連載の過去記事(これとこれね)を見て、記者は大いに嘆息した。オイオイ、この連載は「日常劇場」だぜ? だというのにあなたがたは、水族館に行ったり酒を買いに行ったり。それがwebCGの日常か? おたわむれも大概にしてほしいもんである(参照)。
ここはひとつ、webCGの防波堤、良識の最終防衛ラインたるワタクシが腕をまくりましょう。スケジュールを見れば、ちょうど今日から4泊5日、まるっとクルマが空いてる。仕事に私事にバキボキに使い倒し、まるはだかにしてくれるわ。
【2024年4月11日】
明日は「オートモビル カウンシル」の取材があるので、さっそくアシに使わせていただこう。尊い勤労を終え、機械式駐車場からカングーを呼び出して優雅に帰宅。そして車内でキーケースをなくした。
みずから誇るのもどうかと思うが、小物を紛失することにおいて私の右に出る者はない。某国産メーカーの広報さんなどは、試乗・撮影からwebCGチームが帰るたびに「ほったさん、スマホ大丈夫ですよね!?」とクギを刺すほどだ。しかし、今回は私だけの責任ではあるまい。なにせこのクルマ、収納スペースが多すぎる。ドアポケットにない、センターコンソールにない、アームレストにない、アッパーグローブボックスにない、オープントレーにない……。天井を見ればオーバーヘッドシェルフもあるが、あんなところにモノを入れたら一生出てこないだろう。カングーオーナーの皆さん、年に一度はシェルフの奥をのぞいてみましょう。
ちなみに記者のキーケースは、センタークラスターとシフトセレクターの間の、狭いポケットから出土した。こんなところに置いていたのか、1時間前の俺よ。深夜のコインパーキングで30分ほどゴソゴソしていたが、警察を呼ばれないで本当によかった。
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狭いところでも意外と使いやすい
【2024年4月12日】
オートモビル カウンシルの取材は「朝8時からOK!」とのことだったので、朝ごはんタイムも加味して6時には拙宅を出た。
ちなみに、記者が愛顧する最寄りのコインパーキングは、ちょっと狭くて入/出庫が面倒。そこで測ったカングーの取り回しはというと、まぁ普通でした。最小回転半径は5.6mと、国産中型ミニバンと同じくらい。2度3度と切り返しは必要なものの、視界が広くて見切りもいいのでそれほどストレスはない。観音開きのテールゲートゆえ後方視界はお察しのとおりだが、それもバックモニターが付いているので無問題だった。
時は飛んで、「この時間でももう明るいし、すっかり春だなぁ」なんて思いつつ幕張着。ちょっと早く着きすぎたので、車内でちょいと昼寝(朝寝?)する。前席のリクライニングが、ゴリゴリとダイヤルを回さないでも一発でシートを倒せるタイプでありがたかった……zzZ。
そんな怠惰な私も、いざ取材では幕張メッセの10・11ホールを奔走。「ルノーのブースはどこかなぁ」(笑)なんてひとりごちつつ、カメラが火を噴くほどの激写に次ぐ激写。撮影を終えゾンビと化してカングーに戻ったところ、隣の駐車枠に“お隣さん”されててガックリきた。なんでやねん。ほかにいくらでも枠は空いとるやんけ。しかしカングーのリアドアはスライド式なので無問題。まぁ、運転席に乗り込むときはアクロバチックな姿勢を強いられましたがね。どうせならフロントドアもスライド式にしたらいいと思うのだけど、いかがでしょう? ルノーさん。
【2024年4月13日】
週末だが、オートモビル カウンシルの記事制作があるので出社。よく「在宅ワークしないの?」と言われるけれど、わが家のネット環境、ポケットWi-Fiなんです。ついでにクリーニング屋さんに冬物を預けようと思い立ち、衣類を積もうとテールゲートを開けた。
「……?」
カングーのテールゲートに、ノッチなんてついてたっけ? 前のは「べろーん」って無抵抗に全開になった気がするけど。念のため“川崎のルノー博士”こと某カメラマンに確認したところ、「新型カングーからノッチがついたんだよ。ついでに、フロントドアはノッチが2段階から3段階に増えてるよ」とのこと。細かいところだけど、進化しているのだなぁと感服した。
しかし、それにしてもこの荷室の広さよ。仕事用カバンと衣類を詰めたズダ袋を置いても、ご覧のとおりの侘び寂び(わびさび)である。正直なところ、アウトドア趣味もない独身野郎には、この荷室は完全にオーバースペックだった。
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コレ便利だけど、気づきにくくない?
【2024年4月14日】
当記事のためにカングーでお出かけし、人気のない裏路地で細部を撮影する。そこでようやく、ステアリングコラムにオーディオのコントローラーが生えているのに気がついた。いや、不思議には思ってたんですよ。センタークラスターに音量スイッチがないから。運転中に音量をイジろうとしても、タッチパネルではブラインド操作できないし……。
やっぱりカングーオーナーは幸せファミリーが多いから、助手席の奥さんに頼んだりするのかな。「ハニー、ちょっと音量を上げてくれないかい? 今だけは、サンボマスターのシャウトに酔いしれていたいんだ」「やだわダーリンったら。本当に山口 隆が好きなんだから」なんて破廉恥な会話をしているのだろうか。やってられるか。
……と思っていたら、ちゃんと運転中にも操作できるコントローラーがあった。ルノーは現代社会の孤独なウルフにも優しいのねと、ひとり涙した。
冗談はさておき、撮影を終えたら明日の別の取材のため、出社してロケ用のタイヤ2本を積み込む(俺の土日はどこいった?)。カングーの荷室は広いので、SUV用の大径タイヤも無問題。重ねればシートを倒さずとも積めたろうが、タイヤはホイールつきだったので、キズが付かぬよう用心して平置きにした。
ちなみにだが、弊社関(コードネーム:子煩悩)も触れていたとおり(参照)、カングーのテールゲートはヒンジのロックを外したら180°まで開きます。前の型だとロック解除用のリリースレバーがあったのだが、それは新型ではなくなっていた。コストカットというより、「これなんのレバー?」って触れて、バーン! って開けてしまう人がいたのかもしれない。私のように。
荷物を置いたらキーを編集部に戻し、別のクルマで帰宅する。明日はマーケティングの大和(コードネーム:マダム)が、カングーに乗って現場に来る予定だ。
ダイレクトでリニアなのがいいクルマか?
【2024年4月15日】
撮影現場にて、18時間ぶりにカングーと再会。“首都高の虎”と号する大和のドライビングにも、荷室の積み荷は無事だった(笑)。
もろもろ取材を終え、クルーの皆を見送ったら、今度は記者がカングーを運転して東京に戻る。早朝からのロケに重いホイール付きタイヤの積み下ろし、貧弱貧弱ゥな記者の心身はボロボロだ。そしてつくづく思った。帰路の相方が、カングーでホントによかった。
鈍感な記者は、このかいわいでよく言われる「フランス車の乗り味」というのがよくわからない。わからないのだが、このカングーはなんだか快適だなあと思う。商用バン、あるいはバン派生の乗用ワンボックスといったらまぁリアが跳ねるもんだったが、このクルマではそんなことはない。乗員にとってうれしいのはもちろん、これならきっと、積み荷にも優しいことだろう。繊細な荷物が傷ついたり、荷崩れが起きたり……といったことは、まずないように思われた。
もうひとつうれしかったのが、カングーが“遅い”ことだ。編集部藤沢(コードネーム:競馬新聞)が言うように(参照)、アクセルを踏み込めば十分に速いので、小・中開度では意図的にスロットルの応答をなましているのだろう。
業界のエラい先生方には「業界人たるもの、いつ何時も繊細なペダルワークを心がけるべし」と怒られそうだが、ときにはズボラでもいいじゃないか。にんげんだもの(相田みつをリスペクト)。というか、取材で一日這(は)いまわってから、栃木の某サーキットや某テストコースから帰るさまを想像してみてくださいよ。リニアなスロットルレスポンスも、ダイレクトな変速もビビッドなステアフィールも、マジで全部ウザいだけだ。カングーをつくったルノーの開発者は、そこのところを本当によく存じておられる。本当に、こういうクルマを使う人のことを知っているのだなと感じ入った。
ひとつだけワガママを言えば、記者が個人的に苦手な「シュッ→ヘコ!」と利くブレーキは見直してほしいと思うのだが……冨樫義博氏の名著にいわく、「○○さえ○○だったらなぁ」というセリフは、人がそれにハマる一歩手前で出る文句だそうな。こんなこと書いてる段階で、私も結構、このクルマを気に入ってるのでしょう。
(文も写真も編集もぜんぶwebCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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