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第4回:こう見えて実はハイテク
「ルノー・カングー」の快適・安全性能に迫る

2024.05.09 ルノー・カングー日常劇場 櫻井 健一
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今回、栃木にあるモビリティリゾートもてぎへの友となった「ルノー・カングー ヴァリエテ」。2024年1月に導入が発表された台数150台の限定車である。
今回、栃木にあるモビリティリゾートもてぎへの友となった「ルノー・カングー ヴァリエテ」。2024年1月に導入が発表された台数150台の限定車である。拡大

webCG編集スタッフが「ルノー・カングー」のあるカーライフをさまざまな角度から報告する「日常劇場」と題した本企画も、今回がファイナル。走ってなんぼのwebCGらしく、北に向かったロングドライブの様子を報告しながら、カングーの実力に迫る。

「カングー ヴァリエテ」には、「インテンス」がベースのカラーバンパー仕様と、「クレアティフ」をベースとするブラックバンパー仕様がラインナップされる。今回は車両本体価格427万円の前者に試乗した。
「カングー ヴァリエテ」には、「インテンス」がベースのカラーバンパー仕様と、「クレアティフ」をベースとするブラックバンパー仕様がラインナップされる。今回は車両本体価格427万円の前者に試乗した。拡大
液晶メーターパネルや浮き出たように配置される大型のセンタースクリーンなどによってモダンに進化した新型「カングー」のインストゥルメントパネル。初見でも迷わず操作できるデザインや機能がうれしい。
液晶メーターパネルや浮き出たように配置される大型のセンタースクリーンなどによってモダンに進化した新型「カングー」のインストゥルメントパネル。初見でも迷わず操作できるデザインや機能がうれしい。拡大
フロントドアとリアの手動式スライドドアを開けた様子。車高が高く、乗り降りしやすいのも歴代「カングー」に共通する魅力である。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4490×1860×1860mm。
フロントドアとリアの手動式スライドドアを開けた様子。車高が高く、乗り降りしやすいのも歴代「カングー」に共通する魅力である。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4490×1860×1860mm。拡大
ファブリック×レザー調コンビシートは他の「カングー」と共通。フロントシートは着座位置が高めで、良好な視界確保にも貢献している。シートヒーターが装備されていれば文句ナシなのだが……。
ファブリック×レザー調コンビシートは他の「カングー」と共通。フロントシートは着座位置が高めで、良好な視界確保にも貢献している。シートヒーターが装備されていれば文句ナシなのだが……。拡大

大人っぽい雰囲気のエクステリアデザイン

「すべての悩みは対人関係の悩みである」と言ったのはオーストリア出身の精神科医アルフレッド・アドラーだったか。これをわれわれカーマニアに当てはめるとすれば、「すべてのカーマニアの悩みはクルマ選びの悩みである」とか? つまり、クルマ選びのハードルさえ越えてしまえば、あとはそのクルマの良さも悪さも楽しみになるということである。多分。

人間関係では長く付き合えば付き合うほど、その人の本質が見えてくる。クルマもきっと同じ。ディーラーの試乗で、その辺をくるっと一周しただけでクルマの良しあし、あるいは自分に合うか合わないかを見極めるのはなかなか大変である。少しでも長くハンドルを握れば、そのクルマの本質に近づけるのではないか。そんなことを思いながら、大雨のなか、首都高を経由し常磐自動車道でモビリティリゾートもてぎへとノーズを進めた。

ファミリーにふさわしいゆとりの空間と利便性がセリングポイントとされるカングーではあるものの、今回は取材ゆえの“ぼっちロングドライブ”である。「ルノー・カングー日常劇場」というテーマだけに、ある意味これがwebCGスタッフの正しい日常である。

最新のカングーは、2002年に初導入された初代から数えて3代目にあたる。その3代目は2020年11月に本国で発表され、2022年10月に山梨・山中湖で開催されたカングーユーザーの祭典「ルノー カングー ジャンボリー 2022」において、日本デビューを飾った。正式発売は2023年3月である。

従来型で少々ファニーだったエクステリアはフロントマスクが一新され、今どき風のイケメンになった。ルックスは最新のルノー車に通じる意匠で、Cシェイプのデイタイムランニングランプが内蔵されたヘッドランプや大型のグリルが大人っぽい雰囲気を醸し出している。直線基調といえそうなフォルムも、最新モデルの特徴だ。

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軽快な走りは乗用車的

新型カングーでも、テールゲートは従来型と同じく観音開きのダブルバックドアが採用される。これは日本からの強い要望によって設定されたものなのだとか。今回の試乗車は2024年1月に登場した台数150台の限定車「ヴァリエテ」のカラーバンパー仕様だが、カングーといえば、のブラックバンパー仕様もラインナップされている。

インテリアは質感がかなり向上した印象だ。そもそもカングーはライトコマーシャルビークル(LCV)=商用車がルーツ。先代はその出自を意識させる内外装のフィニッシュが特徴だったが、最新モデルは8インチのセンタースクリーンや7インチのデジタルクラスターなどによって現代化されている。そんなふうに確かにモダンではあるものの、ステアリングホイールやエアコンパネルにはオーソドックスなスイッチが並び、初見でも迷わず操作できるのがいい。

埼玉を出るあたりまでは雨が続いた。雨のなかのドライブを憂鬱(ゆううつ)だと感じる方もいらっしゃるだろう。視界は悪いし、路面状況によってはスリップも心配だ。しかし反対にいえば、情報の宝庫でもある。深いわだちが刻まれた路面を真っすぐ走れるのか、高速道路や橋のジョイントでどんな動きをするのか、ブレーキは利くのか、ワイパーの拭き取り範囲はどうか。通常のドライブでは表れてこないことが分かりやすく体験できる。

タイヤの溝もたっぷりと残ったカングー ヴァリエテは、大きな緊張をもたらすこともなく、安全に北に進んだ。流れに乗って走る際は、着座位置が高いことによる視界の良さがアドバンテージになる。3~4台先の車両の動きを見ながら、余裕をもって高速走行できる。重さを感じさせず車両を前に押し進める最高出力131PSの1.3リッター直4直噴ターボエンジンはルノー・日産・三菱アライアンスとダイムラーにより共同開発されたパワーユニットである。

そのボディーサイズに似合わない軽快な走りは乗用車的で、洗練されていると紹介できるものだ。乗り心地の良さと商用車的なフォルムから想像する以上に静かなキャビンは、同アライアンスのミドルクラスモデル用となる「CMF-C/Dプラットフォーム」をベースに、専用開発のフロントメンバーやトーションビームなどを用いて耐久性、信頼性、ロバスト性などを強化したボディーによるところが大きそうだ。高速道を降り、モビリティリゾートもてぎへと続くワインディングロードに入っても、そうした印象は変わることがなかった。

「カングー」といえばだれもが思い浮かべるであろう、観音開きのダブルバックドア。左右の扉はそれぞれ2段階に開く。荷室容量は通常時で775リッター、後席を折りたたむと2800リッターで、先代モデルよりも拡大されている。
「カングー」といえばだれもが思い浮かべるであろう、観音開きのダブルバックドア。左右の扉はそれぞれ2段階に開く。荷室容量は通常時で775リッター、後席を折りたたむと2800リッターで、先代モデルよりも拡大されている。拡大
「インテンス」をベースとする「カングー ヴァリエテ」のカラーバンパー仕様車には、17インチアルミホイールが標準で装備される。タイヤは205/55R17サイズの「コンチネンタル・エココンタクト6」が組み合わされていた。
「インテンス」をベースとする「カングー ヴァリエテ」のカラーバンパー仕様車には、17インチアルミホイールが標準で装備される。タイヤは205/55R17サイズの「コンチネンタル・エココンタクト6」が組み合わされていた。拡大
ルノー・日産・三菱アライアンスとダイムラーにより共同開発された1.3リッター直4直噴ターボエンジンは最高出力131PS、最大トルク240N・mを発生。このボディーに対して131PSは力不足なのでは? という懸念は取り越し苦労だった。
ルノー・日産・三菱アライアンスとダイムラーにより共同開発された1.3リッター直4直噴ターボエンジンは最高出力131PS、最大トルク240N・mを発生。このボディーに対して131PSは力不足なのでは? という懸念は取り越し苦労だった。拡大
ダッシュボードから突き出るようにデザインされたセンターコンソールに、オーソドックスなレバー式のシフトセレクターを配置。トランスミッションは7段DCTの「7EDC」と呼ばれるもの。
ダッシュボードから突き出るようにデザインされたセンターコンソールに、オーソドックスなレバー式のシフトセレクターを配置。トランスミッションは7段DCTの「7EDC」と呼ばれるもの。拡大
メーターフード上部に備わる「インストゥルメントパネルアッパーボックス」。カバーを開けると、給電用のUSBポート(2口)と12V電源ソケットが現れる。写真を撮りすぎてスマホの電池が減っても、充電できるので安心だ。
メーターフード上部に備わる「インストゥルメントパネルアッパーボックス」。カバーを開けると、給電用のUSBポート(2口)と12V電源ソケットが現れる。写真を撮りすぎてスマホの電池が減っても、充電できるので安心だ。拡大

実用的なアダプティブクルーズコントロール

予定した取材を無事に終え、せっかくなのでモビリティリゾートもてぎのなかでも人気を競い合うという「メガジップラインつばさ」にでもチャレンジしようかと思ったが、距離の長さと高さを動画で確認して断念。ついでに軽い高所恐怖症だったことを思い出した。あらためて施設案内を見ると、メガジップラインつばさの最高速度は40km/hぐらいで、ダイナミックな滑空感がウリらしい。挑戦しなくてよかったとつくづく思う。

気を取り直して向かったのは「ホンダコレクションホール」である。ホンダの歴史を彩ってきた二輪車や四輪車、そして最新のホンダジェットまで、じっくり見れば半日はかかりそうな展示内容だ。幼少期、「N360」と「ホンダ1300 99」、近いところでは3代目「アコード」があったわが家である。スマホの電池が心配になるぐらい写真を撮りまくるのは当然だが、カングー ヴァリエテには充電用のUSBポートがあるので心配はいらない。

大きな声では言えないが、そんなことをしているうちに時間がたち、東京に向かう常磐自動車道は渋滞の表示で染まっていた。「ずいぶん時間がかかりましたねぇ」と編集部のF沢あたりがチクリと言いそうだ。まずいまずい。しかし、急ぎ高速道路にアクセスしたものの、渋滞の表示は伸びるばかり。事故なら仕方がない。

渋滞のときは、無理せず眠気覚まし用のハード系グミとクルマのハイテクに頼る方針だ。カングーには、最新の先進運転支援システム(ADAS)が数多く採用されている。ストップ&ゴー機能付きアダプティブクルーズコントロールを筆頭に、エマージェンシーレーンキープアシストやブラインドスポットインターベンション、車線中央の走行を維持・支援するレーンセンタリングアシストなど、安全装備の面でも申し分ない。

渋滞中は、先行車が停車したときに自車も減速・停車し、先行車が3秒以内に発進すると自動的に再発進するアダプティブクルーズコントロールの機能が疲労低減に大いに役立つ。“ぼっちロングドライブ”であっても「三郷まで60分」と表示された渋滞を無事に乗り切れたのは、このADASのおかげだと思っている。

アドラーは「人は失敗を通じてしか学ばない」と言った。確かに渋滞のなか、帰路についたのは失敗だった。しかし、そこでカングーに搭載されたADASのリアルな実用性と利便性を確認できたのだから、それは十分な収穫であり学びである。

(文と写真と編集=webCG櫻井健一)

「ホンダコレクションホール」に到着した「カングー ヴァリエテ」。看板には「入場無料」の表示が。モビリティリゾートもてぎに来たなら、見ないと損ですよ。
「ホンダコレクションホール」に到着した「カングー ヴァリエテ」。看板には「入場無料」の表示が。モビリティリゾートもてぎに来たなら、見ないと損ですよ。拡大
「ホンダコレクションホール」は2024年3月にリニューアルオープン。エントランスを抜けると、往年のF1マシン「RA272」やロードレーサー「RC143」、市販モデルの「S800」、「ホンダジェット」などが出迎えてくれる。ホンダジェットには実際に乗り込むこともできる。
「ホンダコレクションホール」は2024年3月にリニューアルオープン。エントランスを抜けると、往年のF1マシン「RA272」やロードレーサー「RC143」、市販モデルの「S800」、「ホンダジェット」などが出迎えてくれる。ホンダジェットには実際に乗り込むこともできる。拡大
1971年の「ホンダZ」(写真左)と1970年の「バモスホンダ」(同右)。バモスホンダが『ウルトラマンタロウ』の劇中車「ラビットパンダ」として登場したことを覚えている人は、かなりのマニアかと。もちろん私もそのひとりです。
1971年の「ホンダZ」(写真左)と1970年の「バモスホンダ」(同右)。バモスホンダが『ウルトラマンタロウ』の劇中車「ラビットパンダ」として登場したことを覚えている人は、かなりのマニアかと。もちろん私もそのひとりです。拡大
幼少期、わが家には「N360」と「ホンダ1300 99」があったなぁと思っていたら、1969年の姉妹モデル「1300 77」(写真右)が展示してありました。なんとこれ、最高出力100PSの1.3リッター空冷直4エンジンを搭載しています。空冷ですよ、空冷。
幼少期、わが家には「N360」と「ホンダ1300 99」があったなぁと思っていたら、1969年の姉妹モデル「1300 77」(写真右)が展示してありました。なんとこれ、最高出力100PSの1.3リッター空冷直4エンジンを搭載しています。空冷ですよ、空冷。拡大
「カングー ヴァリエテ」は、フランス・ボルドーのぶどう畑を思わせるという「ルージュ カルマンM」の外板色が特徴。今回は編集部のある東京・恵比寿からモビリティリゾートもてぎまで、途中の寄り道を含め往復で約360kmを走行。車載の燃費計は7.6リッター/100km(約13.1km/リッター)を示していた。
「カングー ヴァリエテ」は、フランス・ボルドーのぶどう畑を思わせるという「ルージュ カルマンM」の外板色が特徴。今回は編集部のある東京・恵比寿からモビリティリゾートもてぎまで、途中の寄り道を含め往復で約360kmを走行。車載の燃費計は7.6リッター/100km(約13.1km/リッター)を示していた。拡大
櫻井 健一

櫻井 健一

webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。

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