ホンダ・フリードe:HEVクロスター(4WD)/フリードe:HEVエアーEX(FF)
刷新と熟成のハーモニー 2024.07.19 試乗記 ホンダの屋台骨を支えるコンパクトミニバン「フリード」が3代目に進化した。新型は、標準車の「エアー」とアウトドアテイストの「クロスター」という2つの異なるキャラクターを核とする、多彩なバリエーション展開が持ち味だ。果たしてその仕上がりやいかに。クロスターだけ3ナンバー幅に
新型フリードは、先代の途中に追加されたクロスオーバーグレードのクロスターの存在感を強化して、同時に通常グレードも「ステップワゴン」に続いてエアーと命名。クロスターとエアーという明確なキャラクターをもたせた2本柱としたところがもっとも新しい。
1.5リッター直4ハイブリッドと同じく1.5リッター直4の純ガソリンエンジンで、それぞれにFFと4WDを用意……というパワートレインの基本ラインナップは不変なものの、パワーユニット自体は、どちらも従来とは別物の新世代となる。ハイブリッドはデュアルクラッチトランスミッションを使った「i-DCD」から、エンジンが発電してモーターで走るシリーズ方式に、高速巡航用にエンジン直結モードを加えた「e:HEV」へと刷新。純エンジンも従来の直噴式とは異なるポート噴射ユニットとなる。どちらも先代とは別物だが、ご想像のとおり、ホンダのコンパクト車としては「フィット」や「ヴェゼル」に続いての搭載である。
いっぽう、プラットフォームは先代改良型で、シートレイアウトも配置も不変。キャビンの基本的な広さも大きくは変わらない。ホイールベースを含むディメンションでは、全長が45mm大きくなったことが目立つが、その大半は新しいハイブリッドを収めるための、フロントオーバーハングの拡大によるものだ。全高は実質的に変わっていない。全幅は基準となるエアーは5ナンバー枠を守ったいっぽうで、クロスターのそれは25mm増の1720mm。すなわち3ナンバー幅となる。
今回の取材は横浜みなとみらいを拠点としたメディア向け試乗会によるものだ。webCG取材班にあてがわれた試乗車は2台で、試乗ルートはご想像のとおり、みなとみらい周辺の市街地と首都高速にかぎられた。
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目立つビジュアルのクロスター
1台目の試乗車はクロスターだった。シートレイアウトは2列5人乗りで、先代でいう「フリード+」に相当するグレードとなる。新型フリードで2列仕様が選べるのはクロスターのみ。また、車いすのまま乗り込める「スロープ」や「助手席リフトアップシート」といった福祉車両も、あえてクロスターのみの設定。こうしてクロスターに明確なキャラをつけることで、先代では1割強だったクロスターの販売比率を3割程度まで高めることをねらう。
すでにご承知のとおり、新型フリードのクロスターは、先代より明らかに目立つビジュアルをもつ。グリルやバンパーなどのフェイスデザインもエアーと明確に異なるが、やはりホイールアーチにあしらわれた樹脂クラッディングが、その最大のキモだろう。今回はクロスターだけ3ナンバー幅になっているのも、このクラッディングによるものだ。
逆にいうと、先代クロスターの存在感が薄めだったのは、このクラッディングがなかったから……という解釈も成り立つ。ただ、先代フリードでは、スライドドアと車体のクリアランスの問題から、クラッディングによるデザイン処理がそもそも困難だったそうだ。
3列6人乗りのセカンドキャプテンシートは新設計だが、この2列仕様のセカンドシートは先代を踏襲している。スライド機構も健在で、スペース的にも不足はまるでない。しかし、ダブルフォールダウン式の可倒機能(による車中泊にも適した完全フラットな荷室空間)を優先したせいか、成人男性にはシート自体の座り心地、着座姿勢はお世辞にも快適とはいえない。寸法的な座面高は3列6人乗りのキャプテンシートと大きなちがいはないそうだが、実際に座ってみると、太ももが座面から浮いた“体育座り”感が明らかに強く、個人的には長距離ドライブは遠慮したい。
3人以上で頻繁に遠出する用途なら、サードシートの必要性はひとまず横に置いて、3列仕様も試しておいたほうがいいかもしれない。クロスターにも3列6人乗りは用意される。
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4WDならではのメリットも
今回試乗したクロスターのパワートレインはe:HEV、駆動方式は4WDだった。
新型フリードの走りは、姿勢変化の少ない背高ミニバンらしからぬ安定感を身上としていた先代と比較すると、ロール方向の動きが明らかに増えて、乗り心地はよりしなやかに、そして今回のような市街地や都市高速ではハッキリと快適になった。同時に、すみやかな荷重移動のおかげか、ステアリングやシートから伝わる接地感もより鮮明だ。前記のようにプラットフォームやフットワークの基本設計は変わっていないから、まさしく“熟成の味”といいたくなる。
開発担当者によると、(今回は試乗できなかった)純エンジン車は、よりパリッと俊敏方向の味つけらしい。開発当初はパワートレインを問わずに同じ乗り味を目指していたというが、i-DCDからe:HEVになったことで50kg重くなり、結果的に純エンジンとの重量差は約90kgまで拡大。最終的には乗り味のキャラクターを明確に分けないとまとまりがつかなかった……というのが真相だそうだ。
また、この4WDは、後述するFFと比較すると明らかにどっしりとした安定感・安心感がある。開発担当者によると、そこには4WDシステムによる重量増と重量配分の変化に加えて、駆動制御によるところも大きいとか。
フリードの4WDシステムは先代同様の電子制御油圧多板クラッチを備えた「リアルタイムAWD」で、単純なビスカス方式を採用するフィットではなく、SUVのヴェゼルと共通となる。機構上はFF状態にすることも可能だが、実際は発進時から市街地でも積極的にリアにも駆動配分するしつけだ。つまり、実質的にはフルタイム4WDで、今回のようなドライの舗装路でも、高速ジャンクションや大きな交差点、あるいは横風や上り勾配などで4WDのメリットを感じ取ることができる。
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厳しいコスト条件下でのモデルチェンジ
2台目の試乗車はエアーの上級グレードとなる「EX」だった。新型フリードでは唯一、2列目がベンチシートとなる7人乗りも用意されるが、今回はキャプテンシートの6人乗りだ。
セカンドがキャプテンとなる6人乗りは先代でも売れ筋で、今回はそのキャプテンシートのクッション部分を一新。サイドサポートを強めるとともに、座面クッション前端を15mm高くして、全体のホールド性を高めたという。実際に座っても、この新形状の座面が効果てきめんだ。フロアから見た絶対的なシート高は不足気味なのだが、アシを少しだけ前方に投げ出すように座れば、着座姿勢もしっかり安定する。ヒザ裏が浮いてしまってどうにも落ち着かない2列仕様とは、明らかな差があった。また、このエアーEXも含めた3列シートの上級グレードには、新開発のリアクーラーが用意されるのも大きな自慢である。
パワートレインは1台目のクロスターと同じくe:HEVだったが、駆動方式はFF。試乗会場で複数の開発担当者に聞いたところ、全員がこのe:HEVのFFがイチオシだった。4WDよりはロールが大きくなるが、ステアリングの反応はより軽快で、路面からのアタリはさらにしなやか。こうして一定の姿勢変化を許容しつつ、すこぶる優秀な走りや快適性を実現する所作は、今のフィットにも似て、ちょっと前のフランス車を思わせる心地よさだ。
新型フリードでは静粛性の高さも印象的だが、これは単純に防音材を増やした結果ではない。それではコストと重量がかさみすぎるとのことで、フロントバルクヘッド部の板厚を増したことが奏功しているようだ。
こうしたしなやかな乗り味のキモは、車体剛性の強化に加えて、スタビライザーリンクやロアのボールジョイントなど、フロントサスペンション周辺のフリクション低減という。そういえば、フィットではさらに多岐にわたるフリクション低減策が盛り込まれているが、グローバル商品のフィットとは対照的に、(ほぼ)日本専用車となるフリードのほうがコスト的には何倍も厳しいそうで、このあたりの改善メニューも大幅に絞り込んである。
……といった厳しいコスト条件下でのモデルチェンジでも、これだけツボを押さえた進化を体感させる開発チームの手腕と努力には、素直に拍手をおくりたい。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ホンダ・フリードe:HEVクロスター(4WD/5人乗り)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4310×1720×1780mm
ホイールベース:2740mm
車重:1560kg
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:123PS(90kW)/3500-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3000rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス2)
燃費:21.3km/リッター(WLTCモード)
価格:339万3500円/テスト車=378万9500円
オプション装備:ボディーカラー<メテオロイドグレー・メタリック>(3万8500円) ※以下、販売店オプション Honda CONNECTナビ9インチ(20万2400円)/ナビ取り付けアタッチメント(9900円)/ナビフェイスパネルキット(5500円)/ETC2.0車載器(1万9800円)/ETC2.0車載器取り付けアタッチメント(8800円)/フロアカーペットマット(4万4000円)/ドライブレコーダー3カメラセット(6万7100円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1199km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ホンダ・フリードe:HEVエアーEX(FF/6人乗り)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4310×1695×1755mm
ホイールベース:2740mm
車重:1480kg
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:123PS(90kW)/3500-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3000rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス2)
燃費:25.4km/リッター(WLTCモード)
価格:304万7000円/テスト車=357万1700円
オプション装備:ボディーカラー<フィヨルドミスト・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション Honda CONNECTナビ9インチ(20万2400円)/ナビ取り付けアタッチメント(9900円)/ナビフェイスパネルキット(5500円)/ETC2.0車載器(1万9800円)/ETC2.0車載器取り付けアタッチメント(8800円) フロアカーペットマットプレミアム(5万2800円)/ドライブレコーダー3カメラセット(6万7100円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1282km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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